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ついつい聞き入る
しおりを挟む「あ、そういえば、やっと思い出したんですよ。オミトさん達が言っていた『死人の種』というものについて」
突然そう切り出したのは、オミトとテーブルを挟んで対面に座って食事をしているライラだ。
オミトは戦女神の詰所から今日のところはと引き上げた後、滞在予定の宿の前で偶然にライラと再び出会った。どうやら彼女も近くの宿に決めたようで、せっかくだし夕飯を一緒にしようと誘われたのだ。
エーペレスのこともあるから今ライラと共に食事をすることに及び腰になっていたオミトだったが、相も変わらずぐいぐいくるライラに押されるように結局一緒に近くのビストロに入ってしまった。
そこで食事中に何かを思い出したように「あっ」と声を出したライラは、突然にも「死人の種」について話題を切り出してきたのである。
オミトはライラのことを仕草などから「どこかソーアに似てるなぁ」となんて考えていただが、次の瞬間にライラの口から「死人の種」という単語が出てきたことに口の中の物を噴き出しそうになるくらいには衝撃を受けた。
王都騎士団の荷馬車にあった死人の種については、ライラに中途半端に説明して混乱させても怖がらせてもいけないと考え、何も話していなかった。だが、その後同じ馬車内でのジンとの会話で死人の種という言葉を使ってしまった。
それをライラは覚えていて、ずっと気にかけていたようだったと気付いたオミトは自分のあまりの迂闊さに頭を抱えたくなった。これは今デリケートな話題だ。無理矢理にでも違う話題を振ってでもさっさと終わらせよう・・・何がきっかけになって巻き込むことになってしまうかわからない。そうオミトは考えた。
「死人の種って、確かあらゆる魔力の素になる物質ってそういえば学校で習ったことがあったのを思い出しました。テストに出てくる内容でもないのでちょっと忘れていたりしましたが」
そう言ってライラは苦笑いをする。
「魔力の素・・・?」
すぐに話を終わらせたかったオミトだが、それでも話の内容に興味が出てきてしまい、つい聞き返してしまった。
「生物兵器として恐れられている反面、理論上死人の種からは一粒からでも大きな魔力が生み出せると言われ、大昔から研究が行われていたんです。生ける超エネルギー体ですね。大昔はそれこそ普通に死人の種が金貨と取引もされていたとか」
「死人の種が・・・?」
ライラの説明に、オミトは唖然としてしまう。死人の種自体はオミトも騎士団にいたときに嫌というほど見てきた。そしてその恐ろしさも体感した。死人の種に憑りつかれ、自分に刃を向けてきた同僚を斬るはめになったことだって一度や二度ではない。オミトの中では死人の種はあくまで魔物が放つ忌まわしい生物兵器である。
それがまさかの研究対象?
オミトには理解が出来なかった。
「一説によると・・・ですけど、このランドールという国が栄えたのも、死人の種の存在があったからではないかとされています」
「な、なんと?」
死人の種についての話題はすぐに終わらせようとしていたオミトだったが、気が付けばすっかりライラの話に聞き入ってしまっていた。
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