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線引きはしっかりと

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「この黒い宝石はルード地方にある『黒の森』という、魔物の巣窟になっている危険な大森林にある岩場からしか採掘できない貴重なものなのさ。だから単純にアクセサリとしても価値があるスグレモノなんだよ」


店主はベラベラとなおもいい加減な嘘をついている。
黒の森周辺で最近採掘できる宝石などない。魔石ウラウムの鉱脈はあったが。あったらあれほど財政逼迫していなかったと思われる。

店主が売りつけようとしているペンダントの石は確かに綺麗で珍しい黒い宝石だが、ルードではなく全然別のところで採取できるやつだろうと思われる。しかもそれほど金銭的価値は高くないと見た。高価な宝石は何度か見たことがあるから、多分高い安いくらいは俺だってわかるはず・・・だ。

アミルカはそれをわからないアミルカはふんふんと興味深そうに店主の話を聞いて興味をそそられているようだが、流石にこんないい加減なものを買いたくも無いし買わせたくもない。どう言ったものかと考えていると・・・


「なぁ、どうだいカレシよ。お嬢ちゃんに買ってあげてよ」


店主が俺にそう振ってきた。
くっ、やはりそうなるか・・・流れ的にこうなる気がしていたんだ。
さてどうしたものかと俺は悩んだものの


「うーん、とっても興味あるけど、やめとくね」


なんとアッサリとアミルカがそう言ったのだった。
随分な食いつきようだったから、まさかアミルカがそう言うとは思わなかったのか、店主が「えーっ」と言って驚いている。てっきり買わされそうな流れになるのかと思ったので、これには俺も少し驚いていた。


「故郷にいる彼女さんに悪いから、残念だけどやめとくね。ショウがフリーだったら買ってもらっていたかもだけどね・・・いくらショウを今借りてるとはいえ、線引きはしっかりしないと」


アミルカは小悪魔っぽい笑顔を浮かべてそう言った。

まぁ・・・ソーアにもまだ満足に贈り物をしたことがないのに、俺がアミルカにいい加減な作り話とはいえ恋人に送るようなものを送ったらまずいわな。助かった。


「ん?ん?なに、君たちなんか訳あり?」


俺とアミルカの顔を相互に見て勝手に何かを察した様子の店主。


「よし、そんな君たちにはこんなものがオススメでさーー」


そう言って新たに何かを売りつけようと商品をごそごそ漁っている店主を見て、アミルカはアハハハと面白そうに笑っていた。

しかし、俺がフリーだったら買ってもらっていたかも・・・か。
からかっているだけなのかもしれないが、俺はなんだか少し意識してしまって落ち着かなかった。
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