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見なかったことにする
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パタン
オミトと用心棒は、そっと箱の蓋を閉じた。
箱の中には死人の種がぎっしりと詰まっていたのである。オミトはもちろんだが、用心棒も中身のもののヤバさはわかっているようであり、二人は箱からそっと距離を取った。
「どうしてこんなものが・・・」
オミトは黒の騎士団に属していたので、死人の種の危険性については十分に理解していた。そしてこれが世界的に単純所持すら国際条約によって禁止されていることを。そしてランドールもその条約の批准国であることも。
「・・・アンタもこれについては知ってる口かい・・・」
用心棒は半ば呆然として呟いた。彼の頭の中も予想だにしない突然のことで混乱しているようだった。
どんな貴重品が出てくるか、それが気になって仕方がなかったが、中から出てきたのは可能性から一切排除されていたもの・・・これが国を守護する騎士団の輸送車から出てきたことに、驚きを隠せなかった。
「この封を元に戻そう。私たちは何も見なかったことにするべきだ」
オミトの言葉に用心棒は頷いて、解錠した鍵を再び施錠した。鍵は元々持っていた死体のところに戻すことも忘れない。
この箱の中身を見たこと自体なかったことにするべきであり、察されるべきではないと判断したのだ。
「この場を離れるぞ」
オミト達は死屍累々の現場をそのままにし、すぐさまその場を去ることにした。
山賊に怯えて馬車に引きこもっていた御者をたきつけ、すぐに馬車を走らせる。
オミトも用心棒も、馬車に乗り込んでからしばしの間は静かだった。ライラは積み荷のことを知らないためか、そんな二人を怪訝そうな目で見ている。
「あれのことを知っているんだな」
不意に用心棒が口を開いた。
「私のいた地方、黒の森というところでとある魔物がばら撒いていたよ」
オミトは懐かしい過去の記憶を振り返ってそう言った。用心棒はハッとするようにそんなオミトの顔を見た。
「君もそれで知っているのではないか?元ルーデルの騎士だろう?」
そしてそう語りかけるオミトに用心棒は目を見開くと、やがて観念したように言った。
「なんだお見通しだったのかい。そうだよ・・・俺は元ルーデルの騎士だ」
そう言って用心棒はため息をついてボサボサの顔をかき上げた。
一瞬見せたその顔からは、思ったより若い年齢なのかという印象をオミトは受けた。
「俺の名はジン。元ルーデル騎士団所属だったが、死人の種をめぐって副団長ブラホードに命を狙われだしたんで逃げ出した。今は放浪の身さ」
用心棒・・・ジンと名乗る男の発した言葉に、オミトは驚愕で目を見開いた。
オミトと用心棒は、そっと箱の蓋を閉じた。
箱の中には死人の種がぎっしりと詰まっていたのである。オミトはもちろんだが、用心棒も中身のもののヤバさはわかっているようであり、二人は箱からそっと距離を取った。
「どうしてこんなものが・・・」
オミトは黒の騎士団に属していたので、死人の種の危険性については十分に理解していた。そしてこれが世界的に単純所持すら国際条約によって禁止されていることを。そしてランドールもその条約の批准国であることも。
「・・・アンタもこれについては知ってる口かい・・・」
用心棒は半ば呆然として呟いた。彼の頭の中も予想だにしない突然のことで混乱しているようだった。
どんな貴重品が出てくるか、それが気になって仕方がなかったが、中から出てきたのは可能性から一切排除されていたもの・・・これが国を守護する騎士団の輸送車から出てきたことに、驚きを隠せなかった。
「この封を元に戻そう。私たちは何も見なかったことにするべきだ」
オミトの言葉に用心棒は頷いて、解錠した鍵を再び施錠した。鍵は元々持っていた死体のところに戻すことも忘れない。
この箱の中身を見たこと自体なかったことにするべきであり、察されるべきではないと判断したのだ。
「この場を離れるぞ」
オミト達は死屍累々の現場をそのままにし、すぐさまその場を去ることにした。
山賊に怯えて馬車に引きこもっていた御者をたきつけ、すぐに馬車を走らせる。
オミトも用心棒も、馬車に乗り込んでからしばしの間は静かだった。ライラは積み荷のことを知らないためか、そんな二人を怪訝そうな目で見ている。
「あれのことを知っているんだな」
不意に用心棒が口を開いた。
「私のいた地方、黒の森というところでとある魔物がばら撒いていたよ」
オミトは懐かしい過去の記憶を振り返ってそう言った。用心棒はハッとするようにそんなオミトの顔を見た。
「君もそれで知っているのではないか?元ルーデルの騎士だろう?」
そしてそう語りかけるオミトに用心棒は目を見開くと、やがて観念したように言った。
「なんだお見通しだったのかい。そうだよ・・・俺は元ルーデルの騎士だ」
そう言って用心棒はため息をついてボサボサの顔をかき上げた。
一瞬見せたその顔からは、思ったより若い年齢なのかという印象をオミトは受けた。
「俺の名はジン。元ルーデル騎士団所属だったが、死人の種をめぐって副団長ブラホードに命を狙われだしたんで逃げ出した。今は放浪の身さ」
用心棒・・・ジンと名乗る男の発した言葉に、オミトは驚愕で目を見開いた。
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