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嫌な役どころ

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死人の種についてはルーデル家にも祖父の代で手痛い経験があるらしい。
死人の種の脅威についての知識が不足していたこと、油断していたことが原因により、一度感染者が一般人の集落で現れてしまった。原因は高位アンデッドを討伐した際、鎧などに死人の種を付着させたまま騎士が帰宅してしまったことにある。
死人の種に感染し、自我を失い殺戮衝動に駆られた騎士は家族を含め集落のほとんどの人間を殺害。最後は騒ぎを聞いてかけつけた騎士によって討たれることになった。
僅か微量でも死人の種は人間の意志を乗っ取る。そして乗っ取られたらそれを治す方法はない。殺すことでしか救うことはできないのだ。

祖父はそれ以降、黒の森の討伐においてアンデッド戦には念入りに戦術を立てるようにし、後始末においても徹底することにしたという。
死人の種が蒔かれた地域は徹底して聖水で浄化、あるいは火を放って全てを焼き尽くす。



それをーーー 昨日まで人が住んでいた村でやると、そういうことなのか。


「人口は少ないが、やや広大な地にある村のようだ。騎士団でも全方向をカバーして制圧するのは不可能だ。だから冒険者にも仕事をしてもらうことになる」


制圧するのに人が足りない・・・つまり、全包囲して一人を逃すことなく、殲滅するつもりだということだ。

俺は別にいい。覚悟は出来ているつもりだ。だが、他の冒険者はどうだろうか。
「死人の種」というものについて、その危険性の説明は受けているが、実際にどれだけの人間が理解できているだろうか?そして、死人の種に感染した人間を処理することの覚悟が出来るだろうか?


「やってもらうしかないんだ。そうでないと取返しの付かないことになる。万が一にも外部に知られるわけにもいかないんだよ」


聖騎士団の手が足りていないのは、人払いのために騎士を展開させる必要もあるからのようだ。
正直俺達冒険者がそれをやりたいところだが、旅の商人とかが村に行こうとしたとして、冒険者が村に立ち入るなと言っても納得してもらえるかは怪しいところだ。聖騎士という社会的に信用のある存在でなければならないのが歯がゆい。


「頼むよ、リーダー」


ロクフェルはそう言って俺の肩を叩いた。

リーダーという役職を受けたことを激しく後悔しそうになるが、死人の種と付き合いがそこそこある俺こそが適任といえば適任だろう。どれだけ人道上抵抗があっても、最悪の事態のことを考えればやむを得ないと考えることができるからである。


俺は意を決して冒険者達に告げた。

これから感染した村人たちを殲滅すると。
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