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金になるならやるまでよ

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「・・・助かった・・・!」


魔法の詠唱をやめたライラがそう言ってぺたりと尻餅をついた。計18人の山賊によって襲撃され、残り三人での相対でどうにか命を繋いだのだから、これはもう九死に一生を得たと言って過言ではない。


「まだ山賊の残りがいるかもしれねぇんだから気ぃ抜くな」


用心棒はライラに向けてそう言うと、まだ剣を抜き身のまま手に持ちつつ周囲を見回した。
オミトもここにきてようやく息が整ってきたので、同じく周囲を警戒する。


「助かった。ありがとう」


オミトは用心棒に礼を言った。


「ついでだついで。と、言いたいところだが、俺もあんたには助けられた。礼を言う」


用心棒もオミトの顔を正面から見据え、感謝の言葉を述べた。


「随分腕が立つようだ」


「いや、私など大した力になれなかった」


用心棒の言葉にオミトは頭を振って否定した。
ただの謙遜ではなく、オミトは満足に戦えぬ今の自分を心から恥じているのである。今とて用心棒がいなかったらオミトは殺され、ライラを逃がすことすら叶わなかっただろう。そういう自責の念があった。


「いや、は結構強かったからな。アンタがいなかったら全員をやるのには苦戦していたか、あるいは途中で逃げたかもしれねぇ」


用心棒は山賊の死体をまじまじを見つめる。


「持っている武器を見てみろよ。結構良い物を使ってやがる。相当羽振りがいいんだろう・・・こいつらは多分元海賊だが、海でもそこそこ荒稼ぎしてきたんじゃないか?」


オミトはそう言われて山賊達の装備を見てみると、確かにそれなりに値の張りそうな剣を持っているなと気付いた。


「お陰で、俺は危ない目に遭いながらもいい思いが出来るのさ」


用心棒はそう言って死んだ山賊達の持つ武器を端から回収し始めた。力強く手に握り、回収できない剣は持つ手首ごと切り落として回収した。


「これ全部売ればしばらくは遊んで暮らせるだけの金になるぜ」


「私も手伝いますね」


ライラはそんな用心棒に引くことなく、率先して手伝いを申し出た。後でオミトが聞いたら「死んだ相手から装備を引っぺがすのは傭兵もやりますから。小さい頃からやってました」と普通に答えたという。


「この頭も賞金首である可能性があるから町が近ければ首を持っていってもいいんだが・・・まぁいいや」

用心棒はそんなことまで言っている。


(にしても・・・)


オミトは先ほどの用心棒の戦いぶりを脳裏に思い浮かべていた。
用心棒の剣術は、ルーデルの黒の騎士団のそれに非常に酷似していたからだ。細かいところでアレンジはあるが、突きの多様に格闘術の取入れ、泥臭い剣術であると王都の騎士から批難されていたそれだ。
もっともそれを批難してきた王都の上品な剣術を使う騎士達は、こうして山賊に襲われなすすべもなく殺されたわけだが。


「良し、装備は集まったな。後は詰み荷を確認しとくか」


用心棒が最後に目を付けたのは騎士団が輸送していた詰み荷だった。
この詰み荷こそが、また新たな混乱を生むことをこのときのオミトはまだ知るはずもなかった。
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