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不敬なる挑戦者
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「ラルス王太子殿下。ご無沙汰しております」
ラルスが廊下を歩いていると、一人の男子生徒が彼に話しかけてきた。
立ち塞がるように正面に立って話しかけてくるその態度は、通常ならば不敬であると近衛兵が激昂するところである。
「・・・くっ・・・」
だが、ラルスの近衛兵はそれをただ見ていることしか出来なかった。ラルスの厳命により学園内に置いては近衛兵はラルスの身の危険が及ばぬ限り、一切口も手も出してはならぬとされていたからである。
学園内では身分関係なく、皆平等という決まりがある。王族と高位貴族、貴族、平民と教育内容が変わるためにその程度のクラス分けはされるが、それ以外においては教員からの扱いも生徒同士の接触も身分関係なく平等である。下位の者が上位の者に話しかけても問題はないし、それを咎めることは逆に学園規則に違反するために罰せられることになる。「身分の垣根を越えて接しあってこそ、初めて見えてくるものがある」という初代学園長の方針によるものであった。
しかしそれはあくまで建前。
実際に100%垣根を取り除くことなど不可能である。何故なら誰しも一生学園内で生きていくわけではないからだ。在学中とて学園を一歩でも出ればこの校則は適用されない。卒業して社会に出ればなおのこと校則は関係ないのだ。
だから表面上では学園内では身分関係なく接しているように見えても、実際はある程度のところで生徒達は自主的に線引きをしている。在学中に調子に乗って上位の者をからかっていた下位の者が、卒業後に上位の者から報復を受け路頭に迷った事例などいくらでもあるからだ。
なので、学園内とはいえよりによって王族・・・王太子のラルスに対し明らかな不敬を働く男が現れたことはラルスも近衛兵も驚愕していた。
「君は・・・バッツ・トルドー子爵令息だったか」
立ち塞がった男の顔を思い出したラルスは、平静を装いつつ応対する。
学園内では皆平等は建前とはいえ規則として存在する。それを無視して身分を笠に着た振る舞いをすれば、ダリスの更なる不興を買いかねない。だから明らかな不敬を働く者に対しても、相応の態度で接しなければならないのだ。だからラルスは近衛兵を大人しくさせていた。
「流石王太子殿下。私のような下賤な者の顔すら覚えていただけて光栄です」
ラルスは優秀と言われた男である。王族として一度見た者の顔を覚えることができるというのは望ましいが、まさにその能力を持っていたのである。だからバッツの顔は覚えていた。
バッツ・トルドー子爵令息。嫡男ではないが、騎士を志望している有望株であるとラルスは記憶していた。
学園内での剣術大会ではラルスほどではないが優秀な成績を収めていたな・・・と思い出す。
「それで、私に何用だろうか?」
明かな不敬。敵意ある目線。一体何の用なのかまるで見当もつかなかったラルスはバッツに用件を尋ねた。
「王太子殿下。どうか私と剣の手合わせをしていただきたい」
バッツは僅かに口角を上げながらそう言った。
ラルスが廊下を歩いていると、一人の男子生徒が彼に話しかけてきた。
立ち塞がるように正面に立って話しかけてくるその態度は、通常ならば不敬であると近衛兵が激昂するところである。
「・・・くっ・・・」
だが、ラルスの近衛兵はそれをただ見ていることしか出来なかった。ラルスの厳命により学園内に置いては近衛兵はラルスの身の危険が及ばぬ限り、一切口も手も出してはならぬとされていたからである。
学園内では身分関係なく、皆平等という決まりがある。王族と高位貴族、貴族、平民と教育内容が変わるためにその程度のクラス分けはされるが、それ以外においては教員からの扱いも生徒同士の接触も身分関係なく平等である。下位の者が上位の者に話しかけても問題はないし、それを咎めることは逆に学園規則に違反するために罰せられることになる。「身分の垣根を越えて接しあってこそ、初めて見えてくるものがある」という初代学園長の方針によるものであった。
しかしそれはあくまで建前。
実際に100%垣根を取り除くことなど不可能である。何故なら誰しも一生学園内で生きていくわけではないからだ。在学中とて学園を一歩でも出ればこの校則は適用されない。卒業して社会に出ればなおのこと校則は関係ないのだ。
だから表面上では学園内では身分関係なく接しているように見えても、実際はある程度のところで生徒達は自主的に線引きをしている。在学中に調子に乗って上位の者をからかっていた下位の者が、卒業後に上位の者から報復を受け路頭に迷った事例などいくらでもあるからだ。
なので、学園内とはいえよりによって王族・・・王太子のラルスに対し明らかな不敬を働く男が現れたことはラルスも近衛兵も驚愕していた。
「君は・・・バッツ・トルドー子爵令息だったか」
立ち塞がった男の顔を思い出したラルスは、平静を装いつつ応対する。
学園内では皆平等は建前とはいえ規則として存在する。それを無視して身分を笠に着た振る舞いをすれば、ダリスの更なる不興を買いかねない。だから明らかな不敬を働く者に対しても、相応の態度で接しなければならないのだ。だからラルスは近衛兵を大人しくさせていた。
「流石王太子殿下。私のような下賤な者の顔すら覚えていただけて光栄です」
ラルスは優秀と言われた男である。王族として一度見た者の顔を覚えることができるというのは望ましいが、まさにその能力を持っていたのである。だからバッツの顔は覚えていた。
バッツ・トルドー子爵令息。嫡男ではないが、騎士を志望している有望株であるとラルスは記憶していた。
学園内での剣術大会ではラルスほどではないが優秀な成績を収めていたな・・・と思い出す。
「それで、私に何用だろうか?」
明かな不敬。敵意ある目線。一体何の用なのかまるで見当もつかなかったラルスはバッツに用件を尋ねた。
「王太子殿下。どうか私と剣の手合わせをしていただきたい」
バッツは僅かに口角を上げながらそう言った。
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