259 / 470
ドロップアウト
しおりを挟む
ルーデルの黒の騎士団を率いて黒の森での魔物との戦闘で、どの魔物が多くの騎士を死なせたか。
それは俺が把握した限りでは断トツに多いのが人型のアンデッド・・・死人の種に寄生された元人間だ。
人の形をしているだけでなく、元人間という事実が戦う者の心を惑わす。それが元々親しい人間だったら尚更だ。
高位アンデッドによって放出された死人の種に、予防の甲斐なく不幸にも憑りつかれてしまった者は自我を失い狂暴なアンデッドと化す。
そうなったアンデッドは生前が剣士なら剣を使う程度の知能はあるが、完全に侵食された人間はもう会話すらすることができない。仲の良かった者を認識することすら出来はしない。殺戮衝動に従って健全な人間を襲うのみである。
剣を振り回すが、それほどの脅威じゃない。何しろ防御することを知らないのだ。攻撃そのものは自身を顧みないので思い切りはいいが、アンデッドとなった彼らは身を護ろうとしないので基本隙だらけである。
だから純粋に戦うなら、実はそれほど脅威ではない。では何故元人間のアンデットに殺されてしまうのか。
それは一言でいうなら心の弱さを突かれるからだ。
人間の形をしているどころか、元人間とあればそれと戦う人間は普通は躊躇する。平気でいられるのは元より人殺しに何の感慨も抱かない者か、既に慣れ切って心がマヒしている者。
だが、そうでない者はやはりどこか心が落ち着かない、迷いがある状態でアンデッドと殺し合いをすることになる。一体倒しても終わりではない、次がある、何体倒せば終わるのかわからない・・・
そうした状況になると、少しずつ心が慣れていくか、心が壊れていくか、通常何かしらの反応が起きるようになる。
心が壊れ、あるいは壊れそうになり冷静に動けなくなったものは案外簡単に打ち取られる。これがアンデッドが黒の騎士団を最も多く打った理由だ。
ザイル達は後者のようだ。
確かザイル達は元村人との戦闘が開始してからややもしないうちに「もう嫌だ!」と叫びリタイアしてしまっていた。三人とも概ね同じタイミングだ。幸いにして激戦というわけではないし、人数にも余裕があるのですぐに後方に下がらせた。それで三人とも無事ではあるが、どうやら心には大きく傷を負ってしまったようだ。
ルーデルにだってこうした者はいる。そのまま自らの剣を折るものだって少なくはない。
そして、ザイル達もそうして剣を折る側に人間となったようだ。
言わずともわかる。もう三人とも目が死んでいる。
「アニキ・・・俺達はもう、冒険者はやめます・・・」
やっぱりか。
俺は彼らに聞こえないように、小さく溜め息をついた。
それは俺が把握した限りでは断トツに多いのが人型のアンデッド・・・死人の種に寄生された元人間だ。
人の形をしているだけでなく、元人間という事実が戦う者の心を惑わす。それが元々親しい人間だったら尚更だ。
高位アンデッドによって放出された死人の種に、予防の甲斐なく不幸にも憑りつかれてしまった者は自我を失い狂暴なアンデッドと化す。
そうなったアンデッドは生前が剣士なら剣を使う程度の知能はあるが、完全に侵食された人間はもう会話すらすることができない。仲の良かった者を認識することすら出来はしない。殺戮衝動に従って健全な人間を襲うのみである。
剣を振り回すが、それほどの脅威じゃない。何しろ防御することを知らないのだ。攻撃そのものは自身を顧みないので思い切りはいいが、アンデッドとなった彼らは身を護ろうとしないので基本隙だらけである。
だから純粋に戦うなら、実はそれほど脅威ではない。では何故元人間のアンデットに殺されてしまうのか。
それは一言でいうなら心の弱さを突かれるからだ。
人間の形をしているどころか、元人間とあればそれと戦う人間は普通は躊躇する。平気でいられるのは元より人殺しに何の感慨も抱かない者か、既に慣れ切って心がマヒしている者。
だが、そうでない者はやはりどこか心が落ち着かない、迷いがある状態でアンデッドと殺し合いをすることになる。一体倒しても終わりではない、次がある、何体倒せば終わるのかわからない・・・
そうした状況になると、少しずつ心が慣れていくか、心が壊れていくか、通常何かしらの反応が起きるようになる。
心が壊れ、あるいは壊れそうになり冷静に動けなくなったものは案外簡単に打ち取られる。これがアンデッドが黒の騎士団を最も多く打った理由だ。
ザイル達は後者のようだ。
確かザイル達は元村人との戦闘が開始してからややもしないうちに「もう嫌だ!」と叫びリタイアしてしまっていた。三人とも概ね同じタイミングだ。幸いにして激戦というわけではないし、人数にも余裕があるのですぐに後方に下がらせた。それで三人とも無事ではあるが、どうやら心には大きく傷を負ってしまったようだ。
ルーデルにだってこうした者はいる。そのまま自らの剣を折るものだって少なくはない。
そして、ザイル達もそうして剣を折る側に人間となったようだ。
言わずともわかる。もう三人とも目が死んでいる。
「アニキ・・・俺達はもう、冒険者はやめます・・・」
やっぱりか。
俺は彼らに聞こえないように、小さく溜め息をついた。
10
お気に入りに追加
652
あなたにおすすめの小説
勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる~魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する~
一ノ瀬 彩音
ファンタジー
主人公は、勇者パーティーを追放されて辺境の地へと追放される。
そこで出会った魔族の少女と仲良くなり、彼女と共にスローライフを送ることになる。
しかし、ある日突然現れた魔王によって、俺は後継者として育てられることになる。
そして、俺の元には次々と美少女達が集まってくるのだった……。
最弱職テイマーに転生したけど、規格外なのはお約束だよね?
