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俺が悪いのか
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「うっ・・・うううう・・・」
朝、俺はいつもより早く目が覚めた。
昨日はアミルカの時とローザの時とで二回も飲むことになったわけだが、元より早い時間に飲み始めたために、終わりもそれほど遅い時間にならなかったためか、どうやら幸いにも二日酔いにはならなかったようだ。
が、うっすら目が覚めてすぐに感じる部屋に充満した酒臭さ!これが不快で仕方が無く、俺は眠たかった体を無理に起こして換気のために窓を全開にした。
「はぁ・・・」
綺麗な空気を吸って気分を落ち着ける。
空を見ると見事なまでの快晴だった。今日は確かアミルカと会うことになる流れになっていたような気がするが、まさにお出かけ日和といった感じだ。
ぐぅぅぅぅぅぅ
「うっ・・・」
ここで腹の虫が盛大に鳴った。
昨日は飲んでばかりでろくに食べ物で胃を満たしていなかったことを思い出す。
今そのツケを払えとばかりに胃が食べ物をよこせと求めて喚いているようだった。
これから約束があるわけだが、それにしたってこの極度の空腹のままでは動くことができない。
俺は宿屋の女将さんに何か作ってもらおうと部屋を出て、ロビーまで向かった。
「・・・あれ?」
ロビーに着くと、そこにはアミルカがいた。
「あ、おはよう・・・」
「どうしてそんなところに・・・」
アミルカはロビーにある椅子に腰をかけていた。ここで時間を潰していたのか、誰かを待っていたかのようだった。
「・・・あれ、もしかして俺のことを待ってたのか?」
ピンと来てそう言うと、アミルカは赤面して頷いた。
「ちょっと浮かれちゃってここに来るの早すぎちゃって・・・あまり早く起こすのもって迷っていたら、女将さんがここで待ってて良いよって言ってくれたの」
時計を見るとまだ六時にもなっていない。確かに人を訪ねて起こすには早い時間かもしれない。俺は別に気にしなくていいのに。
「女を待たせる男のほうが悪いんだから、別に気にしないで起こせばいいのにってアタシは言ったんだけどね。ちゃんと寝かせてあげたいってこの子が言ったんだよ。優しい子だね」
カウンターにいる女将さんが言った。
まだこの時間なのに待たせるも何もないはずなんだが、なんだか俺が悪いことをしたみたいな気持ちになってきた。
「なんか・・・悪かったな」
とりあえず俺が謝ると
「ううん、私が
「そうだよ!あんたみたいな若い男が女を待たせるなんて10年早いよ!」
アミルカの返事にかぶせて女将さんの怒声が轟く。
俺か?全面的に俺が悪いのか?
「なぁショウ君」
「ファッ!?」
いつの間にか俺の首に腕を回してきたのは、女将さんの旦那さんだった。優しそうな人なんだが、いつも大人しくて、影が薄い人だ。常に女将さんの尻にしかれているイメージがある。
その旦那さんがまるで気配を感じさせずに俺に近づいていたことに驚きを隠せない。
旦那さんは女将さんやアミルカに聞こえないような小さな声で俺の耳元で囁いた。
「自分が悪くなくてもとりあえず女性には謝っておきなさい。それが長く続くコツだよ」
それだけ言って旦那さんはスルッと俺の体から離れ、宿屋の廊下の掃除を始めた。
アドバイス・・・されたんだろうか。
朝、俺はいつもより早く目が覚めた。
昨日はアミルカの時とローザの時とで二回も飲むことになったわけだが、元より早い時間に飲み始めたために、終わりもそれほど遅い時間にならなかったためか、どうやら幸いにも二日酔いにはならなかったようだ。
が、うっすら目が覚めてすぐに感じる部屋に充満した酒臭さ!これが不快で仕方が無く、俺は眠たかった体を無理に起こして換気のために窓を全開にした。
「はぁ・・・」
綺麗な空気を吸って気分を落ち着ける。
空を見ると見事なまでの快晴だった。今日は確かアミルカと会うことになる流れになっていたような気がするが、まさにお出かけ日和といった感じだ。
ぐぅぅぅぅぅぅ
「うっ・・・」
ここで腹の虫が盛大に鳴った。
昨日は飲んでばかりでろくに食べ物で胃を満たしていなかったことを思い出す。
今そのツケを払えとばかりに胃が食べ物をよこせと求めて喚いているようだった。
これから約束があるわけだが、それにしたってこの極度の空腹のままでは動くことができない。
俺は宿屋の女将さんに何か作ってもらおうと部屋を出て、ロビーまで向かった。
「・・・あれ?」
ロビーに着くと、そこにはアミルカがいた。
「あ、おはよう・・・」
「どうしてそんなところに・・・」
アミルカはロビーにある椅子に腰をかけていた。ここで時間を潰していたのか、誰かを待っていたかのようだった。
「・・・あれ、もしかして俺のことを待ってたのか?」
ピンと来てそう言うと、アミルカは赤面して頷いた。
「ちょっと浮かれちゃってここに来るの早すぎちゃって・・・あまり早く起こすのもって迷っていたら、女将さんがここで待ってて良いよって言ってくれたの」
時計を見るとまだ六時にもなっていない。確かに人を訪ねて起こすには早い時間かもしれない。俺は別に気にしなくていいのに。
「女を待たせる男のほうが悪いんだから、別に気にしないで起こせばいいのにってアタシは言ったんだけどね。ちゃんと寝かせてあげたいってこの子が言ったんだよ。優しい子だね」
カウンターにいる女将さんが言った。
まだこの時間なのに待たせるも何もないはずなんだが、なんだか俺が悪いことをしたみたいな気持ちになってきた。
「なんか・・・悪かったな」
とりあえず俺が謝ると
「ううん、私が
「そうだよ!あんたみたいな若い男が女を待たせるなんて10年早いよ!」
アミルカの返事にかぶせて女将さんの怒声が轟く。
俺か?全面的に俺が悪いのか?
「なぁショウ君」
「ファッ!?」
いつの間にか俺の首に腕を回してきたのは、女将さんの旦那さんだった。優しそうな人なんだが、いつも大人しくて、影が薄い人だ。常に女将さんの尻にしかれているイメージがある。
その旦那さんがまるで気配を感じさせずに俺に近づいていたことに驚きを隠せない。
旦那さんは女将さんやアミルカに聞こえないような小さな声で俺の耳元で囁いた。
「自分が悪くなくてもとりあえず女性には謝っておきなさい。それが長く続くコツだよ」
それだけ言って旦那さんはスルッと俺の体から離れ、宿屋の廊下の掃除を始めた。
アドバイス・・・されたんだろうか。
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