国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ

文字の大きさ
上 下
192 / 471

膿が動く

しおりを挟む
「そうですねえ…次は結界かバフ、デバフが良いと思っていましたけど、新たに加わった【上級開放スキル】が良いですね」
「これはどう言ったものなのですか?」
「単体ですと、雷や氷魔法が使える様になります。
時空魔法などの一部の魔法では、このスキルが無いと習得できないものも出てきます。
勿論このスキルが有っても、熟練度が足りないと意味はありませんが」

成る程です。
熟練度を上げて、尚且つこのスキルが有れば、難しい魔法も使える、と言うことですね。
「なら今回はこのスキルと交換して、次は結界かバフ、デバフと言うものと交換すれば良いですかねえ」
確認をすると、アインは頷きました。

アインについつい聞いてしまいますけど、自分で調べるのも大切ですよね。
バフ、デバフとは何なのかは、後ほどタブレットで調べましょう。
今回は【上級開放スキル】を交換……、よし、完了ですね。

雷魔法など、ちょっと惹かれますよね。
それに時空魔法の上級編も気になります。
まずは熟練度を上げるため、マジックバックをどんどん使いましょう。


昼からもどんどん進みます。
若返ったからなのか、なかなか疲れることもなく、歩いていけますねえ。
「我が強化魔法をかけてやっておるからだ」
ブルースに言われました。

確か【身体強化魔法】で、これがいわゆる【バフ魔法】の一つなんですよね。
魔法強化や、スピードアップなど、タブレットで調べたら色々ありました。
アインが勧める理由もわかります。

魔法やタブレットの熟練度を上げて、色々な場所を旅して、家族も増やして、幸せになって…やる事が沢山ありますねえ。
時間はたっぷりあるのですから、焦らずいきましょう。


体感的に、昼食から3時間ほど経った頃、空を飛んでいたチャックが降りて来ました。

「少し進んだところに太尾犬が居るけど、多分魔化してる」
魔化した犬?魔獣と言うやつですね。

「群ですか?」
「いや、一匹しか見当たらないよ」
アインが尋ねると、チャックが答えます。
その答えを聞いてシナトラが、
「じゃあ僕がやっつけていい?」
と申し出てきました。

「太尾ならシナトラでも大丈夫だろう。
腕試しの実践だ、やってみるが良い。
いざとなれば我が助太刀してやるからな」
「太尾はすばしっこいですから、スピードアップのバフをかけておきましょう」
剣を構えるシナトラに、アインがバフ魔法をかけると、チャックが犬の居る位置へ誘導します。

「その木の後ろ、5歩程行ったところで獲物を食べているよ」
「ん、血の匂いがするから、そこに居るんだね」
流石獣人ですね、血の匂いなんて私にはわかりませんよ。

足音を消し、犬の居ると言われた場所に近づくと、一気に駆け出し剣を振り下ろしました。
どうやら一太刀で仕留めた様で、体を起こしたシナトラが手招きしています。
「ほら、一撃で仕留めたよ!
僕凄い?」

近寄ると流石に私にも血の匂いは分かりました。
覗いて見ると、首を刎ねられた【太尾犬】とは狐の様です。
どうやらネズミを食べていた様で、刎ねられ転がった首の口元は血に濡れています。
見開かれた目は、口元の血の様に真っ赤です。
赤い目…魔獣の証ですよね。
確か魔獣って………。

私は狐…太尾を鑑定してみました。


【魔獣・太尾犬の死骸
魔獣化した太尾犬、食べられます。
血抜きをする事で、過剰分な魔素が薄れるが、食べ過ぎると魔化する事があるのでご注意を。
心臓内に魔石有り 】


血抜きをするのですか…逆さに吊るせば良いですかねえ。
食べ過ぎに注意しないと怖い事になるのですね。
肝に銘じておきましょう。

血抜きや解体はブルース達にお任せして、気になった事をタブレットで調べましょう。


【魔石
魔化した生き物の心臓の中にできる、魔素の結晶の事だよ。

何で心臓の中に出来るかはわかんないんだけど、純粋な魔素の固まりだから、色んな動力に使ったり出来るんだ。
必要としている人に売る事ができるよ。 

ただ、個人的な取引だと、騙されたりぼったぐられたりするから、ギルドで売り買いするのが一番安心かなあ。

性質や大きさ、希少値で値段は変わるけど、牙や角や毛皮より高値は付くから、魔物を倒したら忘れずに回収しょうね 】


心臓の中に、と言うのは若干引きますけど、換金アイテムなら回収すべきですね。
まあ私に言われるまでもなく、解体していたブルースが取り出してくれましたけど。

「まだ若い魔獣だった様だな、魔石も小さい。
ほらシナトラ、これはお前の物だ」
血塗れの小石の様な物をブルースが投げて渡します。
それを受け取ったシナトラが小走りで近づいて来ました。

「ジョニー父ちゃん、これ貰ったよ、これ何?」
「魔石って言う換金アイテム…お金に変えられる物だよ」
「お金って何?」
亜人化して数日、生まれてまだ一年ですから、人の暮らしについては知らない事が多いのでしょう。

「人の住む町や村では、欲しい物があったらお金と交換するんだよ。
町に着いたら一緒に買い物しようね」
「うん、よくわかんないけどわかった。
じゃあこれ父ちゃんに預けとく」
ひょいと手渡されましたけど……血塗れのままマジックバッグに入れるのは気が引けます。
水遣りで血を洗い流してから、マジックバックにしまいました。

他の素材(毛皮とシッポ)と肉をブルースから手渡され、マジックバックの中にしまいます。
そのまま入れるのは気が引けたので、大きな葉をチャックに取ってきてもらい、それに包んでバッグへ。
毛皮などは、クリーンの魔法をかけてもらってから入れました。

「町に着いたら調理を頼もう」
魔物の肉は売れるそうなのですが、どうやらこれは私達の夕食になる様です。
狐…太尾一匹分の肉ですと、ブルースとシナトラでペロリと平らげてしまいそうな量しか無いですからね。

その後も魔化したウサギ、ネズミ、トンビなど、数匹の魔物に遭遇しました。
勿論全て瞬殺です。
その素材や肉はマジックバッグ行きです。

何とはなくなのですけど、生物(なまもの)と他の物が同じポーチの中に有ると言うのは微妙ですね。
異次元空間ですからくっついているわけでは無いと分かっていても、何となく嫌な感じがしてしまいます。
町に着いたら素材や肉を入れる、それぞれ専用の鞄を買いましょうかね。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

処理中です...