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意外な流れに戸惑うオミト

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「馬鹿な!このタイミングで!?」


オミトは思わず叫んだ。
もし山賊の狙いがこの馬車であるのなら、騎士団がいるこの場で仕掛けることはあり得ない。わざわざ天敵がいるところで襲わなくても、行違う騎士団をやり過ごした後でやったほうが安全で確実だからだ。

では狙いはこの乗り合い馬車ではない?
とするとまさか狙っているのは騎士団の輸送車!?
野盗はランドール国の各地にいるが、王国の騎士団の輸送車を襲う馬鹿はいない。正規兵を襲うには戦闘面でのリスク高による成功率が低めであるというのもあるが、何よりアレを襲ってしまうと後が恐ろしいことになる。
騎士団の輸送車が襲われた日には、当然ではあるが国の威信にかけても犯人捜しとその処罰に躍起になるのである。
要するに襲撃そのもののリスクが高い上に、その後も面倒この上ないのだ。


「何かの間違いでは・・・」


オミトは流石にそんなリスクを背負って襲撃してくるような野盗を見たことはなかった。
だから山賊が襲撃に来たなど信じられなかったのだ。


「なっ・・・!」


オミトが馬車から覗き見ると、確かに山賊らしき連中が騎士団を襲っているのが見えた。


「本当に・・・まさか本当に来たなんて」


オミトは驚愕しながらも、それでももしもに備えて得物に手をかける。
山賊は概ね騎士団と同数だった。
これならば装備が充実し、訓練を積んでいる騎士のほうに分がある・・・山賊が此方に来ない限りは、自分が出る必要はないだろう。オミトはそう考えていた。
オミトが戦える時間は非常に限られている。体が問題なく動くのであれば、本来なら助太刀したいところなのでオミトは歯がゆく思っていた。

山賊はオミト達のいる乗り合い馬車には目もくれず、騎士団の輸送車の方を襲っている。どれだけの考えなしなのか、よっぽどの腕自慢なのか、騎士団を野盗が襲うなんて信じられないといった目でオミトはじっと成り行きを見守っていた。


「大丈夫だ。いざというときは私が何とかする」


オミトはそう言って緊張してガチガチになっているライラを安心させる。
とはいえオミトが出るまでもなく、騎士団の勝利で終わるだろう・・・そう考えていたのだが。


「・・・馬鹿な」


今日は驚いてばかりだな、とオミトは自分のことながら呆れてしまう。
オミトが馬車から見た光景は、彼が思い描いていたそれと全然違うものになったからである。

山賊が騎士団を押していた。
時間が経過するにつれ、一人、また一人と騎士が倒されていく。一方で山賊にも死人はいるが、それでも騎士に比べれば少ない。
山賊はオミトが考えていたよりもずっと強かったのである。
騎士団の圧勝で終わると思っていた戦いは、逆に山賊が圧勝しようとしていた。


オミトはというと皆と一斉に逃げるか飛び出すか迷っていた。
決断を違えれば、ここで自分もろとも全員が死ぬことになる。
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