177 / 471
ショウのトラウマ
しおりを挟む
インチキ露天商のところを離れてからも、俺達は朝市を見て回った。
そうすると何人か馴染の露天商に会ったのだが、俺とアミルカが一緒にいることを散々冷やかされる。
俺は否定するのだが、アミルカがわざとほのめかすようなこと言ったり紛らわしい態度を取ったりで、俺は散々振り回された。
次に会ったときもまた今日のことで冷やかされそうだと思うと頭が痛いが、何だかアミルカは楽しそうにしていたので俺は特に何も言わなかった。
朝市をある程度回った頃には、既に時刻は昼前になろうとしていて朝市もぞろぞろと解散しようとしていた。
「で、次はどうする?」
俺がアミルカに問いかけると、彼女は一つの建物を指さした。
「あそこに行ってみたい」
俺が目をやってみたそれは、まだ俺が言ったことのない大衆の娯楽『芝居小屋』だった。
ーーーーー
アミルカの希望により、俺達は芝居小屋に入った。
「えーっと、演目は・・・」
アミルカは俺の隣でパンフレットを見ながらうきうきとしている。
しかし残念ながら俺はと言えば、うきうきとはほど遠い感情を抱いていた。
「いやー、これまでずっと気になってたんだけど、一度も入れてなかったんだよね。なんだか一人で入るのも気が引けちゃってさ」
「そうか。俺も初めてだ」
俺もこの芝居小屋の存在は知っていた。だが、まだ一度も入ったことがなかった。
ここに来ると・・・どうしても、かつての婚約者のキアラのことを思い出してしまうからだ。
彼女は舞台劇が好きだった。だから俺はよく彼女に付き合ってよく一緒に舞台劇を見に来ていた。
だから、劇=キアラと連想してしまい、どうしてもここに足を運ぶ気にはなれなかった。
キアラのことを思い出してしまうのがつらかった。
俺がランドールでキアラと行っていた舞台劇の劇場は貴族街にあるもので、当然客は貴族しかいなかった。だから建物からしてここ芝居小屋とは全然違って立派だ。
だが、こうして中に入ってみると客層などは全然違うはずなのだが、場の雰囲気はどこか似ているものがあった。
この劇が始まるまでの高揚感と緊張感。
やはり、嫌でもキアラと一緒にいた時を思い出してしまう。
こうして劇が始まるまでの間に、いろいろと話をした。
劇が終わってから感想を話し合った。
次はこれを観に行きましょうと約束をした。
どれも楽しかった記憶がある。だが、今となってはつらく苦しい思い出でしかない。
俺はあのとき楽しかった。
だが、キアラは違った。彼女はずっと俺と一緒にいるとき演技をしていたと言っていた。そのキアラの言葉が俺の心を深く抉った。
ソーアがいなければ、俺は女性不信・・・いや、下手すると人間不信になっていたんじゃないか。それくらいの衝撃を受けた。
俺にとって劇場はつらい思い出のある場所だ。こうしている間も落ち着かない。
いつかは克服できるのだろうか。忘れることができるのだろうか。
そんなことを考えているうちに、緞帳が上がり劇が始まった。
そうすると何人か馴染の露天商に会ったのだが、俺とアミルカが一緒にいることを散々冷やかされる。
俺は否定するのだが、アミルカがわざとほのめかすようなこと言ったり紛らわしい態度を取ったりで、俺は散々振り回された。
次に会ったときもまた今日のことで冷やかされそうだと思うと頭が痛いが、何だかアミルカは楽しそうにしていたので俺は特に何も言わなかった。
朝市をある程度回った頃には、既に時刻は昼前になろうとしていて朝市もぞろぞろと解散しようとしていた。
「で、次はどうする?」
俺がアミルカに問いかけると、彼女は一つの建物を指さした。
「あそこに行ってみたい」
俺が目をやってみたそれは、まだ俺が言ったことのない大衆の娯楽『芝居小屋』だった。
ーーーーー
アミルカの希望により、俺達は芝居小屋に入った。
「えーっと、演目は・・・」
アミルカは俺の隣でパンフレットを見ながらうきうきとしている。
しかし残念ながら俺はと言えば、うきうきとはほど遠い感情を抱いていた。
「いやー、これまでずっと気になってたんだけど、一度も入れてなかったんだよね。なんだか一人で入るのも気が引けちゃってさ」
「そうか。俺も初めてだ」
