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ラルス <<<【越えられない壁】<<< ショウ

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このランドールでは王族といえど、原則として罪人に対して直接刑罰を下すことは出来ない。
相手が誰であれ、罪状がなんであれ、裁判によって刑罰が確定して執行される。
故に当然であるが、ショウが裁判すらなく国外追放をされたのは完全なるラルス達による権力の濫用であった。
誰もそれを直接咎める者がいなかっただけのことなのである。

本来そういった王族の暴走を防ぐためにダリスの代でルールであったが、皮肉なことに彼の息子と孫がそれを破ってしまった。ダリスの失望と怒りは、実に実に、それはもう到底計り知れないほどに深いものであった。


「その、王族を殺傷したとならば、通常なら死罪です。しかし、私はショウ・ルーデルにそれを執行することは国の混乱を招くことになると思い、自分の裁量で・・・」


ラルスはダリスから目を逸らしながら、たどたどしく言い訳を並べた。
かろうじてだが、この期に及んでもなおもまだ口が動くのか。バレスは呆れを通り越してむしろ感動すら覚えそうになった。


「ほぉ、混乱を招くとして、それで自分の裁量で裁いたと申すか」


「・・・はい。勝手な真似をして申し訳なかったと思います。王族としての自覚が足りませんでした。しかし、あのときはそれがベストであると考えてしまっていたのです」


あくまで自分の思うベストを尽くした結果だ。ラルスはそう言い包める方向にしようとしたが


「それならば、そもそもお前がショウを許せばそれで済んだ話だ。ルーベルト嬢への暴行についてはまた別の裁きとなるが、少なくともそれが国の混乱にはならんだろう」


「・・・え?」


ダリスには全く通じる様子はなかった。それどころか、思ってもない事を言われることになる。


「あるんだかないんだかわからないような傷なんぞのために、国防の要として重宝するべき辺境伯家と事を荒立てる必要なぞないのだ。ショウがお前に傷を負わせたとしても、お前が度量でもって許せばそれで済んだ話なのだ」


「・・・なっ、そんなことを許せば王族の威信が!」


ラルスは思わず噛みついた。
そんなことを許せば王族は辺境伯家以下であるとされ、永遠に舐められ続けるではないか。


「まだ国王ですらないお前の傷なんぞより、ルーデル家のほうが遥かに大事なのだ」


「なっ・・・!?」


ダリスの言葉は、露骨に今の自分はルーデル辺境伯家よりランドールにおいて重要ではないということを示していた。
それが他でもない自分の祖父・・・ランドールの実質的な最高権力者から言われたことで、ラルスはショックで茫然としてしまっていた。


「ルーデルが崩れればこの国の国防は終わる。いや、既に終わりが始まっておるかもしれん。ルーデルは・・・ショウはそれだけ重要だったのだ。ラルスの代わりはいるが、ショウにはそれがない。そういうことだ」


淡々と告げるダリスの言葉は、ラルスの心を激しく抉った。
市井だけでなく祖父ですら、自分よりもショウに重きを置いていることに大きな衝撃を受けていた。
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