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酔っ払い
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「よう、今夜はちょっとだけ俺に付き合ってくれないか」
今日も今日とて部屋で読書を終えたアミルカを見送ると、背後から声をかけられる。
振り返って見てみると、声の主はローザと同じくアミルカと行動を共にしていたドレッドだった。
アミルカやローザと比べると会う回数が劇的に少ないが、それでも顔を見せたら挨拶程度は交わす・・・ドレッドとはそんな仲だったので、こうして彼の方から誘いにくるとは少々驚きではあるが、ローザが来たならいずれ彼も・・・と少しだけ予想をつけてはいた。
俺はドレッドに「いいぞ」と返事をすると、以前アミルカと一緒に行った酒場に連れられた。
以前来たときは昼間だから客が少ないと思われた店内は、晩飯時になっている今でも空いていた。
「アミルカに聞いた。ビールでいいんだよな」
そう言ってドレッドはテーブルに着くなりビールを二つ注文した。
注文したビールが運ばれてくると、俺達は無言でコツンとお互いのコップを当てあって、くいっと中身を喉に流し込む。
「はぁーっ」
ドレッドは見るからに美味そうだというリアクションをする。そしてすぐさま二口目を口につけていた。
アミルカ達はお酒が好きなんだな・・・俺はまだそこまで好きにはなれてないや、とチビチビやる。
「俺はな・・・」
「・・・?」
二口目を飲んだドレッドが、何やら感極まるようにやや俯きがちになりながら打ち震えている。なんだ?何がどうしたと俺が怪訝に思っていると
「アミルカが認めた男と、いつかこうして飲むのがちょっとした夢だった」
「・・・ブッ!」
ドレッドが突然変なことを言い出し、俺は飲みかけていたビールを噴き出しそうになった。
まるでアミルカの父親か兄のような言い方をするドレッドだが、勝手に俺をアミルカの伴侶か何かに見立てている。
「俺とアミルカはそんなんじゃない・・・」
口を吹きながら否定をしてみるが
「あぁ、構わなくていい。俺が勝手に思っているだけだ」
などと本当に勝手なことを言って来て、もう何も言い返す気にもなれなかった。
「アミルカはな、昔から本当に男・・・いや、他人に馴染めずにいたんだよ」
顔を俯かせて、ドレッドはポツリと言った。
以前ローザにも似たような話を聞いたことを思い出す。
「だから・・・だからなぁ・・・」
いつの間にか、ドレッドの声はどこか泣き声に近い感じになっていた。いや、もしかしたら実際に泣いているのか?泣き上戸?
俺はドレッドの肩に手を置きながら「まぁ、ゆっくりでいいから落ち着いて話せよ」と彼を落ち着けようとする。
「ありがとう。どんなお前だからこそ・・・」
「ん?」
「もうローザも俺もアミルカに手を出したところで責任を取れなどと言わん。アミルカの最後の思い出作りに協力してくれ!」
「はぁーっ、結局ドレッドもその話になるのか」
思わずため息をついてしまう。
泣いていたかと思った俯いた顔をドレッドが急に上げると、今度は彼は途端に笑顔になり、ガハハと笑いながら俺の肩をバシバシと叩いてきた。かなりの馬鹿力で痛い。まだビールは一杯も飲んでいないはずだが、もしかしてドレッドは既に酔っぱらっている!?
