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派手な馬車に乗れるやつ
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「件の村はこの先だ」
村の手前まで来てロクフェルは一旦歩みを止めた。
そして騎士達に何やら打ち合わせをすると、一斉に騎士達は各々の受け持ち場へ馬で駆けていく。
「準備をしていてくれ。こちらも少しすることがある」
ロクフェルにそう言われ、俺は冒険者達に死人の種用の準備をするように指示をした。
マスクや布で口元を塞ぎ、体中に聖水を振りかける。
皮肉な話だが、この不愉快な緊張感・・・少しだけルーデルにいた時が懐かしくなる。
黒の森で俺がアンデッド戦の後処理をすることになったときもこんな気持ちになっていた。
もっとも、俺が今日仕留めることになる相手は、死の覚悟をした騎士ではなく、何も知らず巻き込まれた村人なのだが。その事実がこれから戦場に行こうとする俺の心を揺さぶってくる。
目を閉じて精神統一をする。これからすることは、あくまで作戦行動の一つであると。個人的な感情は取り除くと自分に言い聞かせる。
これは黒の森で後処理をするときにもやっていたことだった。止むの得ないとはいえ、見知った顔を斬り捨てるのは吐き気がするほど気持ちの悪くなる行為だ。自己暗示でもかけていないと心が壊れそうだった。
そうして集中し、自己暗示をかけている最中のことだった。
「なんだぁありゃ?」
誰かが声を上げたので気になって見てみると、一台の馬車がやってきた。
馬車を見て俺は絶句する。車体全体が白で、青とゴールドのラインが入った王族が使用するような派手な馬車だ。
「派手な馬車ですね。あんなん乗れるやつの気が知れませんわ」
ザイルが呆れたように言ったのを聞いて、俺は「お、そうだな」と適当に答えるに留めた。俺がルーデルにいたときも、エーペレスさんの指示で真っ黒の派手なデザインの馬車に乗っていたから何も言えなかったのだ。
客観的に見ると今のザイルみたいな反応になるのか・・・?もし俺がランドールに戻ることが出来ても、前と同じようにあの馬車にはもう乗れないかもしれない・・・
「・・・ん?」
馬車をよく見てみると、旗が立ててあるのがわかった。アルス教団のシンボルの旗であった。
とするとあれはアルス教団の馬車だろうか。
馬車には護衛騎士が何人もついている。重要人物が乗っているようだ。
「誰でしょうね。あんな派手な馬車に乗っているなんてまともな人じゃないんでしょうけど・・・」
ドロシーの言葉についには俺も何も言わなくなった。
あの派手な馬車に乗られる神経を持つ人間はまともな人じゃないのか・・・そうか・・・
「いや・・・あれ、待てよ・・・」
誰が乗っているか、ここに来て唐突に俺は検討がついた。この場に現れそうな人物といえば決まっているじゃないか。
「え・・・?嘘・・・」
隣で見ていたドロシーが驚愕の声を上げた。
馬車から降りてきたのは、俺が予想していた通り聖女アミルカだった。
あの馬車に乗られるなんてまともじゃねーって言われてたぞって言えば、どんな反応するか少しだけ気になった。
村の手前まで来てロクフェルは一旦歩みを止めた。
そして騎士達に何やら打ち合わせをすると、一斉に騎士達は各々の受け持ち場へ馬で駆けていく。
「準備をしていてくれ。こちらも少しすることがある」
ロクフェルにそう言われ、俺は冒険者達に死人の種用の準備をするように指示をした。
マスクや布で口元を塞ぎ、体中に聖水を振りかける。
皮肉な話だが、この不愉快な緊張感・・・少しだけルーデルにいた時が懐かしくなる。
黒の森で俺がアンデッド戦の後処理をすることになったときもこんな気持ちになっていた。
もっとも、俺が今日仕留めることになる相手は、死の覚悟をした騎士ではなく、何も知らず巻き込まれた村人なのだが。その事実がこれから戦場に行こうとする俺の心を揺さぶってくる。
目を閉じて精神統一をする。これからすることは、あくまで作戦行動の一つであると。個人的な感情は取り除くと自分に言い聞かせる。
これは黒の森で後処理をするときにもやっていたことだった。止むの得ないとはいえ、見知った顔を斬り捨てるのは吐き気がするほど気持ちの悪くなる行為だ。自己暗示でもかけていないと心が壊れそうだった。
そうして集中し、自己暗示をかけている最中のことだった。
「なんだぁありゃ?」
誰かが声を上げたので気になって見てみると、一台の馬車がやってきた。
馬車を見て俺は絶句する。車体全体が白で、青とゴールドのラインが入った王族が使用するような派手な馬車だ。
「派手な馬車ですね。あんなん乗れるやつの気が知れませんわ」
ザイルが呆れたように言ったのを聞いて、俺は「お、そうだな」と適当に答えるに留めた。俺がルーデルにいたときも、エーペレスさんの指示で真っ黒の派手なデザインの馬車に乗っていたから何も言えなかったのだ。
客観的に見ると今のザイルみたいな反応になるのか・・・?もし俺がランドールに戻ることが出来ても、前と同じようにあの馬車にはもう乗れないかもしれない・・・
「・・・ん?」
馬車をよく見てみると、旗が立ててあるのがわかった。アルス教団のシンボルの旗であった。
とするとあれはアルス教団の馬車だろうか。
馬車には護衛騎士が何人もついている。重要人物が乗っているようだ。
「誰でしょうね。あんな派手な馬車に乗っているなんてまともな人じゃないんでしょうけど・・・」
ドロシーの言葉についには俺も何も言わなくなった。
あの派手な馬車に乗られる神経を持つ人間はまともな人じゃないのか・・・そうか・・・
「いや・・・あれ、待てよ・・・」
誰が乗っているか、ここに来て唐突に俺は検討がついた。この場に現れそうな人物といえば決まっているじゃないか。
「え・・・?嘘・・・」
隣で見ていたドロシーが驚愕の声を上げた。
馬車から降りてきたのは、俺が予想していた通り聖女アミルカだった。
あの馬車に乗られるなんてまともじゃねーって言われてたぞって言えば、どんな反応するか少しだけ気になった。
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