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巻き添え

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「本当にありがとうございます。本当に」


ライラはぐいぐいとオミトに迫った。
オミトは実際のところ、吊り橋効果を抜きにしてもライラの好みのタイプだったのである。
そんな男性が命の危機を救ってくれたのだから、この行動もある意味仕方がないのかもしれない。


「・・・やれやれ、困ったお嬢さんだ」


かくいうオミトも相手が親子ほど年の離れた女性でも、言い寄られていくらか悪い気はしなかった。


(にしても何というか肝が据わっている)


確かにオミトはライラのことを助けたが、その代わりに彼女を襲った男達は切り殺されており、その死体は今だ周囲に転がっている。慣れていない者ならドン引きするほどの無惨な死体なのだが、このライラという少女はそれらを目にしても至って冷静であるようにオミトには見えた。
襲われた恐怖と助けられた安堵感で頭が混乱しているのかとも思ったが、それらとは少し違うように感じた。


「すみません、私・・・本当は魔法が使えるんです。でも、突然さっきの連中に襲われたから魔法で撃退しようにも詠唱する時間が無くて・・・」


ライラは申し訳なさそうに言うが、魔法使いに武器を持った男が数人一度に迫ってきたら圧倒的に不利なのはオミトにもわかっていた。
魔法使いは魔法を使うのに詠唱する必要があり、それはどれだけ初歩的なもので詠唱の短いものでも数秒は時間を要する。近接戦を複数人に挑まれたら、特にこのか弱い少女ではどうにもなるまい。


「安全なところまで私がついていこう。・・・といっても一度に長くは戦えないし、私も迷子になっているわけだから、あまり頼りにならないかもしれないがね」


そんなオミトの提案を、ライラは慢心の笑顔で受け入れた。


「大丈夫です。道のことでしたら、ちょっと見方がわからないやつだけど地図持ってるんですよ。拾い物なんですけど」


そう言ってライラがゴソゴソと鞄の中から取り出したのは、オミトが落とした古い地図であった。

どうやら少し道を外れて困っていたところにオミトが落とした地図を見つけ、それを頼りに進んだところ更に深い所まで迷い込んでしまったということらしかった。古くて道が全然違うから地図の見方がわからないのは仕方がない。
まさか自分の落とした地図が原因でもう一人道連れで迷子を生んでしまったとは、なんだかオミトはライラに対して申し訳なく思った。

それから二人は来た道をお互いの記憶を頼りに戻り、どうにか新街道へとたどり着くことが出来たのである。
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