国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ

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バトルオブマルセイユ

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ソーアが完膚なきまでにリーダー格の男を打ちのめしてしばらくしてから、そうやく今更のように巡回の騎士団がやってきた。


「このウスノロども何やってるんだい!」


「無能どもが!今更来やがったか!」


「もうてめーらにはうちの店で飯くわせねぇからな!」



騎士達はボコボコにされた男たちを拘束するが、住民からはボロクソの扱いであった。
今やソーア以外の騎士団の評判は地の底だからである。
こうして遅れて出てきたのも、実際にドフォーレの元従業員と癒着があり、彼らの目的を果たすまでは時間を潰して到着を遅らせるーー そのように話がついていたからだ。

ソーアの父シオンの統括する隊であればこんなことにはならないが、騎士団全体の汚染度合いは深刻で、こうした汚職に手を付けている騎士はたくさんいた。

そしてこのことが、ここ数か月領内様々なところでリークされており、すっかりマルセイユ騎士団は信頼を失っていた。
唯一の良心はシオンとソーア、この二人・・・これが今のマルセイユ領民の共通認識であった。


「ご苦労」


ソーアは遅れて駆け付けた騎士にそれだけ言うと、何事も無かったかのようにマルセイユ邸へ再び歩き出した。
後に残された騎士達は、ソーアがいなくなってからいたるところからゴミを投げつけられ、散々な扱いを受けることになった。


「少し遅くなってしまったかな」


時計を見てソーアは呟くが、「仕方ないなぁ」程度のニュアンスでしかない。
以前なら母シーラからの呼び出しでの呼び出しに遅れそうなものなら、まさかにこの世の終わりのような焦りようであったのに、今では遅れた時間になってもすっかり落ち着き払っている。


「ま、この数か月で何度も何度も呼ばれていれば慣れてくるか・・・」


ソーアはフッと笑うと、シーラの部屋の扉をノックした。
その姿には以前のように緊張した様子は全くなかった。


「入りなさい」


「失礼します」


シーラから許しが出ると、ソーアは間髪入れず部屋の扉を開いて入室する。


「・・・・・・」


ブスッとした表情のシーラと対面する。
以前は無表情で威圧オーラを放ち、ソーアはそれに気圧されていたものだが、今やそうではない。見るからにシーラは不機嫌だった。
対してソーアはうっすら笑みさえ浮かべている。いまこの二人の親子は実に対照的であった。


「母上、遅れて申し訳ありません」


まずはソーアが遅れてきたことを詫びた。


「・・・珍しいこともあるのね」


「はい、申し訳ありません。本日密輸船を沈めたドフォーレ商会の従業員という連中が、逆恨みで道中襲ってきたのです」


ソーアの言葉に「ピクッ」と、シーラの頬が動いた。


「ですが既に町の住人の強力もあり、彼らを鎮圧しました。もう問題ありません」


ニッコリと笑ってそう言ったソーア。
シーラの頬が「ピクッ ピクピクッ」としきりに痙攣する。
シーラからは怒りのオーラがほとばしり、ソーアはそれを全く意に介していないように構えていた。

親子喧嘩の始まりであった。
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