223 / 471
エーペレスとの再会
しおりを挟む
「ほぅ・・・」
海の見える見晴らしの良い高台に上がり、そこからの光景を目に映したオミトは思わずため息をついていた。
ルーデルの地には無い海、そして都市といえるほどに建物が密集し、賑わいを見せる港町。オミトが感じたことのない圧倒的な感動が彼の胸を打っていた。
話には聞いていたが、まさかこれほどとは・・・ルーデル領とは違いが大きすぎてオミトは腰を抜かしそうになった。
「オミトさんはここで知人の方に会うんでしたっけ?残念だけどオミトさんとはここで一旦お別れになっちゃうんですね・・・」
ライラが残念そうに目を伏せて言った。
「あぁそうだ。(道に迷わないかだけが心配だが)」
エーペレスからは彼女が居住地としているソーアの部隊の詰め所の住所が書かれた手紙が来ていたのでそれを持ってはいるが、それでも迷わずにたどり着く自信がオミトにはいまいち無かった。
「あ、そうだ。私、オミトさんに命を助けられてますから、ここで少しでもいいから恩を返させてほしいんです。ご飯をご馳走させてください」
「そうか、すまないな」
ライラの申し出をオミトは快く受け入れた。
これまで行動を共にし、押しの強いライラがこう言い出したら聞かないことをオミトは理解していたからだ。ここに来るまでも同じことを言われ、何度か食事を馳走になっていた。断り切れないのならば最初からもう受け入れよう、オミトはそう考えるようになったのである。
ライラが選んだ店は、テラスから海が見渡せる絶景のカフェだった。人気店のようだが、どうやらたまたま空いていたらしく二人はすんなり座ることが出来た。
「このガイドブックによるとこのお店はカフェだけど、料理も美味しいみたいなんですよね」
「ほぉ」
ライラの言葉に自然とオミトの表情が緩む。あまり表に出しているつもりはないが、オミトにとって未開の地での食事は彼にとって数少ない娯楽の一つとなりつつあった。そしてライラは短い付き合いながらもオミトのそんな性格に気付いていた。だから彼を食事に誘ったのである。
ルーデル領は海がなく、また陸路も道が整備し切れていないため、入ってくる食材に限りがあるのである。故に、これまであまり多種の食材に出会ったことがなかった。ルーデル領と出てマルセイユ領に来るまでのこれまでの旅でも、オミトは見たことのない食材に何度か出合い感動していた。
「お待たせいたしました」
注文した品をウエイトレスが持ってくると、オミトは目を輝かせた。ロブスターを使った料理。オミトがこれまで満足に見たことがない、海産物料理である。
「いただきます」
オミトは早速料理に手を付ける。口に運んだ端から「うまい」「うまい」とそれだけ口にするようになった。
ライラはそんなオミトを楽しそうに見ている。
「ふふ、オミトさん口元にソースがついていますよ」
「・・・なんと」
あくまで家令でしかないが、それでも当主の恥になってはならぬとテーブルマナーを最低限は心得ていたつもりだったオミトだったが、慣れないながらも美味な料理に舌鼓をうっていてつい油断してしまっていた。
オミトは恥ずかしそうに口元を自分で拭おうとするが、その前にライラが身を乗り出してオミトの口元を拭ってあげた。
「あ、あぁ・・・すまないね・・・」
気恥ずかしくてたじたじになるオミト。
だがそんなオミトは次の瞬間に体が硬直するのであった。
「へぇ、オミト・・・しばらく見ないうちにすっかりイイ人を見つけていたみたいね。知らなかったわ」
オミトが声をした方へ体を向けると、そこにははるばる会いにきた相手・・・エーペレスがいたのであった。
海の見える見晴らしの良い高台に上がり、そこからの光景を目に映したオミトは思わずため息をついていた。
ルーデルの地には無い海、そして都市といえるほどに建物が密集し、賑わいを見せる港町。オミトが感じたことのない圧倒的な感動が彼の胸を打っていた。
話には聞いていたが、まさかこれほどとは・・・ルーデル領とは違いが大きすぎてオミトは腰を抜かしそうになった。
「オミトさんはここで知人の方に会うんでしたっけ?残念だけどオミトさんとはここで一旦お別れになっちゃうんですね・・・」
ライラが残念そうに目を伏せて言った。
「あぁそうだ。(道に迷わないかだけが心配だが)」
エーペレスからは彼女が居住地としているソーアの部隊の詰め所の住所が書かれた手紙が来ていたのでそれを持ってはいるが、それでも迷わずにたどり着く自信がオミトにはいまいち無かった。
「あ、そうだ。私、オミトさんに命を助けられてますから、ここで少しでもいいから恩を返させてほしいんです。ご飯をご馳走させてください」
「そうか、すまないな」
