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裏で汚れる白いカリスマ

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ある薄暗い地下牢では、昼夜を問わず悲鳴と嗚咽が轟いていた。
ここ数か月、それがこの地下での日常であった。


地下牢には一人の男が鎖に繋がれていた。
全裸で体中は傷だらけで、片足を欠いている状態だった。
彼は苛烈な拷問を受けていた。


「もうっ・・・もう、本当に知っていることはないんですっ・・・私の知っていることはこれが全てですっ・・・!」


拷問を受けている男は弱弱しく言った。


「ふぅん、そう」


そんな男を涼しい顔で眺めているのは、アーヴィガ・ハルトマン辺境伯。ショウの幼馴染にして、彼の敵を討とうと暗躍している者。


「どうされますか?」


拷問官の問いに、アーヴィガは少し考えてから


「まぁ、もうしばらく続けていてほしい。新しい情報が出てくるかもしれないから」


そう言って踵を返し、牢屋から立ち去った。


「もう全部知っていることは話した!本当だっ!もう許してくれ・・・いっそ殺してくれ・・・」


アーヴィガの背中に向けて放たれた言葉は、彼の耳に入ることはなかった。
地下牢ではまた昼夜を問わず拷問が続けられていく。


拷問を受けている男は、ラルスの近衛兵であった。冤罪劇の現場にいた者でもある。
ある日ひっそりと姿を消したと騒がれていたが、それはアーヴィガのによる仕業だった。

彼のみならず、あの当時の関係者やラルスに近しい貴族は少しずつ姿を消している。
そして、例外なく調を受けている。
帰られた者は一人もいない。死ぬか壊れるか、どちらかだった。

わざわざそんなことをするのは情報収集や報復というのもあるが、最大の目的はラルスとその支持勢力への圧力をかけることであった。決して拉致した証拠は残さないし、派手に一気に人を減らすわけではない。
だが、着実に一人一人とラルスに近しい者は姿を消している。ハルトマンが手を下しているということは、一部の貴族では既に把握されていることであった。
だが証拠がないし、報復も恐ろしいので誰一人としてハルトマンを糾弾する者はいない。


ラルス派の貴族はまだ多数を占めているが、アーヴィガのこの圧力がじわじわと効果を上げ、その数は段々と減ってきていた。
対してラルスの政敵とも言えるファルス第二王子をアーヴィガが支持しだしたとの情報が流れると、ぽつりぽつりとそれに続く貴族が増えている。
ラルスを引きずり下ろすための工作は着々と進んでいた。


「マルセイユの方はどうなっているかな・・・ソーアが手こずるなら僕が手を出そうか。けど、彼女のいる街を血で汚したくはないなぁ」



アーヴィガはソーアのいるマルセイユ領がある南方を眺めながら呟いた。

正面から民主の心を掴みつつ世論を誘導するソーア。汚れ仕事でじわじわと外堀を受けていくアーヴィガ。
ショウの幼馴染二人は、表と裏・・・対極的なやり方でそれぞれ戦いを続けていた。

それはもう一歩のところで、成功しそうなところまで来ていた。
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