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今生の別れ

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「さて、半分冗談はさておき・・・」


声のトーンを下げ、持っていたコップをテーブルに置いてドレッドは引き締まった表情になった。
冗談は半分だけだったのか・・・だが今からは冗談とは違う話をするようだ。



「このアミルカのが終われば、変わるのは彼女だけではない。俺とローザも同じく変わる」


それは予想が出来ていたことだった。
自由の時間が終われば、今後アミルカは会うことも難しいと話していた。ならばそのアミルカと共にいるドレッド達も同じように変わるのだろうかとは考えていた。


「もしかしたらこの町で行き交うことはあるかもしれない。だが、このように自由に飲み交わすことはおろか、話をすることすら出来るかわからない」


できるかわからないと言うが、恐らくは出来なくなると考えたほうが良いのだろう。
何がどうなるのかはわからないが、俺達はきっと他人同士に戻る・・・そういうことだろう。


「そして俺達はアミルカとショウのような市井が接近することを防ぐ立場に変わることになる。ショウがアミルカと話をしたくとも、力づくでも引き剝がさねばならなくなる・・・厳密には今でもそうなんだけどな。今後はそれを徹底しなければならなくなる」


市井・・・か。
やはりそれなりに高位の位置にアミルカが就くということなのだろう。
恐らくドレッドは守秘義務に反しない程度にこれからのことを教えようとしてくれている。

時間がくれば俺とアミルカは赤の他人になる。
俺から接することはできないし、恐らくアミルカからの接近も出来なくなるのだろう。ドレッドとローザはそれを監視する立場になり、俺達が境界を逸脱しようとするなら力づくでもそれを阻止するという立場になる。今はまだ個人の裁量でどうにかなるレベルだが、今後はそうもいかないと。
俺とアミルカの今生の別れになると、改めてドレッドは伝えてくれている。
それは俺達がもし深い仲になったとしても、変わることはないのだろう。きっと避けられないことなのだ。


「だからまぁ・・・悔い無くやってくれ。それだけだ」


そう言ってドレッドは残りのビールを飲み干・・・さないで残り三分の一ほどのところでまたコップを置いた。かつての俺と同じくらいの下戸だ。
どうやら『俺と飲む』ことをやりたくて、無理してビールを飲んでいるようだ。それほどまでに俺と飲みたかったのか・・・

気が付くとドレッドは顔を真っ赤にしてテーブルに突っ伏し、ぼそぼそ何かを呟いていた。
ここまで弱いか!
ドレッドを背負って店を出て、これからどうしよう俺の部屋で介抱しようかなどと考えていたら、いつの間にか・・・というより恐らく最初からどこかで見ていたのだろうと思われるローザがやってきて、ドレッドを回収してくれた。


「じゃあ、残りの時間もお願いね」


去り際にローザはそれだけ言った。

残りの時間とやらを強調してくる。
ローザもドレッドも俺の都合を考えずに随分プレッシャーをかけてくれるなと思った。




こうしたこともありながら、俺とアミルカの最後の時間がやってきた。
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