191 / 471
マルセイユの膿たち
しおりを挟む
ショウが隣国ブレリアでアミルカとの二週間を過ごしていた頃、ランドール国のマルセイユ家の騎士団「青の騎士団」の本部の一室では、海軍の重鎮など一部の者達による会議が行われていた。
この場にいる海軍大将のミルツを始めとした者達は、皆とうに汚職に手を付けている海軍腐敗の原因であり、まさに海軍の・・否、マルセイユの膿そのものが結集していた。
「さて、今日皆に集まってもらったのは他でもないわ。ここ最近の状況について報告してもらっていいでしょうか」
としてこの会議を取りまとめているのが、若くして海軍大将であり、次期マルセイユ当主が確定しているマルセイユ家の長女サーラである。海軍の一部重鎮の会議であり、今この場に当主のシーラはいない。
青い髪に穏やかな瞳。母シーラと良く似た美しい顔立ちで、正確も穏やかとイメージからして以前はまさにマルセイユを治めるに相応しい美しき姫などと持て囃されていた。
「・・・と、以上になります」
やや震える声で部下が報告を終えると、サーラはクスリと微笑んだ。瞬間、この場にいるサーラ以外の全員が戦慄した。
このサーラ・マルセイユは表向きこそ歴代マルセイユ当主のイメージ通りで、常に冷静で穏やかだと言われているが、それは表向きだけのことで、実際は心の内は激しい感情が渦巻くことが多々あるとこの場にいる者は知っている。
むしろ感情の振り幅で言うならば恐らく平均的なそれよりも大きい、それ故に怒らせたときのサーラは歴戦の勇者であるミルツすらも恐ろしく思うほどだ。
そして、先ほどのように微笑したときのサーラはまさに「皆が恐れるほど怒りを感じている状態」なのだということを皆は理解している。
「ふぅ、散々ですね。我々は協定を破り放題で、安くない違約金は払いまくり、破産して自棄にやって公に暴露しようとする商人の始末にも苦心する。その噂を聞いた他の商人も我々との関係を見直そうとしている。信用も財政も地に落ちそうですね」
この場にいる全員は海軍の不正に関わっている。その不正を取りまとめているのがこのサーラだ。
密輸商人より一定の賄賂を受け取ることにより、あえて摘発を見送る。ただし月単位の密輸量は規定量までとする。そうしたことで定期的に収入を得ることが出来、海軍の負担も軽減も出来る。
これまではうまく管理してきたが、ここ最近になって不穏分子が彼女の管理していたシステムを目茶苦茶に引っ掻き回していた。
そう、ソーアのことである。
ソーアが思い思いに摘発を続けることで、既に協定の意味が無くなりかけていた。そうなると高額の賄賂を払っていた商人は黙ってはいない。今は規約金でなあなあで済ませられているのがほとんどだが、これが続けばこれまでの関係を公に暴露しようとする動きが増えるかもしれない。違約金も馬鹿にならず、既に海軍の財政は傾いていた。このままでは海軍どころかマルセイユそのものが没落しかけない、そんな流れになりつつあった。
「はぁ・・・困った妹の暴走のせいですわ本当に。誰に似たのでしょうか」
サーラ以外誰も言葉を発しようとしない。サーラの怒りが頂点に来かかっているのを皆、肌で感じ取っていた。
「仕方がありませんわね。ソーアを始末するしかないということでしょうか」
そう言って首を掻っ切るジェスチャーをしたサーラを見て、皆は絶句した。
この場にいる海軍大将のミルツを始めとした者達は、皆とうに汚職に手を付けている海軍腐敗の原因であり、まさに海軍の・・否、マルセイユの膿そのものが結集していた。
「さて、今日皆に集まってもらったのは他でもないわ。ここ最近の状況について報告してもらっていいでしょうか」
としてこの会議を取りまとめているのが、若くして海軍大将であり、次期マルセイユ当主が確定しているマルセイユ家の長女サーラである。海軍の一部重鎮の会議であり、今この場に当主のシーラはいない。
青い髪に穏やかな瞳。母シーラと良く似た美しい顔立ちで、正確も穏やかとイメージからして以前はまさにマルセイユを治めるに相応しい美しき姫などと持て囃されていた。
「・・・と、以上になります」
やや震える声で部下が報告を終えると、サーラはクスリと微笑んだ。瞬間、この場にいるサーラ以外の全員が戦慄した。
このサーラ・マルセイユは表向きこそ歴代マルセイユ当主のイメージ通りで、常に冷静で穏やかだと言われているが、それは表向きだけのことで、実際は心の内は激しい感情が渦巻くことが多々あるとこの場にいる者は知っている。
むしろ感情の振り幅で言うならば恐らく平均的なそれよりも大きい、それ故に怒らせたときのサーラは歴戦の勇者であるミルツすらも恐ろしく思うほどだ。
そして、先ほどのように微笑したときのサーラはまさに「皆が恐れるほど怒りを感じている状態」なのだということを皆は理解している。
「ふぅ、散々ですね。我々は協定を破り放題で、安くない違約金は払いまくり、破産して自棄にやって公に暴露しようとする商人の始末にも苦心する。その噂を聞いた他の商人も我々との関係を見直そうとしている。信用も財政も地に落ちそうですね」
この場にいる全員は海軍の不正に関わっている。その不正を取りまとめているのがこのサーラだ。
密輸商人より一定の賄賂を受け取ることにより、あえて摘発を見送る。ただし月単位の密輸量は規定量までとする。そうしたことで定期的に収入を得ることが出来、海軍の負担も軽減も出来る。
これまではうまく管理してきたが、ここ最近になって不穏分子が彼女の管理していたシステムを目茶苦茶に引っ掻き回していた。
そう、ソーアのことである。
ソーアが思い思いに摘発を続けることで、既に協定の意味が無くなりかけていた。そうなると高額の賄賂を払っていた商人は黙ってはいない。今は規約金でなあなあで済ませられているのがほとんどだが、これが続けばこれまでの関係を公に暴露しようとする動きが増えるかもしれない。違約金も馬鹿にならず、既に海軍の財政は傾いていた。このままでは海軍どころかマルセイユそのものが没落しかけない、そんな流れになりつつあった。
「はぁ・・・困った妹の暴走のせいですわ本当に。誰に似たのでしょうか」
サーラ以外誰も言葉を発しようとしない。サーラの怒りが頂点に来かかっているのを皆、肌で感じ取っていた。
「仕方がありませんわね。ソーアを始末するしかないということでしょうか」
そう言って首を掻っ切るジェスチャーをしたサーラを見て、皆は絶句した。
11
お気に入りに追加
668
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる