国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

不貞のご案内

「ショウ、前にも言ったけどあなたはアミルカにとって特別なの」


「もしそれが本当だとして、どうしてそんな話になるんだ」


「アミルカに最後の思い出を作ってあげられるのは、あなたしかいないのよ」


「だから今・・・」


毎日アミルカと一緒にいるんじゃないか。
そう言おうとして、俺の手を握っていたローザに強く強く力が込められていることに気付いた。
冗談ではなく、本気で言っているらしい。


「知っての通り、俺には待たせている相手がいるんだよ。例えアミルカとそういう仲になったとして、最後まで一緒にいられるわけじゃない」


そうでなくても俺はアミルカに手を出すつもりはないがそう言った。こういえば諦めると思ったからだ。


「思い出作りと言っているでしょ？別に最後まで責任を持てと言っているわけじゃないの」


しかし通じなかった。


「アミルカに残された時間は長くないの。時がくれば、アミルカは全ての自由が無くなることになる。それでも愛したあなたとの思い出があれば、あの子はきっと強く生きていけるわ」


「愛したってそんな・・・適当なことを言うな。どうしてそんなことがわかるんだ」


アミルカの個人の感情を無視して決めつけで言っているとしたらとんでもないことだ。
だが、ローザのアミルカに対する思い入れは半端なく強いことはこれまでの付き合いでわかった。そんな彼女がアミルカの意思を無視するとは思えない。
だからもしかしたら・・・本当にローザの言う通りなのかもしれない。
自由が無くなる・・・
アミルカはもうすぐ一緒に遊んだりすることができなくなる。それが具体的にどういうことになるのかは今はわからないが、アミルカやローザの様子からすると下手すると時がくれば全く会えなくなる、一切の縁が切れるようなことになるということだろう。そしてそれが恐らく残り一週間・・・それが過ぎたときからなのだろう。


「思い出作りのためにって、大体そんなことしたら俺はただの不貞野郎じゃねぇか」


「そこを曲げてお願いするわ」


随分勝手に言ってくれる。
一応言っておくと俺は別にアミルカのことは嫌いじゃない。むしろソーアがいなければ恋に落ちていたかもしれん。
だが、こうして他国で過ごしている間にもソーアはランドールに俺が帰ることができるように尽力してくれていると考えると、どんな事情があれ一時でも浮気などできようか。


「とにかくダメなものはダメだ。帰ってくれ」


俺はあえて冷たく突き放した言い方をした。
ローザは気にする様子でもなかったように見えたが、それでも俺の言う通りに無言ですぐに部屋を出て行った。ローザ自身、無茶ぶりをしていることがきっとわかっているのだ。それでも無理を通して道理を引っ込ませたいだけの気持ちが彼女にあるのだろう。


「はぁ・・・」


俺がもっといい加減なやつで浮気症だったらこんなことにはならなかったんだろうな。
俺の意志は変わらないが、それでも翌日からまたアミルカと過ごしていくことに少しだけ怖くなった。
ローザが言うようにアミルカが俺のことを愛しているとして、それを知らされた俺はどうやって接すれば良いのか。