国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ

文字の大きさ
上 下
250 / 471

死人の種の処理

しおりを挟む
「おかしいな・・・全然来ないじゃないか」


俺はいつものように冒険者達と死人の種の密輸業者と思われる隊商を待ち伏せていたが、そのターゲットがいつまで経っても姿を現さなくて首を傾げていた。
隊商の動きは把握されていて、予定通りなら既に休憩地である村を出て、今頃は俺達が待ち構えるこの渓谷に姿を現すはずだった。
断崖絶壁に囲まれ、迂回などできるはずもなく、それこそ引き返しでもしなければ遅かれ早かれどうあってもここに辿り着く、そういう地形になっているはずだった。それが既に5時間以上待っていても現れない。


「情報が間違っていたとか?」


クリフがそう言うが、隊商のルートやタイムテーブルを確認するのは極秘依頼の依頼人であるアルス教団・・・の諜報部だ。聖騎士団がオークヨークにやってきて俺らと活動をするようになってから、彼らの情報の精度は向上した。それからは情報が大きく間違えることなど無かったのだが。

だがそんなこんなでしばらく待ちぼうけを食らっていたら、慌ただしく土煙を上げて馬に乗った聖騎士がやってきた。どうやら聖騎士団の伝令兵のようだ。


「緊急事態です」


冒険者チームのリーダーである俺の元までやってきた伝令兵は、淡々と俺にロクフェルからの言伝を告げた。
俺はその内容に戦慄することになる。




ーーーーー




「まぁ、時としてこういうことはある」


冒険者の中でリーダーである俺だけが、聖騎士団が展開する野営地の指揮官用のテントに通されていた。
ロクフェルの声は少しばかり重苦しい感じがした。それが今の状況の深刻さを嫌でも感じさせられる。


俺が聞かされた事実、それは『密輸していた隊商が事故により、死人の種を村にばら蒔いてしまった』というものだった。
休憩地から出発するタイミングなのか、休憩している最中なのか、性格なことはわからない。
だが少なくとも、死人の種がばらまかれたことによって、村民も隊商も生存者は絶望的であるということ、そして村をただちにということ。それだけは明確になっていることであった。


「あぁ、くそ、マジか」


正直なところ、この仕事をやっていればいつかはこういったことにも出くわすのだろうと思っていた。だが、聖騎士団がやってきて、問題なく依頼をこなせるようになったことで、俺は感覚がマヒしていたのだろう。死人の種に関わる案件は、いつだって命がけで事故が起こりえるものであるということを忘れていたのかもしれない。


「黒の森では死人の種を放出する魔物がいると聞く。ならば手慣れているだろう?ショウ・ルーデル。悪いが、付き合ってもらうぞ」


非道とも言える死人の種の処理に、俺は久しぶりに取り掛かることになりそうだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!

ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。 なのに突然のパーティークビ宣言!! 確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。 補助魔法師だ。 俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。 足手まといだから今日でパーティーはクビ?? そんな理由認められない!!! 俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな?? 分かってるのか? 俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!! ファンタジー初心者です。 温かい目で見てください(*'▽'*) 一万文字以下の短編の予定です!

おとぎ話は終わらない

灯乃
ファンタジー
旧題:おとぎ話の、その後で 母を亡くし、天涯孤独となったヴィクトリア。職を求めて皇都にやってきた彼女は、基準値に届く魔力さえあれば「三食寮費すべてタダ」という条件に飛びつき、男だらけの学院、通称『楽園』に入学した。目立たないように髪を切り、眼鏡をかけて。そんな行き当たりばったりで脳天気かつマイペースなヴィクトリアは、お約束通りの「眼鏡を外したら美少女」です。男の園育ちの少年たちが、そんな彼女に翻弄されたりされなかったりしますが、逆ハーにはなりません。アルファポリスさまから書籍化していただきました。それに伴い、書籍化該当部分をヒーロー視点で書き直したものに置き換えています。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

処理中です...