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ラルスのトラウマ
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ラルスとバッツは剣術の練習場へ移動していた。
それについてギャラリーも大勢ついてくる。
どうやらどちらが勝つか賭けをしているらしく、それらしき声がラルスの耳に入る。
どうやらオッズはバッツが高めで、ラルスが不利と考えられているようだ。
「・・・っ」
ラルスは歯ぎしりをした。以前の自分ならここまで侮られることはなかった。皆がラルスを敬うか恐れていた。
だが今では全くの逆であり、その事実がラルスを狂わしいほどに苛立たせていた。
「手傷を負わされたものの、ショウ・ルーデルをねじ伏せたという噂をお聞きしました。もしそれが事実ならこの手合わせが楽しみで仕方ありません」
バッツが「どうせ嘘なんだろ?」と言いたげな小ばかにした笑みを浮かべ、模造刀を構えた。周囲のギャラリーの所々から飛んでくる笑い声がラルスの耳に入る。
怒り。
プライドの高いラルスは、下々の者にここまで舐められているという事実に憤慨していた。
いいだろう見せてやる、自分の実力というものを。
ラルスが模造刀を握る手に力が入る。お互い簡易的な防具を付けているのでどれだけ打ち込んでもほとんど大怪我にはならない。
だが、ラルスは相手を殺すくらいの気迫でこの勝負に挑もうとしていた。圧倒的に勝利を収め、再び自分の威厳を取り戻して見せる。モチベーションは最高といえるほどだった。
「では・・・始め!」
審判の掛け声とともに、ラルスとバッツは打ち合った。
ーー一瞬だった。
「うっ・・・!?」
バッツの剣を剣で受けたラルスは、そのまま押してくるバッツに対しろくに抵抗も出来ずに突き飛ばされた。
呆気ないほどにラルスの完敗である。
「えぇ・・・(困惑)」
あまりの呆気なさに、バッツは喜びよりも戸惑いのが強いようだった。
ラルス自身はと言うと、一瞬放心状態であったが、すぐに気を取り直した。
「・・・もう一度だ。剣術大会ならば、三本勝負であろう?」
そう言って再び剣を構えるラルス。
だが、それから更に一本、ラルスはバッツからあっさり取られてしまうことになる。
「も、もう一本!」
大会なら既に負けてあるが、バッツ自身も納得がいっていないのか最後の一本に付き合った。
だが、それでも結果は同じ。
ラルスは茫然として膝をつき、今度はしばらく動かなかった。あまりに精神的なショックが大きかったのだ。
「なんだありゃ・・・?」
「本当にあの王太子殿下か・・・?」
賭けていたバッツが勝ったことに喜ぶギャラリーがいる一方、ある程度の割合のギャラリーは困惑気味だった。以前のラルスの剣術を記憶している者は、あまりのラルスの弱体化っぷりに目を疑っていた。
「な、なんだ・・・何がどうしたのだ?」
ラルスは自分の体がおかしいと感じた。バッツと相対した時ろくに力が出なかったのだ。
城に引き籠っていたときに体が鈍った・・・それだけでは説明がつかないほどの体の異変に、ラルスは戸惑い恐れた。
ラルスの体はかつてショウより受けたトラウマにより、剣士を相手にしたとき恐怖に身がすくむようになってしまっていたのだった。
それについてギャラリーも大勢ついてくる。
どうやらどちらが勝つか賭けをしているらしく、それらしき声がラルスの耳に入る。
どうやらオッズはバッツが高めで、ラルスが不利と考えられているようだ。
「・・・っ」
ラルスは歯ぎしりをした。以前の自分ならここまで侮られることはなかった。皆がラルスを敬うか恐れていた。
だが今では全くの逆であり、その事実がラルスを狂わしいほどに苛立たせていた。
「手傷を負わされたものの、ショウ・ルーデルをねじ伏せたという噂をお聞きしました。もしそれが事実ならこの手合わせが楽しみで仕方ありません」
バッツが「どうせ嘘なんだろ?」と言いたげな小ばかにした笑みを浮かべ、模造刀を構えた。周囲のギャラリーの所々から飛んでくる笑い声がラルスの耳に入る。
怒り。
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いいだろう見せてやる、自分の実力というものを。
ラルスが模造刀を握る手に力が入る。お互い簡易的な防具を付けているのでどれだけ打ち込んでもほとんど大怪我にはならない。
だが、ラルスは相手を殺すくらいの気迫でこの勝負に挑もうとしていた。圧倒的に勝利を収め、再び自分の威厳を取り戻して見せる。モチベーションは最高といえるほどだった。
「では・・・始め!」
審判の掛け声とともに、ラルスとバッツは打ち合った。
ーー一瞬だった。
「うっ・・・!?」
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呆気ないほどにラルスの完敗である。
「えぇ・・・(困惑)」
あまりの呆気なさに、バッツは喜びよりも戸惑いのが強いようだった。
ラルス自身はと言うと、一瞬放心状態であったが、すぐに気を取り直した。
「・・・もう一度だ。剣術大会ならば、三本勝負であろう?」
そう言って再び剣を構えるラルス。
だが、それから更に一本、ラルスはバッツからあっさり取られてしまうことになる。
「も、もう一本!」
大会なら既に負けてあるが、バッツ自身も納得がいっていないのか最後の一本に付き合った。
だが、それでも結果は同じ。
ラルスは茫然として膝をつき、今度はしばらく動かなかった。あまりに精神的なショックが大きかったのだ。
「なんだありゃ・・・?」
「本当にあの王太子殿下か・・・?」
賭けていたバッツが勝ったことに喜ぶギャラリーがいる一方、ある程度の割合のギャラリーは困惑気味だった。以前のラルスの剣術を記憶している者は、あまりのラルスの弱体化っぷりに目を疑っていた。
「な、なんだ・・・何がどうしたのだ?」
ラルスは自分の体がおかしいと感じた。バッツと相対した時ろくに力が出なかったのだ。
城に引き籠っていたときに体が鈍った・・・それだけでは説明がつかないほどの体の異変に、ラルスは戸惑い恐れた。
ラルスの体はかつてショウより受けたトラウマにより、剣士を相手にしたとき恐怖に身がすくむようになってしまっていたのだった。
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