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譲歩

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ソーアが独走によってもたらしたマルセイユのの損害はこの数か月だけで大変なものとなっている。

此度のドフォーレ商会の商船撃沈に置いても、ドフォーレ商会は毎月一定の額をマルセイユに納めることによって、船荷の検査などは免除される密約を結んでいた。だからドフォーレは密輸で財を築けていたのだが、ここ数か月は密約を破ってソーアが密輸を悉く妨害していた。
それに対し密約がある以上、マルセイユもある程度は賠償金を払って宥めていたのだが、本日ドフォーレの大型商船を撃沈したことにより、マルセイユでも簡単には賠償できないほどの損害が発生した。

ドフォーレは実に良いパトロンだったが、それを一日にして失ってしまった。金額面だけでなく、どうにかドフォーレが自棄を起こす前に処理をしなければならない、人的負担も大変なものがあった。

そして、これと似たようなことはここ数か月幾度も起きていた。もちろん、全てソーアの独走によるものである。
治安を守る海軍としては正しい行いだが、汚職に塗れた上層部には目の上のたん瘤以外の何物でもない。
金額的な損失だけでもこの数か月で既に計り知れないだけの数字になっていた。これまで長年に渡り不正で築いてきた富が溶けてしまうのも、もはや時間の問題だった。
だから、本当ならただちにソーアの動きを止めなければならない。
しかし・・・


「私のすることが気に入らなければ、謹慎させますか?」


「・・・ソーア」


シーラは奥歯をギリッとかみしめた。
ソーアが暴れるなら彼女を何かしら理由をつけて謹慎すれば良い・・・
最初はそのように対処した。

しかし、大義無き謹慎が市井に漏れると、今度は領民が怒り狂い猛反発が起きた。苦情は昼夜を問わずひっきりなしにマルセイユ邸や騎士団に届くようになり、説明を求める領民が施設を取り囲んであわや暴動に発展しそうなところまで行くところとなった。

即刻、ソーアは謹慎を解除されどうにか事なきを得たが、以来、ソーアに対し行動を制限させる手段が無くなってしまい、今にいたる。
配置転換など姑息な手を使ったところで、更なる反発を招くことになるだろう。
ここ最近急激なソーアの市井に対する人気上昇のお陰で、すっかりシーラですら正面からソーアを押さえつけることが出来なくなったのだ。

だから

シーラは大きく深呼吸をすると、違うアプローチをかけてみることにした。


「・・・あなたは一体何が望みなの?言ってごらんなさい、大概のものは叶えてみせるわ」

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