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流石、若の選んだ人だ
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「どうでしたか?」
オミトの服に汚物をまき散らしたエーペレスは、今もトイレに籠っていた。
そしてオミトは服の洗濯を戦女神の隊員にお願いし、今は着替えを羽織って詰所の休憩所のソファに腰を掛けている。
そんな彼にまだなお険しい瞳で睨みつけ、問いかけるのは詰所の主であるソーアだった。
「どうもこうも・・・」
どう話したら良いのだろう。部屋に入るなりエーペレスが幼児退行し、しまいにはゲロを吐いてきたとそのまま伝えれば良いのだろうかとオミトは返答に窮した。
「もう少しだけ、エーペレスさんの気持ちに寄り添ってあげてください」
ソーアは優しく、オミトにそう言った。
「はぁ・・・」
言われたオミトは意味がわからず混乱するばかりで、力なく相槌を打つに留めた。
恐らくオミトの前にソーアがエーペレスに話をしにいったときに彼の知らない何かしらの話があったのだろうが、それに関係しているのだろう。そしてソーアはきっとエーペレスがオミトにその話をしたと勘違いしているのではないか。
実際にはエーペレスは泥酔のあまり完全に前後不覚になり、話をするどころではなかったのだが。
「もう少ししたらエーペレスさんも落ち着くと思います。そうしたらまたお二人で話し合ってください」
ソーアの言葉にオミトは頷いた。
そう、どうせエーペレスが落ち着けば改めて話をすれば良いのだ。だからこの場ではあれこれ言うことをオミトはやめた。
(それにしても・・・)
詰所の中をオミトは見回す。
ソーアの率いる戦女神は女性のみが所属する海軍の遊撃部隊だということは知っている。実際に詰所を見てみると、女の園だと思っていた雰囲気が黒の騎士団の詰所のそれに非常に似通っていた。
そして目の前のソーアに目をやると、まだまだエーペレスにも歳の及ばぬ若い娘でありながら、中々に歴戦の勇者たる貫禄がある。そう、自分が仕えていたショウのように。
ソーアがマルセイユ辺境伯の娘として特権を利用し、話題作りと道楽的な面で独自の派手な遊撃隊を率いている可能性もオミトは考えたことがあったが、それは杞憂に終わった。詰所の雰囲気、そしてソーア自身を見ればオミトにはわかる。彼女は立派に軍人として、武人として死線を潜っている。決してソーアはメディアが祭り上げただけの英雄ではないことを理解した。
「何かありましたか?」
「いえ、失礼しました」
武人として値踏みするように目線を向けてしまったことをソーア本人に気付かれ、オミトは慌てて謝罪する。ソーアは先ほどまでの険のある表情を緩め、咎めることなくただ「フフッ」と笑った。
「貴方にかかれば、この地の平和も安泰でしょう」
オミトは思わず発しようとしていた「流石、若の選んだ人だ」という言葉は飲み込んだ。どうにもその辺は微妙なところになっているようなので触れないでいることに決めたのだ。その辺を不用意に触れようとすれば、何かまた変なスイッチを押してしまうのではないか?オミトはそんな予感がしていた。
既にオミトは理不尽にも知らずのうちにエーペレスのスイッチを踏み抜いてしまっている。これ以上面倒ごとは現状は抱え込みたくないと思っていた。
オミトの服に汚物をまき散らしたエーペレスは、今もトイレに籠っていた。
そしてオミトは服の洗濯を戦女神の隊員にお願いし、今は着替えを羽織って詰所の休憩所のソファに腰を掛けている。
そんな彼にまだなお険しい瞳で睨みつけ、問いかけるのは詰所の主であるソーアだった。
「どうもこうも・・・」
どう話したら良いのだろう。部屋に入るなりエーペレスが幼児退行し、しまいにはゲロを吐いてきたとそのまま伝えれば良いのだろうかとオミトは返答に窮した。
「もう少しだけ、エーペレスさんの気持ちに寄り添ってあげてください」
ソーアは優しく、オミトにそう言った。
「はぁ・・・」
言われたオミトは意味がわからず混乱するばかりで、力なく相槌を打つに留めた。
恐らくオミトの前にソーアがエーペレスに話をしにいったときに彼の知らない何かしらの話があったのだろうが、それに関係しているのだろう。そしてソーアはきっとエーペレスがオミトにその話をしたと勘違いしているのではないか。
実際にはエーペレスは泥酔のあまり完全に前後不覚になり、話をするどころではなかったのだが。
「もう少ししたらエーペレスさんも落ち着くと思います。そうしたらまたお二人で話し合ってください」
ソーアの言葉にオミトは頷いた。
そう、どうせエーペレスが落ち着けば改めて話をすれば良いのだ。だからこの場ではあれこれ言うことをオミトはやめた。
(それにしても・・・)
詰所の中をオミトは見回す。
ソーアの率いる戦女神は女性のみが所属する海軍の遊撃部隊だということは知っている。実際に詰所を見てみると、女の園だと思っていた雰囲気が黒の騎士団の詰所のそれに非常に似通っていた。
そして目の前のソーアに目をやると、まだまだエーペレスにも歳の及ばぬ若い娘でありながら、中々に歴戦の勇者たる貫禄がある。そう、自分が仕えていたショウのように。
ソーアがマルセイユ辺境伯の娘として特権を利用し、話題作りと道楽的な面で独自の派手な遊撃隊を率いている可能性もオミトは考えたことがあったが、それは杞憂に終わった。詰所の雰囲気、そしてソーア自身を見ればオミトにはわかる。彼女は立派に軍人として、武人として死線を潜っている。決してソーアはメディアが祭り上げただけの英雄ではないことを理解した。
「何かありましたか?」
「いえ、失礼しました」
武人として値踏みするように目線を向けてしまったことをソーア本人に気付かれ、オミトは慌てて謝罪する。ソーアは先ほどまでの険のある表情を緩め、咎めることなくただ「フフッ」と笑った。
「貴方にかかれば、この地の平和も安泰でしょう」
オミトは思わず発しようとしていた「流石、若の選んだ人だ」という言葉は飲み込んだ。どうにもその辺は微妙なところになっているようなので触れないでいることに決めたのだ。その辺を不用意に触れようとすれば、何かまた変なスイッチを押してしまうのではないか?オミトはそんな予感がしていた。
既にオミトは理不尽にも知らずのうちにエーペレスのスイッチを踏み抜いてしまっている。これ以上面倒ごとは現状は抱え込みたくないと思っていた。
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