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愚かな孫もようやく気付いた

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「おい、私は第一王子であるラルスだぞ。命令だ。この扉を開けないか」


ラルスは追い出された部屋の前で、執拗に開けるように兵士に絡んでいた。
しかし離宮の兵士たちはダリスのみの命に従う。バレスやラルスが命じたところで1ミリも動かない。


「くっ・・・!」


力づくでは言うまでもなく易々とはじき返される。
権力で押し通そうとしても微動だにしない。脅しをかけてもピクリとも表情は動かない。

まるで岩のように扉の前に聳え立つ兵士たちに、ラルスはついに強行突破を諦めた。
扉の向こうではバレスとダリスが話し合いをしているはずだ。その話が終わるまで仕方なく待とうと頭を切り替えた。



(しかし、なんだというんだ・・・お祖父様め、私より辺境伯をとるとは、何をとちくるっているのだ)


ラルスはダリスが王族である以上、例え強引にショウのことを有耶無耶にしたとしても、最後は自分の言うことを信じ、支持してくれるだろうと考えていた。

しかし、結果は全くの反対であった。
ショウのことを尊重し、ラルスのことを軽んじた。
プライドが高いラルスからすればこれは理解できないし、許せるはずもない。

確かに行き過ぎたことをしたという自覚はある。
体裁が悪いといえば悪いことをしてしまった。

・・・もしや祖父は自分にあてつけのために、あえてああ言ったのかもしれない。自分の反省を促すために。

ラルスはダリスの言った言葉を理解して反省するどころか、自分の都合の良いほうに考えていた。



「ラルス・・・」


低く消え入りそうな小さな声で、ラルスはハッと気がついた。
いつの間にやらバレスが部屋が退室していたのだ。


「父上、お話は終わりましたか」


ラルスは待ち焦がれた父の帰りに、思わず笑顔になって駆け寄る。
しかし、バレスの顔は青白く、生気の無いまるで幽霊のような姿であった。
バレスが出て後、部屋の扉は閉じられた。どうやら今日はもうダリスは顔を見せるつもりはないようだとラルスが気付いて「まだ話は終わっていないのに」と舌打ちをする。


「ラルス、まずは城に戻ろう。話はそれからだ」


すぐにでも話をしたいラルスは出鼻をくじかれたが、何を問うたところで答えが返ってくる雰囲気ではなかったので、ラルスは黙ってバレスと帰路についた。

そして帰りの馬車の中でのことである。


「ラルス。これからお前には、いろいろと苦難が待ち受けることになるだろう」


「・・・え?」


沈黙の続いていた馬車の中で、突然バレスが語りだした。


「ルーベルト嬢との婚約はおろか、王位の継承すら危うくなるかもしれん。私も全力を尽くすが、お前も覚悟を決めて生き残りをかけた戦いに出るつもりでいろ」


「それは・・・どういう」


言葉の意味をすぐには理解できないラルスは思わず聞き返す。


「このままボケっと突っ立っているままでは、潰されてしまうということだ。臣籍降下すら叶わないことだってあり得る。私も、お前もな」


うつろな目をしてそう語るバレスは、口では発破をかけつつも実際には半ば諦めているようにも見えた。
ラルスはこのあと、このランドールにおいて本当に力を持った者が父バレスではなく祖父ダリスであるということを、ようやく本当の意味で理解することになった。
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