ノデミチ
ファンタジー
ゲームをしていたと思われる者達が数十名変死を遂げ、そのゲームは運営諸共消滅する。
彼等は、そのゲーム世界に召喚或いは転生していた。
ゲームの中でもトップ級の実力を持つ騎団『地上の星』。
勇者マーズ。
盾騎士プルート。
魔法戦士ジュピター。
義賊マーキュリー。
大賢者サターン。
精霊使いガイア。
聖女ビーナス。
何者かに勇者召喚の形で、パーティ毎ベルン王国に転送される筈だった。
だが、何か違和感を感じたジュピターは召喚を拒み転生を選択する。
ゲーム内で最弱となっていたテイマー。
魔物が戦う事もあって自身のステータスは転職後軒並みダウンする不遇の存在。
ジュピターはロディと名乗り敢えてテイマーに転職して転生する。最弱職となったロディが連れていたのは、愛玩用と言っても良い魔物=ピクシー。
冒険者ギルドでも嘲笑され、パーティも組めないロディ。その彼がクエストをこなしていく事をギルドは訝しむ。
ロディには秘密がある。
転生者というだけでは無く…。
テイマー物第2弾。
ファンタジーカップ参加の為の新作。
応募に間に合いませんでしたが…。
今迄の作品と似た様な名前や同じ名前がありますが、根本的に違う世界の物語です。
カクヨムでも公開しました。
パーティーを追放された装備製作者、実は世界最強 〜ソロになったので、自分で作った最強装備で無双する〜
Tamaki Yoshigae
ファンタジー
ロイルはSランク冒険者パーティーの一員で、付与術師としてメンバーの武器の調整を担当していた。
だがある日、彼は「お前の付与などなくても俺たちは最強だ」と言われ、パーティーをクビになる。
仕方なく彼は、辺境で人生を再スタートすることにした。
素人が扱っても規格外の威力が出る武器を作れる彼は、今まで戦闘経験ゼロながらも瞬く間に成り上がる。
一方、自分たちの実力を過信するあまりチートな付与術師を失ったパーティーは、かつての猛威を振るえなくなっていた。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
良家で才能溢れる新人が加入するので、お前は要らないと追放された後、偶然お金を落とした穴が実はガチャで全財産突っ込んだら最強になりました
ぽいづん
ファンタジー
ウェブ・ステイは剣士としてパーティに加入しそこそこ活躍する日々を過ごしていた。
そんなある日、パーティリーダーからいい話と悪い話があると言われ、いい話は新メンバー、剣士ワット・ファフナーの加入。悪い話は……ウェブ・ステイの追放だった……
失意のウェブは気がつくと街外れをフラフラと歩き、石に躓いて転んだ。その拍子にポケットの中の銅貨1枚がコロコロと転がり、小さな穴に落ちていった。
その時、彼の目の前に銅貨3枚でガチャが引けます。という文字が現れたのだった。
※小説家になろうにも投稿しています。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
理不尽にパーティ追放されたので、『レンタル冒険者』始めたら、依頼が殺到しすぎて困る。
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
★これはパーティーを追放された男が、その実力で上り詰め、唯一無二の『レンタル冒険者』として無双を極めるお話です。
「君みたいな平均的な冒険者は不要だ」
この一言で、パーティーリーダーに追放を言い渡されたヨシュア。
しかしその実、彼は平均を装っていただけだった。
レベル35と見せかけているが、本当は350。
水属性魔法しか使えないと見せかけ、全属性魔法使い。
あまりに圧倒的な実力があったため、パーティーの中での力量バランスを考え、あえて影からのサポートに徹していたのだ。
それどころか攻撃力・防御力、メンバー関係の調整まで全て、彼が一手に担っていた。
リーダーのあまりに不足している実力を、ヨシュアのサポートにより埋めてきたのである。
その事実を伝えるも、リーダーには取り合ってもらえず。
あえなく、追放されてしまう。
しかし、それにより制限の消えたヨシュア。
一人で無双をしていたところ、その実力を美少女魔導士に見抜かれ、『レンタル冒険者』としてスカウトされる。
その内容は、パーティーや個人などに借りられていき、場面に応じた役割を果たすというものだった。
まさに、ヨシュアにとっての天職であった。
自分を正当に認めてくれ、力を発揮できる環境だ。
生まれつき与えられていたギフト【無限変化】による全武器、全スキルへの適性を活かして、様々な場所や状況に完璧な適応を見せるヨシュア。
目立ちたくないという思いとは裏腹に、引っ張りだこ。
元パーティーメンバーも彼のもとに帰ってきたいと言うなど、美少女たちに溺愛される。
そうしつつ、かつて前例のない、『レンタル』無双を開始するのであった。
一方、ヨシュアを追放したパーティーリーダーはと言えば、クエストの失敗、メンバーの離脱など、どんどん破滅へと追い込まれていく。
ヨシュアのスーパーサポートに頼りきっていたこと、その真の強さに気づき、戻ってこいと声をかけるが……。
そのときには、もう遅いのであった。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる