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強いと確信

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山賊達の対応は早かった。
用心棒が最初に一人の首を刎ねると、驚愕して硬直するでもなく即座に臨戦態勢に入って距離を取りながら彼を取り囲もう動く。

だが、用心棒の動きは更に早かった。
彼は包囲される前にある一点に向かって猛烈な勢いで突っ込んでいく。そこに立ちふさがる山賊が一瞬怯みつつも剣で応戦しようとしたが、用心棒はそれをかいくぐるように通り抜ける。
すり抜け際に斬ったのか、そこにいた山賊は腹部から血を出してそのまま倒れた。


「ほぉ・・・」


オミトが感嘆の声を上げる。
用心棒が目指した場所、それは山頂にあった岩壁であった。彼は今、岩壁を背にして山賊と相対していた。岩壁を背にすることで、山賊による全方面からの包囲を防いだのである。

山賊達は用心棒に先制を許した形になるが、それでも彼らは冷静だった。この期に及んで怒りに任せて襲うことはなく、あくまで連携を重視してじわじわと用心棒を取り囲むように迫っていた。


「あの山賊も中々だな。王都の騎士様には荷が重かったかもしれん」


山賊達もただの三下ではなく、かなり戦い慣れをしているとオミトは気付いた。実戦経験の乏しい王都の騎士ではほぼ一方的にやられてしまうのも無理はない、そう思った。





「ふーん、お前ら海賊上がりか」


唐突に用心棒がそう言った。
山賊達は無言だったが、ピリッと空気が張り詰めるのを感じる。


「肌の焼け方とか動き方でわかるんだよ。包囲の仕方とかもな。んで、海賊が陸に上がってどうすんだ?もしかして、のか?」


空気が更に張り詰めるのをオミトは察した。
挑発だ。用心棒は山賊達のフォーメーションを繰り崩すために、あえて挑発を行っている。
だが最初に斬られた男のように、山賊の誰も軽々しく口を開けないのは用心棒の実力が高いものだとわかっているから。だから感情が高ぶろうとも、挑発にも乗らない。


「半端者の海賊が陸に上がったところでうまくいくわけないだろうが。海と違って陸なら半端者でもやっていけると思ったか?」


だが用心棒が最後に放ったこの言葉が、ついに一人の山賊の怒りのゲージを振り切った。


「てめぇっ!」


タイミングを合わせていかねばならぬところを、一人で先走ってしまったその山賊はここぞとばかりに待ち構えていた用心棒に喉元を剣で突かれて絶命した。一瞬遅れて隣の山賊が攻撃を仕掛ようとするも、これも僅かに遅れて用心棒の横なぎの一閃により胴体を分かつことになった。

残りは7人。
彼らはタイミングを遅らせることなく、同時に用心棒に襲いかかるつもりで距離を保ちつつタイミングを見計らっていた。


(今だ!今しかない!!)


だが、そこに隙があった。用心棒に神経を集中させるあまり、背後から迫るオミトに対して無防備だったのである。オミトは一瞬にして背を向けていた二人の首を刎ね、更にオミトに付いて体を向けた山賊を一人袈裟斬りで葬った。

こうなると離れしていた山賊達もいくらか動揺した。七対一が一瞬にして四対二になったのだから無理もない。
用心棒は動揺して浮足立っていた山賊を斬ると、オミトも一人斬り伏せた。


(ここまでか)


オミトはコテツを中段に構え、そのまま山賊を威嚇する姿勢を取って動かなかった。
いや、動けなかった。もうオミトの息のタイムリミットが迫っていたのだ。
だが、止まっているだけで山賊の動きを止めるには十分だった。そうして止めているうちに、用心棒はオミトが威嚇していた者も含め、残りの山賊を斬り伏せる。







「ハァッ! ハァッハァッ」


オミトが激しく息切れを起こして膝をつく。
ライラが心配そうに慌ててオミトに駆け寄った。


(こ、今回は助かったか・・・!)


九死に一生を得た。オミトはそう思っていた。絶望的な状況からどうにか生還できたことに喜びを感じていた。
だが、危機は去ってはいなかった。






「なんだお前ら、やるじゃねぇか」


地を這うように低く、殺気を滲ませた声がオミトの耳に入った。
「やはりそう簡単にはいかんか」とオミトは半ば諦めたような表情になる。
息を切らし俯いていたオミトが顔を上げると、そこには強烈な殺気を振りまく、山賊の頭らしき男がいた。
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