国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ

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いちいちショウと比較する

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「なんと見境の無い・・・」


やや人通りは少ないとはいえ街中で得物をちらつかせる連中に、ソーアは呆れて溜め息をついた。


「好待遇の働き口を失った。お前らに目を付けられたドフォーレの元従業員じゃ再就職だってできるかどうか。失う物が無くなった人間が、どういう手段にでるかわからせてやるよ」


リーガー格の男の言葉を聞いて、ソーアはまたも大きく溜め息をつく。


「なんだ?自分の生活を奪われたから捨て鉢になって私を殺して溜飲を下げるのか?そんなことしかできないのか?」


心底見下してそう言い放つソーアに、リーダー格の男を含むその場にいた全員が唖然とした。
集団に得物を向けられているのに全く動じている様子がないからだ。恐れるどころか馬鹿にしてさえいる。完全に見下されているというのが彼らにも良くわかった。


「ショウの半分・・・いや、四分の一でも気概があれば、またやり直すこともできるだろうに。情けない男どもだ」


プツンと、男たちの堪忍袋の緒が切れた。
自分達の生活を奪った元凶の女が、これ以上見下してくるのを許すことができなかった。


「ぶっ殺せーーっ!!」


リーダー格の男の合図とともに、男たちが一斉に飛び掛かろうとしたその時だった。


「ぐぇっ」


「がふっ」


「ぎゃっ」



ソーアを取り囲んでいた男たちが、一人また一人と声を上げて倒れていったのである。


「な、なんだ!?」


リーダー格の男がそれに気づいて見回してみると、なんといつの間にやら集まっていた一般人達が、フライパン、鉄棒、斧、それぞれに武器を持って取り囲んでいた男たちを背後から襲撃していたのである。
不意を突かれたのと数が多いのとで、数十人いたソーアへの報復隊はほぼ半殺しにされていた。


「私達の目の前でソーアちゃんに手出しなんてさせないよ!」


フライパンで一人の頭をかち割ったおばさんが言った。


「俺達の目の前でこんなことしてくれたからにはよぉ、再就職どころかこのラウバルにいさせられなくしてやるぜ」


漁師風のおじさんが太い腕で男の首を絞めながら続く。


「なっ、なっ・・・!」


ついに残り一人となったリーダー格の男は、どこか逃げ場はないかとキョロキョロ周囲を見回していたが、やがて諦めたのかまっすぐソーアを見据えた。


「やれやれ、こうなりゃせめて・・・目的だけでも果たさせてもらわなきゃな!」


自棄を起こした男は、サーベルを鞘から抜いて素早くソーアに斬りかかる。
ドフォーレ商会でも荒事を担当することの多かった彼は、剣の使いにそれなりの自信を持っていた。
だが


「なぁっ!?」


ソーアが持つ短剣によって太刀筋は簡単に逸らされてしまい、リーダー格の男は勢い余ってつんのめってしまう。


「ふんっ!」


ゴスッ


隙だらけのその顔面に、ソーアが短剣を持っていない反対の手での鉄拳を叩き込む。
細身の体からは想像もできないほどバネの利いた重いパンチだった。


「ショウの太刀の半分・・・いや、十分の一の速さでもあれば、あるいはかすりくらいはしてのかもしれないがな!」


ガスッ


ドゴッ


最初の一撃で意識の途切れかけていたリーダー格の男は、そんなことお構いなしというようにそのまま何度もソーアの打撃に晒され続けた。


「どうした?ショウの百分の一でもお前に根性があるなら、これくらい耐えられるはずだぞ」


バキッ

ゴンッ


「も、もうゆるひて・・・」


男のギブアップをソーアは無視をする。


「ショウはお前たちの千倍は理不尽で悔しい思いをしながら、全てを失ったのだ!お前たちのようなやつが気軽に失うものが無くなったなどとほざくな!」


ソーアの八つ当たりに男の悲鳴が木霊した。


「いいぞいいぞ!」


「やれーやっちまえ!」


助けに入っていた周囲の一般人の声に乗せられてしまい、ソーアは完全にやり過ぎてしまってから手を止めたのだった。
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