ライラの申し出をオミトは快く受け入れた。
これまで行動を共にし、押しの強いライラがこう言い出したら聞かないことをオミトは理解していたからだ。ここに来るまでも同じことを言われ、何度か食事を馳走になっていた。断り切れないのならば最初からもう受け入れよう、オミトはそう考えるようになったのである。
ライラが選んだ店は、テラスから海が見渡せる絶景のカフェだった。人気店のようだが、どうやらたまたま空いていたらしく二人はすんなり座ることが出来た。
「このガイドブックによるとこのお店はカフェだけど、料理も美味しいみたいなんですよね」
「ほぉ」
ライラの言葉に自然とオミトの表情が緩む。あまり表に出しているつもりはないが、オミトにとって未開の地での食事は彼にとって数少ない娯楽の一つとなりつつあった。そしてライラは短い付き合いながらもオミトのそんな性格に気付いていた。だから彼を食事に誘ったのである。
ルーデル領は海がなく、また陸路も道が整備し切れていないため、入ってくる食材に限りがあるのである。故に、これまであまり多種の食材に出会ったことがなかった。ルーデル領と出てマルセイユ領に来るまでのこれまでの旅でも、オミトは見たことのない食材に何度か出合い感動していた。
「お待たせいたしました」
注文した品をウエイトレスが持ってくると、オミトは目を輝かせた。ロブスターを使った料理。オミトがこれまで満足に見たことがない、海産物料理である。
「いただきます」
オミトは早速料理に手を付ける。口に運んだ端から「うまい」「うまい」とそれだけ口にするようになった。
ライラはそんなオミトを楽しそうに見ている。
「ふふ、オミトさん口元にソースがついていますよ」
「・・・なんと」
あくまで家令でしかないが、それでも当主の恥になってはならぬとテーブルマナーを最低限は心得ていたつもりだったオミトだったが、慣れないながらも美味な料理に舌鼓をうっていてつい油断してしまっていた。
オミトは恥ずかしそうに口元を自分で拭おうとするが、その前にライラが身を乗り出してオミトの口元を拭ってあげた。
「あ、あぁ・・・すまないね・・・」
気恥ずかしくてたじたじになるオミト。
だがそんなオミトは次の瞬間に体が硬直するのであった。
「へぇ、オミト・・・しばらく見ないうちにすっかりイイ人を見つけていたみたいね。知らなかったわ」
オミトが声をした方へ体を向けると、そこにははるばる会いにきた相手・・・エーペレスがいたのであった。
11
お気に入りに追加
669
あなたにおすすめの小説

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる
グリゴリ
ファンタジー
『旧タイトル』万能者、Sランクパーティーを追放されて、職業が進化したので、新たな仲間と共に無双する。
『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる』【書籍化決定!!】書籍版とWEB版では設定が少し異なっていますがどちらも楽しめる作品となっています。どうぞ書籍版とWEB版どちらもよろしくお願いします。
2023年7月18日『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる2』発売しました。
主人公のクロードは、勇者パーティー候補のSランクパーティー『銀狼の牙』を器用貧乏な職業の万能者で弱く役に立たないという理由で、追放されてしまう。しかしその後、クロードの職業である万能者が進化して、強くなった。そして、新たな仲間や従魔と無双の旅を始める。クロードと仲間達は、様々な問題や苦難を乗り越えて、英雄へと成り上がって行く。※2021年12月25日HOTランキング1位、2021年12月26日ハイファンタジーランキング1位頂きました。お読み頂き有難う御座います。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

倒した魔物が消えるのは、僕だけのスキルらしいです
桐山じゃろ
ファンタジー
日常のなんでもないタイミングで右眼の色だけ変わってしまうという特異体質のディールは、魔物に止めを刺すだけで魔物の死骸を消してしまえる能力を持っていた。世間では魔物を消せるのは聖女の魔滅魔法のみ。聖女に疎まれてパーティを追い出され、今度は魔滅魔法の使えない聖女とパーティを組むことに。瞳の力は魔物を消すだけではないことを知る頃には、ディールは世界の命運に巻き込まれていた。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる