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オミトの心労
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エーペレスとの話し合いがとりあえず終わり、一旦オミトは滞在する宿に行くことになった。
とにかくもうこの日はいろいろあり過ぎて、考えもまとまらぬほど二人とも疲弊していたからである。完全に酒の抜けきっていないエーペレスは尚更だった。
「えっ、死人の種ですか・・・」
去り際、ソーアに挨拶をしに行くついでに軽く今回エーペレスと話した内容についてオミトが話した。
隊員達からしっかり言い含められたのか、エーペレスの失態に関わることは一切彼女は口にしなかった。口にしたそうにはしていたが・・・
「死人の種は密輸業者からも海賊からも押収したという話は聞いたことはないですね・・・」
死人の種は若い世代何かにはあまり知られていない物質だが、ソーアは仕事柄禁止物には詳しかった。死人の種についても知識はあったようである。
しかし、数多の海賊や密輸業者を相手にしてきたソーアでも、死人の種については実際に間に当たりにしたことも押収されたという話をっ聞いたこともないようだった。
「そうかね。私がここに来るまでに行き会った荷馬車にあったから、もしかしたらこのマルセイユ領から来たかもしれないと思っていたのだが」
オミトが気になっていたのは、荷馬車の死人の種の出どころであった。死人の種はそうそう簡単に手に入るものではない。アンデッドと呼ばれる種類の一部の魔物のみが生み出しまき散らすとされている。というかそれ以外にはまだ知られていないと言うべきか。
そうだとして、このランドールで死人の種を手に入れるにはルーデル治めるルード地方の黒の森・・・そこに潜るしか恐らく方法はない。だが行き交った王都騎士団の輸送車は、ルーデルとは全然違う方角から来ている。マルセイユ領の方角からなのだ。だから、もしかしたらこのラウバルの海から密輸されてきたのではないか・・・オミトはそう考えていたのだが、ソーアの言葉を聞いてアテが外れたか?と首を傾げた。
しかし顎に手を当てしばし考え込んでいたソーアは、ある答えに行きついたように「あっ」と声を洩らした。
「王家の船なら・・・誰も摘発出来ないし、国外からでも安全に持って来られますね・・・」
「王家の船・・・!」
この港では商船や貴族、海軍船だけでなく、王家の船も出入りする。王家の船は特別区域に停泊し、無論そこでは厳重な警備が敷かれている。そこの警備を担当しているのは、マルセイユの青の騎士団ではなく、王都から派遣されてきた騎士なのだ。だから王家の船や倉庫に対しては青の騎士団は一切関与していない。いや、関与できない。
だからこそ安全に禁止物である死人の種を持ち込めるとオミトは考えた。
しかし、いくら王家の安全圏内だからといって、領主に知られることなく確実に持ち込めるのだろうか。
ルーデルだけでなく、マルセイユも死人の種に関わっている可能性があるのかとオミトは背筋に冷たいものが流れるのを感じた。
この国はどうなってしまっているんだ?
触れられれば大爆発を起こす爆弾を、どうしていくつも持っているのだとオミトは嘆いた。
とにかくもうこの日はいろいろあり過ぎて、考えもまとまらぬほど二人とも疲弊していたからである。完全に酒の抜けきっていないエーペレスは尚更だった。
「えっ、死人の種ですか・・・」
去り際、ソーアに挨拶をしに行くついでに軽く今回エーペレスと話した内容についてオミトが話した。
隊員達からしっかり言い含められたのか、エーペレスの失態に関わることは一切彼女は口にしなかった。口にしたそうにはしていたが・・・
「死人の種は密輸業者からも海賊からも押収したという話は聞いたことはないですね・・・」
死人の種は若い世代何かにはあまり知られていない物質だが、ソーアは仕事柄禁止物には詳しかった。死人の種についても知識はあったようである。
しかし、数多の海賊や密輸業者を相手にしてきたソーアでも、死人の種については実際に間に当たりにしたことも押収されたという話をっ聞いたこともないようだった。
「そうかね。私がここに来るまでに行き会った荷馬車にあったから、もしかしたらこのマルセイユ領から来たかもしれないと思っていたのだが」
オミトが気になっていたのは、荷馬車の死人の種の出どころであった。死人の種はそうそう簡単に手に入るものではない。アンデッドと呼ばれる種類の一部の魔物のみが生み出しまき散らすとされている。というかそれ以外にはまだ知られていないと言うべきか。
そうだとして、このランドールで死人の種を手に入れるにはルーデル治めるルード地方の黒の森・・・そこに潜るしか恐らく方法はない。だが行き交った王都騎士団の輸送車は、ルーデルとは全然違う方角から来ている。マルセイユ領の方角からなのだ。だから、もしかしたらこのラウバルの海から密輸されてきたのではないか・・・オミトはそう考えていたのだが、ソーアの言葉を聞いてアテが外れたか?と首を傾げた。
しかし顎に手を当てしばし考え込んでいたソーアは、ある答えに行きついたように「あっ」と声を洩らした。
「王家の船なら・・・誰も摘発出来ないし、国外からでも安全に持って来られますね・・・」
「王家の船・・・!」
この港では商船や貴族、海軍船だけでなく、王家の船も出入りする。王家の船は特別区域に停泊し、無論そこでは厳重な警備が敷かれている。そこの警備を担当しているのは、マルセイユの青の騎士団ではなく、王都から派遣されてきた騎士なのだ。だから王家の船や倉庫に対しては青の騎士団は一切関与していない。いや、関与できない。
だからこそ安全に禁止物である死人の種を持ち込めるとオミトは考えた。
しかし、いくら王家の安全圏内だからといって、領主に知られることなく確実に持ち込めるのだろうか。
ルーデルだけでなく、マルセイユも死人の種に関わっている可能性があるのかとオミトは背筋に冷たいものが流れるのを感じた。
この国はどうなってしまっているんだ?
触れられれば大爆発を起こす爆弾を、どうしていくつも持っているのだとオミトは嘆いた。
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