俺もこの芝居小屋の存在は知っていた。だが、まだ一度も入ったことがなかった。
ここに来ると・・・どうしても、かつての婚約者のキアラのことを思い出してしまうからだ。
彼女は舞台劇が好きだった。だから俺はよく彼女に付き合ってよく一緒に舞台劇を見に来ていた。
だから、劇=キアラと連想してしまい、どうしてもここに足を運ぶ気にはなれなかった。
キアラのことを思い出してしまうのがつらかった。
俺がランドールでキアラと行っていた舞台劇の劇場は貴族街にあるもので、当然客は貴族しかいなかった。だから建物からしてここ芝居小屋とは全然違って立派だ。
だが、こうして中に入ってみると客層などは全然違うはずなのだが、場の雰囲気はどこか似ているものがあった。
この劇が始まるまでの高揚感と緊張感。
やはり、嫌でもキアラと一緒にいた時を思い出してしまう。
こうして劇が始まるまでの間に、いろいろと話をした。
劇が終わってから感想を話し合った。
次はこれを観に行きましょうと約束をした。
どれも楽しかった記憶がある。だが、今となってはつらく苦しい思い出でしかない。
俺はあのとき楽しかった。
だが、キアラは違った。彼女はずっと俺と一緒にいるとき演技をしていたと言っていた。そのキアラの言葉が俺の心を深く抉った。
ソーアがいなければ、俺は女性不信・・・いや、下手すると人間不信になっていたんじゃないか。それくらいの衝撃を受けた。
俺にとって劇場はつらい思い出のある場所だ。こうしている間も落ち着かない。
いつかは克服できるのだろうか。忘れることができるのだろうか。
そんなことを考えているうちに、緞帳が上がり劇が始まった。
12
お気に入りに追加
658
あなたにおすすめの小説
スキルを極めろ!
アルテミス
ファンタジー
第12回ファンタジー大賞 奨励賞受賞作
何処にでもいる大学生が異世界に召喚されて、スキルを極める!
神様からはスキルレベルの限界を調査して欲しいと言われ、思わず乗ってしまった。
不老で時間制限のないlv上げ。果たしてどこまでやれるのか。
異世界でジンとして生きていく。
月白色の叙情詩~銀礫の魔女が綴るもの~
羽月明香
ファンタジー
魔女は災いを呼ぶ。
魔女は澱みから生まれし魔物を操り、更なる混沌を招く。そうして、魔物等の王が生まれる。
魔物の王が現れし時、勇者は選ばれ、勇者は魔物の王を打ち倒す事で世界から混沌を浄化し、救世へと導く。
それがこの世界で繰り返されてきた摂理だった。
そして、またも魔物の王は生まれ、勇者は魔物の王へと挑む。
勇者を選びし聖女と聖女の侍従、剣の達人である剣聖、そして、一人の魔女を仲間に迎えて。
これは、勇者が魔物の王を倒すまでの苦難と波乱に満ちた物語・・・ではなく、魔物の王を倒した後、勇者にパーティから外された魔女の物語です。
※衝動発射の為、着地点未定。一応完結させるつもりはありますが、不定期気紛れ更新なうえ、展開に悩めば強制終了もありえます。ご了承下さい。
異世界で『魔法使い』になった私は一人自由気ままに生きていきたい
哀村圭一
ファンタジー
人や社会のしがらみが嫌になって命を絶ったOL、天音美亜(25歳)。薄れゆく意識の中で、謎の声の問いかけに答える。
「魔法使いになりたい」と。
そして目を覚ますと、そこは異世界。美亜は、13歳くらいの少女になっていた。
魔法があれば、なんでもできる! だから、今度の人生は誰にもかかわらず一人で生きていく!!
異世界で一人自由気ままに生きていくことを決意する美亜。だけど、そんな美亜をこの世界はなかなか一人にしてくれない。そして、美亜の魔法はこの世界にあるまじき、とんでもなく無茶苦茶なものであった。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
ボッチの少女は、精霊の加護をもらいました
星名 七緒
ファンタジー
身寄りのない少女が、異世界に飛ばされてしまいます。異世界でいろいろな人と出会い、料理を通して交流していくお話です。異世界で幸せを探して、がんばって生きていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる