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不意に意識してしまう祖国

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俺とアミルカは外へ出て朝市に来ていた。

出かけて何をするにしても、とりあえずは極限まで空になった俺の腹を満たすためである。
オールヨークの朝市は朝からいろいろな出店がある。当然、食べ物の屋台もたくさん出ている。
オールヨーク・・・というよりこのブレリアという国は他民族国である。いろいろな国から様々な人種がやってくる中で、ここでは当然のように食文化が多様性を極めに極めていた。
朝から酒を飲む人もいれば、肉を食べる人もいる。昼夜を問わず、オールヨークでは様々な食べ物にありつけるのだ。
ちなみにランドールでは王都ですら朝から肉を食える場所などそうそうない。


「今日は・・・ここにしてみるか」


俺は適当に出店をチョイスする。
俺が見たこともない薄いパンのような生地に、野菜と肉をサンドする食べ物だった。


「中々いけるな」


大味だが、空腹の今の俺にはとても美味く感じるものだった。


「うん、おいしい」


隣で一緒に食べているアミルカにも好評のようだ。

朝市の出店では様々な屋台がある。数が多すぎていまだに全てを把握してはいない。
たまにこうして朝市に出て俺は適当に店を選んで食べている。ハズレを引くことも多いが、こうしてたまに当たりを引くと面白いのでよく来ているのだ。ランドールでは味わえない楽しさだ。


「ランドールか・・・」


最近はこうしてブレリアならではの物を食っているときにも、どうにも意識してしまう祖国ランドール。
ラルス教が禁止物と定め、ランドールも禁止する条約に批准しているはずの死人の種が大量にあそこに運ばれている。
ここ最近は密輸している隊商を取り締まるとほぼほぼ行先はランドール。中には今でも目的地を自供しない隊商もいるが、十中八九ランドールだろう。
密輸業者をいくら捕まえたところで決して真相にはたどり着けない、そんな気がする。
かといってただただランドールに禁止物が持ち込まれるのを阻止するだけの日々もモヤモヤする。

今度来るという聖騎士団とやらが、本格的に調査をすれば話は変わってくるのだろうか?
もし聖騎士団の調査でいろいろわかったとして、そのときランドールはどうなるのだろう。
もしランドールが禁止物を大量に国家ぐるみで密輸していたとなると、ラルス教はランドールを神敵として滅ぼしてしまうのだろうか。

そのとき俺はただ祖国が滅びるのを見ているしかないのか?
何もかも忘れてこうして呑気に飯食いながら、他人事にように考えるときが来るのだろうか。

だが、ランドールにはソーアを始めとして祖国に残っている俺の大事な人がたくさんいる。
今でも俺が帰られるように尽くしてくれている人がいる。

今更ながら、こうして追放先のブレリア生活を満喫していることに、罪悪感を俺は少し感じ始めていた。
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