国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ

文字の大きさ
上 下
138 / 471

気まずい会話

しおりを挟む
「随分と久しぶりだな、シーラと食事をするのも」


「・・・そうですね」


シオンとシーラは屋敷の食堂にて二人で食事をしていた。
夫婦であるが、数年前からこの二人が一緒に食事をすることは滅多にない。
客人が来た時など、世間体に関わる場合のみ、二人は食事を共にする。提案してきたシオンに何かしらの意図があるにせよ、世間体関係なく二人でこうして食事をするのは随分と久しぶりであった。


「ソーアのことで頭を悩ませているようだな」


唐突に、シオンがソーアのことを口にした。
シーラは僅かに反応を示すが、それでも先ほどのように過剰な反応はしない。
いくらか落ち着いたためなのか、それともシオンの前で心乱すまいと律しているのか・・・いずれにせよ本来あるべきシーラのように無表情に近い顔であった。


「反抗期かしら。少し手を焼いています」


努めて冷静にシーラがそう言って、フォークで刺したエビを口に運んだ。


「俺も突然どうしたのかと驚いたがな。だがまぁ、話を聞くと反抗期どころの話ではなかった」


シオンはソーアと直接話をして事情を理解しているのだろう。自分には話さなかったのに、と少しだけ気に障ったところもあったが、シーラは気になったのでシオンに問う。


「どういうことですか?」


シーラがそう問うと、シオンは苦笑いのような表情を浮かべて少し間をおいて語り出した。


「男だ」


「・・・え?」


「男が出来たようだ」


シーラはポカンと口を開けた。鉄面皮とされるシーラが珍しい表情をするのを見て、シオンは思わず吹き出す。
それに気付いてシーラは気まずそうにナプキンを手にとり、口元を隠すようにした。


「まさかあの娘が恋をするなんてな。あれはただの一度も見合い話に耳を傾けてこなかったが、どうやらその男を想うが故だったようだ」


シオンが笑いながら言った。
シーアから見てもソーアはマルセイユの中で誰よりも色恋に程遠いイメージがあった。


「それは確かに驚きましたけど、それがどうして私に反抗してくる話になるんです?」


その男がマルセイユを潰せと命令したとでも言うのだろうか。


「その男というのが、数か月前王城で問題を起こして、国外追放になったルーデル辺境伯家の元嫡男のショウ・ルーデルなんだ。あ、今はルーデルではないか」


「なんですって!?」


シーラは思わず声を荒げた。
シオンの前で感情を露わにしてしまったが、今度は気にしなかった。


「彼はキアラ・ルーベルト嬢の婚約者だったでしょう?なのに・・・」


「だからこそ、想いを隠していたようだ。だが、問題によって婚約破棄となればもはや関係ないからな」


「え、えぇ、ですけど問題が起きてから追放までは間が無かったはずでしょう?」


「・・・その、僅かな間に想いを伝え、結ばれたらしい・・・」


シーラはまたも口を半開きにして呆けてしまう。

なんと手の早い子・・・と、奥手で恋とは無縁と思っていた娘の動向に驚くを通り越して呆れてしまう。


「話を聞く上で必要な過程であったが、そんなことを実の娘から聞かされた俺はどんな顔をしていいかわからなかったよ」


シオンは両手で顔を覆って俯いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

処理中です...