国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ

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他人の恋愛に興味がある

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どうしてアミルカがそうまでして俺とソーアのことを訊きだしたいのかわからなかったが、それでも俺は自分の素性を隠し、ある程度ぼかした上で俺とソーアのことを話していた。

ざっくりと元いた婚約者と横恋慕してきた男に嵌められ、故郷を追われることになったこと。そのドタバタでソーアと結ばれたこと。
王族だの貴族だの身分をある程度ぼかしたとはいえ、それでも普通に聞けば滅茶苦茶な話だ。作り話にしてもお粗末であると言われそうだ。
これで横恋慕してきたのが王族で、俺が辺境伯家の嫡男だったといえば「ふざけてないで真面目に言って」とかアミルカは怒っただろうか?

だが、そんな荒唐無稽ともいえる話を、アミルカは最後まで黙って聞いてくれた。
ついでに話に矛盾が出てきてしまいそうだったため、あらかじめこのオークヨークにいるときの俺の設定にしていた「元傭兵団にいた」ということについてはフェイクであると明かしておいた。





「なるほど、中々壮絶な経験があったんだね」


話を聞き終えたアミルカはそう言った。


「ショウはどこか苦労人みたいな只者じゃないオーラが出てたから、何となく楽して生きていただけの人だとは思ってはいなかったの。傭兵団にいたとか言っていたけど、多分それだけじゃないんだろうな~って。でもこれで合点がいったわ」


「そうかい」


「それじゃ、ソーアさんとは恋人として過ごした時間は短いんだね」


「まぁ一晩・・・もかかってないからな。けど気持ちだけは深く繋がっていると思ってる」


多分、だが。
きっとソーアは今でも俺のことを想い続けてくれていると思う。

にしても改めて考えるとソーアとのことは随分と恥ずかしい話なのだが、場の空気がなんとなくそうなっているのか思わず話してしまった。何か「アミルカになら話してもいいか」そんな気持ちもあるような気もしたが、普通のテンションなら絶対に話せないようなことだ。


「そっか、いろいろな恋愛があるんだね・・・勉強になるなぁ」


俺のはちょっと特殊だと思ったが、それでもアミルカは満足そうに頷いていた。


「どうしていきなりこんなことを訊いたんだ?」


「ちょっと恋愛というものに興味があって」


そう言ってアミルカはさっきまで自分が読んでいた本に視線を向けた。この部屋にあるのは流行りの恋愛小説がほとんどだ。


「物語にあるようなものじゃなくて、実際の恋愛にはどんなものがあるんだろって、読んでいて気になってきたの。私にはできないことだから」


俺の経験は小説にもあまりないようなものな気がするが・・・って、アミルカが気になることを言った気がする。
眼を見開いた俺の反応を見て、アミルカは苦笑いをしながら言った。


「私は恋愛結婚することができないの。既に相手が決まっているから」


その言葉に俺は大きな衝撃を受けた。
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