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用心棒

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「ぐあああああ!!」


積み荷の護衛をしていた騎士の最後の一人が山賊の持つ剣で斬り殺された。
御者や非戦闘は殺されるか逃げるかしており、輸送車についていた人間は一人も残らなかった。

オミトは残る山賊の人数を確認する。
・・・11人。

オミトは顔を顰める。自分が息切れを起こすまでの一分ほどの間にあの山賊を全て倒すのは難しい。
だがやらねばならないのか、オミトは得物に手をかけてからライラを含む他の乗客に言った。


「荷物を運んでいるならそれは諦めて、今すぐ逃げなさい。このままここにいたら死ぬことになる」


最悪の事態を想定・・・いや、半ば確信してオミトは言った。
恐らく残る山賊を自分一人で倒しきることは不可能。せめて彼らが逃げるまでの足止めもかねて複数人を道連れにするくらいが関の山だろう・・・オミトはそう考えていた。


「ひ、ひいっ」


ライラを除く乗客の二人は悲鳴を上げて、すぐに馬車から飛び降りて全速力で逃げていった。
だが、ライラはそこにいたままであった。


「オミトさん、私だって魔法が使えます。役に立てるかもしれません」


引きつった笑みを浮かべながらそういうライラに、オミトは頭ごなしに「いいから逃げろ」とは言わなかった。
怖くても自分のすべきことはする・・・逃げたくない。
ライラは黒の騎士団でもときおり見かけた、肝の据わった新人と同じ目をしているとオミトは思ったのである。こうした目をした人間は一度決めたら梃子でも動かない。だからオミトは説得を諦めた。


「本当に駄目だと思ったら諦めて逃げるように」


言っても聞くかはわからないが、オミトはそう言いながらライラに微笑んだ。
ライラは正面からオミトの目を見てコクンと頷く。覚悟は決まった。

山賊が目撃者を消そうと、オミトたちのいる馬車へ近寄ろうとしているときだった。






「はぁー、騎士様が片付けてくれたら楽だったが」


そう言いながら現れたのは、存在をすっかり忘れていたが、馬車の用心棒だとオミトが見立てていた男だった。
どうやらこれまでオミトと同じように騎士と山賊の戦いの経緯を見守っていたようである。
身なりは少し汚いが、抜いた剣は綺麗に手入れされているし、身のこなしからも腕が立つ男であることにはオミトは直感で気付いていた。

オミトは飛び出すのをやめ、一旦様子を見ることにした。




「たった一人で強がるなよ。一体何がで「うるせぇ!」


山賊たちの先頭らへんにいた男が口を開いたときだった。
山賊が何かを言おうとしたが、それを言い終わらぬうちに用心棒はその言葉にかぶせて叫んだかと思うと、次の瞬間山賊の首は宙を舞っていた。

「あ、これ戦わなくて済むかもしれない」と、それを見たオミトは不謹慎ながらこっそり胸を撫でおろしていた。
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