186 / 470
今生の別れ
しおりを挟む
「さて、半分冗談はさておき・・・」
声のトーンを下げ、持っていたコップをテーブルに置いてドレッドは引き締まった表情になった。
冗談は半分だけだったのか・・・だが今からは冗談とは違う話をするようだ。
「このアミルカの自由が終われば、変わるのは彼女だけではない。俺とローザも同じく変わる」
それは予想が出来ていたことだった。
自由の時間が終われば、今後アミルカは会うことも難しいと話していた。ならばそのアミルカと共にいるドレッド達も同じように変わるのだろうかとは考えていた。
「もしかしたらこの町で行き交うことはあるかもしれない。だが、このように自由に飲み交わすことはおろか、話をすることすら出来るかわからない」
できるかわからないと言うが、恐らくは出来なくなると考えたほうが良いのだろう。
何がどうなるのかはわからないが、俺達はきっと他人同士に戻る・・・そういうことだろう。
「そして俺達はアミルカとショウのような市井が接近することを防ぐ立場に変わることになる。ショウがアミルカと話をしたくとも、力づくでも引き剝がさねばならなくなる・・・厳密には今でもそうなんだけどな。今後はそれを徹底しなければならなくなる」
市井・・・か。
やはりそれなりに高位の位置にアミルカが就くということなのだろう。
恐らくドレッドは守秘義務に反しない程度にこれからのことを教えようとしてくれている。
時間がくれば俺とアミルカは赤の他人になる。
俺から接することはできないし、恐らくアミルカからの接近も出来なくなるのだろう。ドレッドとローザはそれを監視する立場になり、俺達が境界を逸脱しようとするなら力づくでもそれを阻止するという立場になる。今はまだ個人の裁量でどうにかなるレベルだが、今後はそうもいかないと。
俺とアミルカの今生の別れになると、改めてドレッドは伝えてくれている。
それは俺達がもし深い仲になったとしても、変わることはないのだろう。きっと避けられないことなのだ。
「だからまぁ・・・悔い無くやってくれ。それだけだ」
そう言ってドレッドは残りのビールを飲み干・・・さないで残り三分の一ほどのところでまたコップを置いた。かつての俺と同じくらいの下戸だ。
どうやら『俺と飲む』ことをやりたくて、無理してビールを飲んでいるようだ。それほどまでに俺と飲みたかったのか・・・
気が付くとドレッドは顔を真っ赤にしてテーブルに突っ伏し、ぼそぼそ何かを呟いていた。
ここまで弱いか!
ドレッドを背負って店を出て、これからどうしよう俺の部屋で介抱しようかなどと考えていたら、いつの間にか・・・というより恐らく最初からどこかで見ていたのだろうと思われるローザがやってきて、ドレッドを回収してくれた。
「じゃあ、残りの時間もお願いね」
去り際にローザはそれだけ言った。
残りの時間とやらを強調してくる。
ローザもドレッドも俺の都合を考えずに随分プレッシャーをかけてくれるなと思った。
こうしたこともありながら、俺とアミルカの最後の時間がやってきた。
声のトーンを下げ、持っていたコップをテーブルに置いてドレッドは引き締まった表情になった。
冗談は半分だけだったのか・・・だが今からは冗談とは違う話をするようだ。
「このアミルカの自由が終われば、変わるのは彼女だけではない。俺とローザも同じく変わる」
それは予想が出来ていたことだった。
自由の時間が終われば、今後アミルカは会うことも難しいと話していた。ならばそのアミルカと共にいるドレッド達も同じように変わるのだろうかとは考えていた。
「もしかしたらこの町で行き交うことはあるかもしれない。だが、このように自由に飲み交わすことはおろか、話をすることすら出来るかわからない」
できるかわからないと言うが、恐らくは出来なくなると考えたほうが良いのだろう。
何がどうなるのかはわからないが、俺達はきっと他人同士に戻る・・・そういうことだろう。
「そして俺達はアミルカとショウのような市井が接近することを防ぐ立場に変わることになる。ショウがアミルカと話をしたくとも、力づくでも引き剝がさねばならなくなる・・・厳密には今でもそうなんだけどな。今後はそれを徹底しなければならなくなる」
市井・・・か。
やはりそれなりに高位の位置にアミルカが就くということなのだろう。
恐らくドレッドは守秘義務に反しない程度にこれからのことを教えようとしてくれている。
時間がくれば俺とアミルカは赤の他人になる。
俺から接することはできないし、恐らくアミルカからの接近も出来なくなるのだろう。ドレッドとローザはそれを監視する立場になり、俺達が境界を逸脱しようとするなら力づくでもそれを阻止するという立場になる。今はまだ個人の裁量でどうにかなるレベルだが、今後はそうもいかないと。
俺とアミルカの今生の別れになると、改めてドレッドは伝えてくれている。
それは俺達がもし深い仲になったとしても、変わることはないのだろう。きっと避けられないことなのだ。
「だからまぁ・・・悔い無くやってくれ。それだけだ」
そう言ってドレッドは残りのビールを飲み干・・・さないで残り三分の一ほどのところでまたコップを置いた。かつての俺と同じくらいの下戸だ。
どうやら『俺と飲む』ことをやりたくて、無理してビールを飲んでいるようだ。それほどまでに俺と飲みたかったのか・・・
気が付くとドレッドは顔を真っ赤にしてテーブルに突っ伏し、ぼそぼそ何かを呟いていた。
ここまで弱いか!
ドレッドを背負って店を出て、これからどうしよう俺の部屋で介抱しようかなどと考えていたら、いつの間にか・・・というより恐らく最初からどこかで見ていたのだろうと思われるローザがやってきて、ドレッドを回収してくれた。
「じゃあ、残りの時間もお願いね」
去り際にローザはそれだけ言った。
残りの時間とやらを強調してくる。
ローザもドレッドも俺の都合を考えずに随分プレッシャーをかけてくれるなと思った。
こうしたこともありながら、俺とアミルカの最後の時間がやってきた。
10
お気に入りに追加
652
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった
さくらはい
ファンタジー
主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ――
【不定期更新】
1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。
性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。
良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。
良家で才能溢れる新人が加入するので、お前は要らないと追放された後、偶然お金を落とした穴が実はガチャで全財産突っ込んだら最強になりました
ぽいづん
ファンタジー
ウェブ・ステイは剣士としてパーティに加入しそこそこ活躍する日々を過ごしていた。
そんなある日、パーティリーダーからいい話と悪い話があると言われ、いい話は新メンバー、剣士ワット・ファフナーの加入。悪い話は……ウェブ・ステイの追放だった……
失意のウェブは気がつくと街外れをフラフラと歩き、石に躓いて転んだ。その拍子にポケットの中の銅貨1枚がコロコロと転がり、小さな穴に落ちていった。
その時、彼の目の前に銅貨3枚でガチャが引けます。という文字が現れたのだった。
※小説家になろうにも投稿しています。
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる