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気まずい会話
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「随分と久しぶりだな、シーラと食事をするのも」
「・・・そうですね」
シオンとシーラは屋敷の食堂にて二人で食事をしていた。
夫婦であるが、数年前からこの二人が一緒に食事をすることは滅多にない。
客人が来た時など、世間体に関わる場合のみ、二人は食事を共にする。提案してきたシオンに何かしらの意図があるにせよ、世間体関係なく二人でこうして食事をするのは随分と久しぶりであった。
「ソーアのことで頭を悩ませているようだな」
唐突に、シオンがソーアのことを口にした。
シーラは僅かに反応を示すが、それでも先ほどのように過剰な反応はしない。
いくらか落ち着いたためなのか、それともシオンの前で心乱すまいと律しているのか・・・いずれにせよ本来あるべきシーラのように無表情に近い顔であった。
「反抗期かしら。少し手を焼いています」
努めて冷静にシーラがそう言って、フォークで刺したエビを口に運んだ。
「俺も突然どうしたのかと驚いたがな。だがまぁ、話を聞くと反抗期どころの話ではなかった」
シオンはソーアと直接話をして事情を理解しているのだろう。自分には話さなかったのに、と少しだけ気に障ったところもあったが、シーラは気になったのでシオンに問う。
「どういうことですか?」
シーラがそう問うと、シオンは苦笑いのような表情を浮かべて少し間をおいて語り出した。
「男だ」
「・・・え?」
「男が出来たようだ」
シーラはポカンと口を開けた。鉄面皮とされるシーラが珍しい表情をするのを見て、シオンは思わず吹き出す。
それに気付いてシーラは気まずそうにナプキンを手にとり、口元を隠すようにした。
「まさかあの娘が恋をするなんてな。あれはただの一度も見合い話に耳を傾けてこなかったが、どうやらその男を想うが故だったようだ」
シオンが笑いながら言った。
シーアから見てもソーアはマルセイユの中で誰よりも色恋に程遠いイメージがあった。
「それは確かに驚きましたけど、それがどうして私に反抗してくる話になるんです?」
その男がマルセイユを潰せと命令したとでも言うのだろうか。
「その男というのが、数か月前王城で問題を起こして、国外追放になったルーデル辺境伯家の元嫡男のショウ・ルーデルなんだ。あ、今はルーデルではないか」
「なんですって!?」
シーラは思わず声を荒げた。
シオンの前で感情を露わにしてしまったが、今度は気にしなかった。
「彼はキアラ・ルーベルト嬢の婚約者だったでしょう?なのに・・・」
「だからこそ、想いを隠していたようだ。だが、問題によって婚約破棄となればもはや関係ないからな」
「え、えぇ、ですけど問題が起きてから追放までは間が無かったはずでしょう?」
「・・・その、僅かな間に想いを伝え、結ばれたらしい・・・」
シーラはまたも口を半開きにして呆けてしまう。
なんと手の早い子・・・と、奥手で恋とは無縁と思っていた娘の動向に驚くを通り越して呆れてしまう。
「話を聞く上で必要な過程であったが、そんなことを実の娘から聞かされた俺はどんな顔をしていいかわからなかったよ」
シオンは両手で顔を覆って俯いた。
「・・・そうですね」
シオンとシーラは屋敷の食堂にて二人で食事をしていた。
夫婦であるが、数年前からこの二人が一緒に食事をすることは滅多にない。
客人が来た時など、世間体に関わる場合のみ、二人は食事を共にする。提案してきたシオンに何かしらの意図があるにせよ、世間体関係なく二人でこうして食事をするのは随分と久しぶりであった。
「ソーアのことで頭を悩ませているようだな」
唐突に、シオンがソーアのことを口にした。
シーラは僅かに反応を示すが、それでも先ほどのように過剰な反応はしない。
いくらか落ち着いたためなのか、それともシオンの前で心乱すまいと律しているのか・・・いずれにせよ本来あるべきシーラのように無表情に近い顔であった。
「反抗期かしら。少し手を焼いています」
努めて冷静にシーラがそう言って、フォークで刺したエビを口に運んだ。
「俺も突然どうしたのかと驚いたがな。だがまぁ、話を聞くと反抗期どころの話ではなかった」
シオンはソーアと直接話をして事情を理解しているのだろう。自分には話さなかったのに、と少しだけ気に障ったところもあったが、シーラは気になったのでシオンに問う。
「どういうことですか?」
シーラがそう問うと、シオンは苦笑いのような表情を浮かべて少し間をおいて語り出した。
「男だ」
「・・・え?」
「男が出来たようだ」
シーラはポカンと口を開けた。鉄面皮とされるシーラが珍しい表情をするのを見て、シオンは思わず吹き出す。
それに気付いてシーラは気まずそうにナプキンを手にとり、口元を隠すようにした。
「まさかあの娘が恋をするなんてな。あれはただの一度も見合い話に耳を傾けてこなかったが、どうやらその男を想うが故だったようだ」
シオンが笑いながら言った。
シーアから見てもソーアはマルセイユの中で誰よりも色恋に程遠いイメージがあった。
「それは確かに驚きましたけど、それがどうして私に反抗してくる話になるんです?」
その男がマルセイユを潰せと命令したとでも言うのだろうか。
「その男というのが、数か月前王城で問題を起こして、国外追放になったルーデル辺境伯家の元嫡男のショウ・ルーデルなんだ。あ、今はルーデルではないか」
「なんですって!?」
シーラは思わず声を荒げた。
シオンの前で感情を露わにしてしまったが、今度は気にしなかった。
「彼はキアラ・ルーベルト嬢の婚約者だったでしょう?なのに・・・」
「だからこそ、想いを隠していたようだ。だが、問題によって婚約破棄となればもはや関係ないからな」
「え、えぇ、ですけど問題が起きてから追放までは間が無かったはずでしょう?」
「・・・その、僅かな間に想いを伝え、結ばれたらしい・・・」
シーラはまたも口を半開きにして呆けてしまう。
なんと手の早い子・・・と、奥手で恋とは無縁と思っていた娘の動向に驚くを通り越して呆れてしまう。
「話を聞く上で必要な過程であったが、そんなことを実の娘から聞かされた俺はどんな顔をしていいかわからなかったよ」
シオンは両手で顔を覆って俯いた。
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