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ショウのトラウマ

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インチキ露天商のところを離れてからも、俺達は朝市を見て回った。
そうすると何人か馴染の露天商に会ったのだが、俺とアミルカが一緒にいることを散々冷やかされる。
俺は否定するのだが、アミルカがわざとほのめかすようなこと言ったり紛らわしい態度を取ったりで、俺は散々振り回された。
次に会ったときもまた今日のことで冷やかされそうだと思うと頭が痛いが、何だかアミルカは楽しそうにしていたので俺は特に何も言わなかった。






朝市をある程度回った頃には、既に時刻は昼前になろうとしていて朝市もぞろぞろと解散しようとしていた。


「で、次はどうする?」


俺がアミルカに問いかけると、彼女は一つの建物を指さした。


「あそこに行ってみたい」


俺が目をやってみたそれは、まだ俺が言ったことのない大衆の娯楽『芝居小屋』だった。






ーーーーー

アミルカの希望により、俺達は芝居小屋に入った。



「えーっと、演目は・・・」



アミルカは俺の隣でパンフレットを見ながらうきうきとしている。
しかし残念ながら俺はと言えば、うきうきとはほど遠い感情を抱いていた。


「いやー、これまでずっと気になってたんだけど、一度も入れてなかったんだよね。なんだか一人で入るのも気が引けちゃってさ」


「そうか。俺も初めてだ」



俺もこの芝居小屋の存在は知っていた。だが、まだ一度も入ったことがなかった。

ここに来ると・・・どうしても、かつての婚約者のキアラのことを思い出してしまうからだ。
彼女は舞台劇が好きだった。だから俺はよく彼女に付き合ってよく一緒に舞台劇を見に来ていた。
だから、劇=キアラと連想してしまい、どうしてもここに足を運ぶ気にはなれなかった。
キアラのことを思い出してしまうのがつらかった。


俺がランドールでキアラと行っていた舞台劇の劇場は貴族街にあるもので、当然客は貴族しかいなかった。だから建物からしてここ芝居小屋とは全然違って立派だ。
だが、こうして中に入ってみると客層などは全然違うはずなのだが、場の雰囲気はどこか似ているものがあった。
この劇が始まるまでの高揚感と緊張感。
やはり、嫌でもキアラと一緒にいた時を思い出してしまう。

こうして劇が始まるまでの間に、いろいろと話をした。
劇が終わってから感想を話し合った。
次はこれを観に行きましょうと約束をした。

どれも楽しかった記憶がある。だが、今となってはつらく苦しい思い出でしかない。

俺はあのとき楽しかった。
だが、キアラは違った。彼女はずっと俺と一緒にいるとき演技をしていたと言っていた。そのキアラの言葉が俺の心を深く抉った。
ソーアがいなければ、俺は女性不信・・・いや、下手すると人間不信になっていたんじゃないか。それくらいの衝撃を受けた。

俺にとって劇場はつらい思い出のある場所だ。こうしている間も落ち着かない。
いつかは克服できるのだろうか。忘れることができるのだろうか。

そんなことを考えているうちに、緞帳が上がり劇が始まった。
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