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ドロップアウト

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ルーデルの黒の騎士団を率いて黒の森での魔物との戦闘で、どの魔物が多くの騎士を死なせたか。
それは俺が把握した限りでは断トツに多いのが人型のアンデッド・・・死人の種に寄生された人間だ。
人の形をしているだけでなく、元人間という事実が戦う者の心を惑わす。それが元々親しい人間だったら尚更だ。
高位アンデッドによって放出された死人の種に、予防の甲斐なく不幸にも憑りつかれてしまった者は自我を失い狂暴なアンデッドと化す。
そうなったアンデッドは生前が剣士なら剣を使う程度の知能はあるが、完全に侵食された人間はもう会話すらすることができない。仲の良かった者を認識することすら出来はしない。殺戮衝動に従って健全な人間を襲うのみである。
剣を振り回すが、それほどの脅威じゃない。何しろ防御することを知らないのだ。攻撃そのものは自身を顧みないので思い切りはいいが、アンデッドとなった彼らは身を護ろうとしないので基本隙だらけである。
だから純粋に戦うなら、実はそれほど脅威ではない。では何故元人間のアンデットに殺されてしまうのか。

それは一言でいうなら心の弱さを突かれるからだ。
人間の形をしているどころか、元人間とあればそれと戦う人間は普通は躊躇する。平気でいられるのは元より人殺しに何の感慨も抱かない者か、既に慣れ切って心がマヒしている者。
だが、そうでない者はやはりどこか心が落ち着かない、迷いがある状態でアンデッドと殺し合いをすることになる。一体倒しても終わりではない、次がある、何体倒せば終わるのかわからない・・・

そうした状況になると、少しずつ心が慣れていくか、心が壊れていくか、通常何かしらの反応が起きるようになる。
心が壊れ、あるいは壊れそうになり冷静に動けなくなったものは案外簡単に打ち取られる。これがアンデッドが黒の騎士団を最も多く打った理由だ。

ザイル達は後者のようだ。
確かザイル達は元村人との戦闘が開始してからややもしないうちに「もう嫌だ!」と叫びリタイアしてしまっていた。三人とも概ね同じタイミングだ。幸いにして激戦というわけではないし、人数にも余裕があるのですぐに後方に下がらせた。それで三人とも無事ではあるが、どうやら心には大きく傷を負ってしまったようだ。

ルーデルにだってこうした者はいる。そのまま自らの剣を折るものだって少なくはない。

そして、ザイル達もそうして剣を折る側に人間となったようだ。
言わずともわかる。もう三人とも目が死んでいる。


「アニキ・・・俺達はもう、冒険者はやめます・・・」


やっぱりか。
俺は彼らに聞こえないように、小さく溜め息をついた。
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