「なぁ、別にいいだろうショウ。アミルカは身内びいきでアレだが器量よしだぞ?別に悪い気はしないだろ?」
「・・・はぁ」
すっかり顔を真っ赤にしているドレッドを見て「これは何を言い返したところで駄目だろうな」と俺は思い、適当に相槌を打って流す作戦に出た。
「まぁ、本来俺の立場からすると絶対にこんなことを言ってはいけないし、言った通りにならないように護らなければならないんだ・・・そして、万が一のときは俺はタダではすまん・・・」
フッと遠い目になってベラベラと語るドレッド。
どうやらドレッドはアミルカを守護する立場にいる者か。
アミルカと同じ冒険者パーティを組んでいて、そこのリーダーというのは隠れ蓑でしかないようだと、俺は前から薄々感じていたものを確信に変えた。
「ショウなら、俺はその万が一があってもいいと思ってるんだ。普通なら八つ裂きにするところだぞ!?許すと言ってるんだ。ならもうやることは一つだろう?」
「うるせーぞ!ローザもドレッドもそんなことばかり言いやがって!!」
かつてルーデル家で同じようなことを言われていたことを思い出し、懐かしいやら疲れるやら微妙な気持ちになったのであった。
今日も今日とて部屋で読書を終えたアミルカを見送ると、背後から声をかけられる。
振り返って見てみると、声の主はローザと同じくアミルカと行動を共にしていたドレッドだった。
アミルカやローザと比べると会う回数が劇的に少ないが、それでも顔を見せたら挨拶程度は交わす・・・ドレッドとはそんな仲だったので、こうして彼の方から誘いにくるとは少々驚きではあるが、ローザが来たならいずれ彼も・・・と少しだけ予想をつけてはいた。
俺はドレッドに「いいぞ」と返事をすると、以前アミルカと一緒に行った酒場に連れられた。
以前来たときは昼間だから客が少ないと思われた店内は、晩飯時になっている今でも空いていた。
「アミルカに聞いた。ビールでいいんだよな」
そう言ってドレッドはテーブルに着くなりビールを二つ注文した。
注文したビールが運ばれてくると、俺達は無言でコツンとお互いのコップを当てあって、くいっと中身を喉に流し込む。
「はぁーっ」
ドレッドは見るからに美味そうだというリアクションをする。そしてすぐさま二口目を口につけていた。
アミルカ達はお酒が好きなんだな・・・俺はまだそこまで好きにはなれてないや、とチビチビやる。
「俺はな・・・」
「・・・?」
二口目を飲んだドレッドが、何やら感極まるようにやや俯きがちになりながら打ち震えている。なんだ?何がどうしたと俺が怪訝に思っていると
「アミルカが認めた男と、いつかこうして飲むのがちょっとした夢だった」
「・・・ブッ!」
ドレッドが突然変なことを言い出し、俺は飲みかけていたビールを噴き出しそうになった。
まるでアミルカの父親か兄のような言い方をするドレッドだが、勝手に俺をアミルカの伴侶か何かに見立てている。
「俺とアミルカはそんなんじゃない・・・」
口を吹きながら否定をしてみるが
「あぁ、構わなくていい。俺が勝手に思っているだけだ」
などと本当に勝手なことを言って来て、もう何も言い返す気にもなれなかった。
「アミルカはな、昔から本当に男・・・いや、他人に馴染めずにいたんだよ」
顔を俯かせて、ドレッドはポツリと言った。
以前ローザにも似たような話を聞いたことを思い出す。
「だから・・・だからなぁ・・・」
いつの間にか、ドレッドの声はどこか泣き声に近い感じになっていた。いや、もしかしたら実際に泣いているのか?泣き上戸?
俺はドレッドの肩に手を置きながら「まぁ、ゆっくりでいいから落ち着いて話せよ」と彼を落ち着けようとする。
「ありがとう。どんなお前だからこそ・・・」
「ん?」
「もうローザも俺もアミルカに手を出したところで責任を取れなどと言わん。アミルカの最後の思い出作りに協力してくれ!」
「はぁーっ、結局ドレッドもその話になるのか」
思わずため息をついてしまう。
泣いていたかと思った俯いた顔をドレッドが急に上げると、今度は彼は途端に笑顔になり、ガハハと笑いながら俺の肩をバシバシと叩いてきた。かなりの馬鹿力で痛い。まだビールは一杯も飲んでいないはずだが、もしかしてドレッドは既に酔っぱらっている!?
「なぁ、別にいいだろうショウ。アミルカは身内びいきでアレだが器量よしだぞ?別に悪い気はしないだろ?」
「・・・はぁ」
すっかり顔を真っ赤にしているドレッドを見て「これは何を言い返したところで駄目だろうな」と俺は思い、適当に相槌を打って流す作戦に出た。
「まぁ、本来俺の立場からすると絶対にこんなことを言ってはいけないし、言った通りにならないように護らなければならないんだ・・・そして、万が一のときは俺はタダではすまん・・・」
フッと遠い目になってベラベラと語るドレッド。
どうやらドレッドはアミルカを守護する立場にいる者か。
アミルカと同じ冒険者パーティを組んでいて、そこのリーダーというのは隠れ蓑でしかないようだと、俺は前から薄々感じていたものを確信に変えた。
「ショウなら、俺はその万が一があってもいいと思ってるんだ。普通なら八つ裂きにするところだぞ!?許すと言ってるんだ。ならもうやることは一つだろう?」
「うるせーぞ!ローザもドレッドもそんなことばかり言いやがって!!」
かつてルーデル家で同じようなことを言われていたことを思い出し、懐かしいやら疲れるやら微妙な気持ちになったのであった。
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