国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

急展開×２

「えっ・・・」


アミルカの目が驚きで見開かれた。
何だか恥ずかしいことを言ってしまった気がするけど、それでも勢いで俺は続けた。


「俺にできることは何でもするさ。やりたいことがあったら言ってくれ」


僅かに残った2週間。先のことを考えると柄の間の現実逃避でしかないだろう。
それでも、残り2週間の間にもし彼女がやり残したことがあるのだとしたら、俺はそれを叶えて上げたいと思った。

今思えば思い上がった発想だったかもしれない。もし彼女にやりたいことがあったのだとしても、そんなものはこれまでの時間でいくらでもやる時間はあったろうし、今の今までやり残したことはないだろうと冷静に考えたら思いつくはずだった。しかも俺がいなきゃできないことなんてそんなにあるとも思えない。

だが、それでもアミルカは


「本当！？」


弾かれたように笑顔でそう言った。
ぐいっと身を乗り出して顔を寄せて


「今何でもするって言ったよね！？」


とわざわざ確認を取りにくる。


「お、おぅ・・・」


思わず気圧されて俺は情けない返事をした。


「そう。それじゃ、何をするか考えるから今日は帰るね！明日そっちに行くから家にいてよね！」


バーンと飲み代にしては十分すぎるほどのお金を置いて、アミルカは外へ飛び出していった。


「・・・」


俺はそんなアミルカを茫然と見送った。なんだかよくわからないが俺の提案は大変喜ばれたらしい。
っと、それにしても勢いで言ってしまったが、明日からは可能な限り時間を作らないといけない。極秘依頼とて舞い込むだろうから、極力休めるときは休んで・・・ってギルドにお願いしにいくしかないのか。

そんなことを考えていると





「同席、良いかしら」


聞き覚えのあるどこか色気の漂う声が聞こえる。
そこに目をやると、そこにはいつの間にかローザがいた。


「そういう神出鬼没なの、やめてくれねぇか」


俺はそう言ったが、それでも最初の頃よりは驚いていない。ちょっとずつ彼女の登場にも慣れてきたようだ。アミルカのことで何かがあったとき、まるで彼女は注釈を入れるかのように登場する。なんとなくそのパターンは覚えた。
流石に今回は予め気配を察して、というわけにはいかず遅れを取ってしまったが。


「ごめんね。こういうの好きなの。慣れてもらうしかないわ」


ローザは悪びれもせずそう言った。悪趣味なことだ。
いつの間に注文したのか知らないが、マスターがやってきてテーブルに2杯のビールが置かれた。


「それじゃ、飲み直しましょ？」


「えぇ・・・（困惑）」


絶世の美女に誘われて、俺は不本意ながらも唐突な飲み直しをすることになったのだった。
何だか今日は急展開が多くて疲れるな。