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ろくでなし男

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「おはよう」


アミルカと過ごす最終日、彼女はいつもと同じ時間に俺の部屋にやってきた。


「あれ、今日は早いね」


アミルカが俺の様子を見て言った。
今の俺は服まで外行きの物に着替え終え、すっかり準備万端である。
今までは寝起きから間が無かったり、着替えが済んでいなかったりと準備が出来ていなくて少し待たせてしまうことが多かった。


「何となく目が覚めちまってな」


「そっか」


朝食を取りに行こうと二人で外に出る。
俺がアミルカと過ごす最後の日が始まった。







ーーー


「ようお二人さん!今日も仲良しカップルだね」


「違うって」


「照れるな照れるな。ドリンク一杯サービスしてやっから」




カフェ兼パン屋で朝食を取っていると、馴染の店主が冷やかしてくる。
確かに二週間も二人で一緒いればそう思われても仕方がないなと思いつつ、否定しておく。こうして冷やかされるのも今日で最後かと思うと、何だか気が楽になりホッとするような寂しいような微妙な気持ちになる。
急に明日から俺一人になれば、周りからはどのように思われるだろうか?変な心配や同情なんかされないだろうか?それが気がかりだ。面倒なことにならなきゃいいんだが。


「最近全然働いてないように見えるけど、女にうつつを抜かし過ぎて駄目男になるなよ。になるのだって当面は楽できるかもしれないけど、後が大変なんだからな」


店主の言葉に俺は飲んでいたミルクティーを噴き出しそうになる。俺がアミルカのヒモになろうとしているように見えるのか?
しかしまぁ、確かにここ最近ずっと働き詰めだった俺が、急にこの二週間弱働かずに女を連れまわしてばかりいれば、事情を知らぬ人からそんな邪推もされて然るべきかもしれない。思わず「明日からは働くよ」と言おうかと思ったが、今アミルカの前でそれを言うのは憚られた。この『最後の自由』の終わりを連想させることは極力したくなかったからだ。


「ヒモ・・・ヒモかぁ。フフッ、何かヒモになったショウって似合う気がする」


「やめてくれよ・・・」


俺は尽くされるより尽くすタイプじゃないか?と自分で思いつつも、かつてランドールにいた時のことを思い出した。
エーペレスさんの言うがままにルーデルのイメージチェンジをし、キャンペーンを打ち出して主に婦人から寄付金が多く集まり出した頃に「やっぱりショウはジゴロになれる素質があるわね」と言われたことを。

それからは主に婦人に気に入られるようにショウは空き時間を使っていろいろとしごかれた。話術からマナーの一からの仕込みから、ダンスからいろいろと。 流行り本の読書はその中の一つだ。実際にジゴロとして食っていけるだけの男磨きを徹底されてきたのである。

「いやー我が甥っ子ながら末恐ろしいわ。立派なジゴロになるかもね」

俺はキアラ一筋だ、とんでもねーわと当時はそんなエーペレスさんの言葉に怒ったもんだが、まさかアミルカからもそんな風に言われるなんて思いもよらなかった。
俺はそんなんじゃない・・・と思いつつ、今実際にソーアを故郷に恋人として残しつつ、離れたこのブレリアの地で他の女と傍目には恋人に見られているようなこの状況・・・確かにその手の類の男と見られても仕方がないのか?と、俺は肩を落とした。
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