国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ

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運命の質問

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いつもはメディアの取材となると緊張してカチコチに固まるソーアが、今は不自然なほどにリラックスしている。
そして僅か・・・ごく僅かだが鼻をついたアルコールの匂い。
エーペレスはソーアが酒を飲んでいることに気が付いた。

(なんてこと・・・)


エーペレスは戦慄した。
きっとソーアからすれば軽い気付けのつもりで飲んだのだろう。
だが、隊員達と同じようにエーペレスもまたソーアが酒に弱すぎることを知っていた。だから、ソーアがなら酔った勢いで何か失言を起こさないかどうかが心配だった。


エーペレスの不安は余所に取材は進む。


「・・・とすると、上層部の処罰も批判も、海賊の報復も何もかも、今のソーアさんにとって恐ろしいものは何もないと?」



「恐ろしくないと言ったらウソになるな。だが、私がやらないと・・・という使命感がある。だから、これからも戦いを続けるつもりだ。引くつもりは絶対にない」


「なるほど、ありがとうございました」


昨日沈めたドフォーレの密輸船のことを主に取り上げ、後はいつもと概ね変わらない内容の取材であった。
失言のしようもない内容であったこともあったが、特にソーアが失敗しなかったことにエーペレスは安堵する。

これで取材も終わりか、そう思ってエーペレスは油断した。


「失礼します」


応接室の戸をノックして戦女神の隊員が入ってきた。


「あの、ダイク建設の方がお見えですが」


昨日、詰め所の拡張をしなければという話になり、早速呼ぼうとソーアが即断した件である。本当に決断をした翌日に業者を呼んできたその行動力に、エーペレスは感嘆の声を洩らす。


「あぁ、もう来てしまったか」


慌てるソーアに、エーペレスは彼女を手で制した。


「いいわ。私が話をするから」


そう言ってエーペレスが増築に打ち合わせに部屋を出て行った。
もう取材は終わりだから一人にしても問題はないだろうし、ソーア率いる戦女神の詰所となれば見栄えもそれなりのものにしたいので、打ち合わせには積極的に参加したいと思っていた。むしろソーアを挟まず自分一人でデザインからプロデュースしたいと考えている。意見を挟ませるとエーペレスにとってどっちつかずの微妙なものになりかねないからだ。


だからここぞとばかりにエーペレスはソーアと別れ、一人で建設業者と打ち合わせに入った。

・・・・それが仇となった。









「それじゃあこれで質問は終わりに・・・あ、そうだ一つだけ、読者からの投稿で質問が一つありまして」


「なんでしょう。わかることでしたらお答えしますよ」


「いやぁ、まぁ、内容が内容だけに返答いただけなくても仕方がないのですがね・・・」


「どうぞ」


「では。ソーアさんには今、婚約を考えているなど、気になる方がいるだの、そういった特別な男性の方はいますか?」
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