210 / 471
バレス達の失墜
しおりを挟む
「まさか、ここにきて更に追い打ちをくらうとはな・・・」
国王バレスは政務室にて目を閉じ、がっくりと項垂れた。
バレスがそうする理由、それは臣下からの報告を受けたからだ。その内容は・・・
「ラルス殿下は剣を持つこともままならぬとの噂が、既に学園外にまで流れております」
ラルスの学園における失態についてであった。
「このところどうも様子がおかしいと思っていた。だが、まさかそこまでしでかして学園に居場所を失っていたとは・・・挽回どころの話ではないではないか」
ラルスが学園に復学していくらもしないうちに、バレスはラルスの様子がおかしいことには気が付いていた。だが、目の前の政務が滞っていたこともあり、後まで続くようなら聞いてみようと様子見を決め込んでいたのだ。
しかし、この度ついに臣下から報告が上がり、バレスは頭を抱えることになった。
これからラルスは休学していたことも含めて、いろいろと挽回しておかねばならない時期であるゆえに、放置しておけぬ事態である。
「直ちにラルスの治療が出来る者を見つけろ。このまま剣すら持てぬ軟弱者であると広まり続ければ、恥のあまり国王どころか、臣籍降下して生きていくことすらできないだろう」
ラルスの心のトラウマを癒せる者などいるのか、それはわからないが、少なくとも以前に近いところまで剣の腕を戻してもらわなければラルスに纏わりつく不名誉は拭えない。なまじ以前の剣の成績が優秀だっただけに、そのハードルは果てしなく高いものに感じられ、バレスは溜め息をついた。
「それと、例のラルス殿下の婚約者候補のついてなのですが・・・」
ここで臣下が口を濁した。
バレスはラルスに黙ってキアラ以外の婚約者を探させていた。だが、臣下の態度から芳しくない結果が予想できたので、顔を顰めながら心の準備をする。
「良い、申せ。今日はもう何を聞いても驚かぬ」
「はい、こちらが婚約しても良いとの返事の来た令嬢になります」
バレスが促すと、臣下はおずおずと手に持った書類を差し出した。
「たったこれだけか・・・」
書類の数の少なさにバレスがまた溜め息をつく。色よい返事を出した家が少ないことがわかり、ラルスの・・・いや、バレス自身も求心力低下が深刻であることが伺えた。
バレスは手早く書類を確認すると、ふぅと一息ついて書類を机の上に投げ出した。
「公爵家は壊滅・・・後は斜陽な侯爵家に、伯爵家か。ふふ、舐められたものだ」
もはや笑うしかない。バレスは半ばやけくそな心境で笑みを浮かべていた。
上王ダリスに睨まれ、既にバレスの国王の座すら危ういことが貴族界隈でも知られているようだ。そんなバレスとラルスに取り入ったところで得る物は何もない、そのように考えている貴族が少なくないということが良くわかった。
「やれやれ、最後の手段だけは取りたくないものだがな」
バレスのその呟きは、目の前にいる臣下にすら聞き取れないほどの小さなものだった。
国王バレスは政務室にて目を閉じ、がっくりと項垂れた。
バレスがそうする理由、それは臣下からの報告を受けたからだ。その内容は・・・
「ラルス殿下は剣を持つこともままならぬとの噂が、既に学園外にまで流れております」
ラルスの学園における失態についてであった。
「このところどうも様子がおかしいと思っていた。だが、まさかそこまでしでかして学園に居場所を失っていたとは・・・挽回どころの話ではないではないか」
ラルスが学園に復学していくらもしないうちに、バレスはラルスの様子がおかしいことには気が付いていた。だが、目の前の政務が滞っていたこともあり、後まで続くようなら聞いてみようと様子見を決め込んでいたのだ。
しかし、この度ついに臣下から報告が上がり、バレスは頭を抱えることになった。
これからラルスは休学していたことも含めて、いろいろと挽回しておかねばならない時期であるゆえに、放置しておけぬ事態である。
「直ちにラルスの治療が出来る者を見つけろ。このまま剣すら持てぬ軟弱者であると広まり続ければ、恥のあまり国王どころか、臣籍降下して生きていくことすらできないだろう」
ラルスの心のトラウマを癒せる者などいるのか、それはわからないが、少なくとも以前に近いところまで剣の腕を戻してもらわなければラルスに纏わりつく不名誉は拭えない。なまじ以前の剣の成績が優秀だっただけに、そのハードルは果てしなく高いものに感じられ、バレスは溜め息をついた。
「それと、例のラルス殿下の婚約者候補のついてなのですが・・・」
ここで臣下が口を濁した。
バレスはラルスに黙ってキアラ以外の婚約者を探させていた。だが、臣下の態度から芳しくない結果が予想できたので、顔を顰めながら心の準備をする。
「良い、申せ。今日はもう何を聞いても驚かぬ」
「はい、こちらが婚約しても良いとの返事の来た令嬢になります」
バレスが促すと、臣下はおずおずと手に持った書類を差し出した。
「たったこれだけか・・・」
書類の数の少なさにバレスがまた溜め息をつく。色よい返事を出した家が少ないことがわかり、ラルスの・・・いや、バレス自身も求心力低下が深刻であることが伺えた。
バレスは手早く書類を確認すると、ふぅと一息ついて書類を机の上に投げ出した。
「公爵家は壊滅・・・後は斜陽な侯爵家に、伯爵家か。ふふ、舐められたものだ」
もはや笑うしかない。バレスは半ばやけくそな心境で笑みを浮かべていた。
上王ダリスに睨まれ、既にバレスの国王の座すら危ういことが貴族界隈でも知られているようだ。そんなバレスとラルスに取り入ったところで得る物は何もない、そのように考えている貴族が少なくないということが良くわかった。
「やれやれ、最後の手段だけは取りたくないものだがな」
バレスのその呟きは、目の前にいる臣下にすら聞き取れないほどの小さなものだった。
11
お気に入りに追加
658
あなたにおすすめの小説
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
Sランク冒険者の受付嬢
おすし
ファンタジー
王都の中心街にある冒険者ギルド《ラウト・ハーヴ》は、王国最大のギルドで登録冒険者数も依頼数もNo.1と実績のあるギルドだ。
だがそんなギルドには1つの噂があった。それは、『あのギルドにはとてつもなく強い受付嬢』がいる、と。
そんな噂を耳にしてギルドに行けば、受付には1人の綺麗な銀髪をもつ受付嬢がいてー。
「こんにちは、ご用件は何でしょうか?」
その受付嬢は、今日もギルドで静かに仕事をこなしているようです。
これは、最強冒険者でもあるギルドの受付嬢の物語。
※ほのぼので、日常:バトル=2:1くらいにするつもりです。
※前のやつの改訂版です
※一章あたり約10話です。文字数は1話につき1500〜2500くらい。
スキルを極めろ!
アルテミス
ファンタジー
第12回ファンタジー大賞 奨励賞受賞作
何処にでもいる大学生が異世界に召喚されて、スキルを極める!
神様からはスキルレベルの限界を調査して欲しいと言われ、思わず乗ってしまった。
不老で時間制限のないlv上げ。果たしてどこまでやれるのか。
異世界でジンとして生きていく。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる