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ダグラスの絶望

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「上王陛下が関わっていた・・・だと?」


「そうだ。陛下と先代公爵、そしてトウシ・ルーデルは親交が深かった。ショウとキアラを婚約させればどうかと話を持ち掛けたのが陛下であったと聞いている」


「わ、私は聞いていない!」


「陛下はあまり貴族同士の婚姻には介入してこなかったからね。なのにルーベルトとルーデルとの婚姻だけ介入したのかと言われるのは少し体裁が悪いと思ったのか、本人たっての希望であまり表沙汰にはならなかった」


「わ、私だってそれを知っていれば、こんなことは・・・」


ダグラスの顔は蒼白だった。
ここに来て自分がこれまでやってきたことが上王陛下の意に沿わぬことであったことを知り、もはや気が気ではない様子だった。


「まぁ先代は君の意見を聞かずに強引に話をまとめてしまったからね。わざわざ君に話すまいと思ったんだろう。別に陛下のことを話さずとも、取りまとめた婚約をこちらの都合で破棄させるなんてことは、人並みのモラルがあれば通常やらないことだからね」


「・・・ぐっ・・・!」


小ばかにしたように言うチェスターに対し、ダグラスは言い返すことも出来ずに拳を握りしめる。

先代への当てつけと権力欲からラルスの話に乗り、ショウとの婚約破棄を画策した。
モラルのない不義理な行為であることの自覚はあった。だから何も言い返すことができなかった。

親戚一同は陛下が縁談に関わっていることを知っていたから、ラルスと婚約を結び直すことに対して反対していた。ただの世間体を気にしてのことにしては、どうも強く反対されるなと当時は疑問に思ったこともあったが、これで合点がいった。

自分だけが知らなかった。とんだ道化ではないか。
せめてそのときに陛下のことについて教えてくれれば、まだ取返しがついたかもしれないものを。
ただ自分達の気に入らない自分が本家の当主として君臨しているのが気に入らないからと、失墜するのを眺めていたのか。



「ま、君に本家の当主としての器が無いのは良くわかった。君の頼みの王族との縁談も絶望的だろうし、今度は君には苦難の道が待ち受けているだろうね」


「・・・・・・」


ダグラスは何も言い返さなかった。その気力もなかった。


「此方としては君と関わって巻き添えを食らうわけにはいかないのでね。手紙に書いた通り、今後は疎遠にさせてもらうよ」


「・・・そうか」


すっかり気力を無くしたダグラスは、スッと立ち上がるとおぼつかない足取りで帰っていった。
プライドも希望も失った彼は、これからどうしたら良いのか全くわからなくなっていた。


だからこそ、この後にやってくる愚かな囁きにも耳を貸してしまうことになった。
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