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バレス達の失墜

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「まさか、ここにきて更に追い打ちをくらうとはな・・・」





国王バレスは政務室にて目を閉じ、がっくりと項垂れた。
バレスがそうする理由、それは臣下からの報告を受けたからだ。その内容は・・・


「ラルス殿下は剣を持つこともままならぬとの噂が、既に学園外にまで流れております」


ラルスの学園における失態についてであった。


「このところどうも様子がおかしいと思っていた。だが、まさかそこまでしでかして学園に居場所を失っていたとは・・・挽回どころの話ではないではないか」


ラルスが学園に復学していくらもしないうちに、バレスはラルスの様子がおかしいことには気が付いていた。だが、目の前の政務が滞っていたこともあり、後まで続くようなら聞いてみようと様子見を決め込んでいたのだ。
しかし、この度ついに臣下から報告が上がり、バレスは頭を抱えることになった。
これからラルスは休学していたことも含めて、いろいろと挽回しておかねばならない時期であるゆえに、放置しておけぬ事態である。


「直ちにラルスの治療が出来る者を見つけろ。このまま剣すら持てぬ軟弱者であると広まり続ければ、恥のあまり国王どころか、臣籍降下して生きていくことすらできないだろう」


ラルスの心のトラウマを癒せる者などいるのか、それはわからないが、少なくとも以前に近いところまで剣の腕を戻してもらわなければラルスに纏わりつく不名誉は拭えない。なまじ以前の剣の成績が優秀だっただけに、そのハードルは果てしなく高いものに感じられ、バレスは溜め息をついた。


「それと、例のラルス殿下の婚約者候補のついてなのですが・・・」


ここで臣下が口を濁した。
バレスはラルスに黙ってキアラ以外の婚約者を探させていた。だが、臣下の態度から芳しくない結果が予想できたので、顔を顰めながら心の準備をする。


「良い、申せ。今日はもう何を聞いても驚かぬ」


「はい、こちらが婚約しても良いとの返事の来た令嬢になります」


バレスが促すと、臣下はおずおずと手に持った書類を差し出した。


「たったこれだけか・・・」


書類の数の少なさにバレスがまた溜め息をつく。色よい返事を出した家が少ないことがわかり、ラルスの・・・いや、バレス自身も求心力低下が深刻であることが伺えた。
バレスは手早く書類を確認すると、ふぅと一息ついて書類を机の上に投げ出した。


「公爵家は壊滅・・・後は斜陽な侯爵家に、伯爵家か。ふふ、舐められたものだ」


もはや笑うしかない。バレスは半ばやけくそな心境で笑みを浮かべていた。
上王ダリスに睨まれ、既にバレスの国王の座すら危ういことが貴族界隈でも知られているようだ。そんなバレスとラルスに取り入ったところで得る物は何もない、そのように考えている貴族が少なくないということが良くわかった。


「やれやれ、最後の手段だけは取りたくないものだがな」


バレスのその呟きは、目の前にいる臣下にすら聞き取れないほどの小さなものだった。
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