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読書は苦手な赤い花

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「ソーア。新しい本よ」


翌日、まだ目を覚まさずベットで惰眠を貪るソーアの部屋にやってきたのは、流行りの小説を何冊か束にして持ってきたエーペレスだった。
既に何冊もテーブルの上に山積みにやっているが、その上に重ねて置いた。震動で何冊かがテーブルから落ちる。


「ショウとはこういうところも違うのね」


エーペレスが持ってきたのはショウのときと同じく流行りの小説。
貴族でも一般人でも家庭の財布を握っているのが婦人だという例は決して少なくない。だから彼女らと交流を深めることが寄付金をより多く早く得るための近道であるゆえに、話題作りのために婦人の流行り物は知識にきちんと蓄えておけと、エーペレスはショウのときのようにソーアに厳命していた。

ショウは当初こそ嫌々だったが、元々読書が好きなのか意外とすんなり受け入れた。そして補充が追い付かないほどには読破のスピードは速かった。

しかし、ソーアは読書が苦手なようで、中々読むスピードは上がらない。
昨晩も睡魔の限界まで読ませたが、それでも部屋に読まれない本が溜まっている一方であった。
ソーアは元々の人気が圧倒的に高いので、ショウほど頑張らせる必要はないが、それでももう一歩、いや二歩は頑張ってほしい・・・そんなことをエーペレスは考えていた。


「そんなわけで今日は缶詰よ。遅れを取り戻して頂戴。取材の時間のときだけは部屋から出してあげるわ」


「・・・ふぇ?」


いまだ眠気眼のソーア。
本日はソーアは非番の日であるが、ここ最近彼女が非番のときは割と遅くまでグダグダ寝ていることが多かった。
前日に限界までエーペレスによって読書を強要されるからである。


「うぅ・・・本を読むのは苦手だ」


と、言いつつも適当に本を手に取るソーア。ソーアの売り出しをお願いしたのは自分だし、エーペレスが必要だというのならやるべきなのだと理解は出来ていた。やる気に対して中々成果が伴わないだけで。


「あ、これは・・・」


眠そうにしていたソーアの目が大きく開かれた。
それはソーアが続編を心待ちにしていた小説『ベーサイユの薔薇族』だったからだ。
ダルそうにしていた状態から豹変し、ソーアは食い入るように読書を開始した。


「・・・な、なんだと?あの状態から攻めに転ずるのか。・・・フフッ、やるではないか・・・」


本を読みながらブツブツと声を洩らすソーア。
その様子を見てエーペレスは、読書の苦手なソーアのために、今度は流行り物の中でも好きそうなジャンルに絞って本を読ませようかしらと考えた。しかし、かといって男の同性愛ものばかりを嗜ませるのはどうなんだと思い悩んでしまう。

こうなったらアプローチを変えてみようか、歌って踊らせてみるとか。ショウはそれをやるなら死ぬと断固として断った。読書を免除する代わりにと言えばソーアは言うことを聞くだろうか。
エーペレスはニヤニヤしながら、今後のソーアの売り出し方針について勝手なことを考えて楽しんでいた。
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