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無茶をする赤い花
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「ふんっ!」
ミルツは船首から跳躍すると、会長の息子たちの乗っている救命艇にドスンと着地した。
反動で何人かが海に落ちたが気に留めた様子はない。
「随分と勝手な・・・いえ、ご活躍されたみたいですなぁ」
ミルツはピクピクと顔を引きつかせ、それでも無理矢理つくったような笑顔を向けてそう言った。
筋骨隆々で長身のスキンヘッド・・・見るからにいかつい男であり、ソーアは一瞬だけ気圧されそうになる。
しかしソーアは気を持ち直し、自らの上官にも当たるミルツに敬礼をした。
「ミルツ閣下。恐縮であります」
ソーアの言葉にまたもミルツはピクリと反応する。
「いやいや流石ご領主様のご息女だ。将来有望と言えるほどの活躍ぶり。騎士団全員の見本とするべきお姿ですな」
「・・・・・・」
「ですが」
ここで突如としてミルツは声のトーンを変えた。ニコニコ笑っていた顔も無表情なものに変わっている。
「失礼ながら『戦女神』は我ら本隊に連絡があった場所とは、随分違う海域におられたようですねぇ。これはどういうことですかな?」
ソーアの戦女神は、本日本隊に違う場所にて哨戒を行うと事前連絡をしていた。
しかし今いるこの海域は、連絡にあった場所はまるで違うところである。
これはソーアが本隊を欺くためにわざとやったことであった。
海賊や密輸業者と裏契約している本隊に対しわざと偽の情報を与え、その情報を信じ安全であると思ったドフォーレ商会は、そこにいないはずのまさかの戦女神と鉢合わせすることになり、散ることになった。
最近過激な戦女神以外の隊との遭遇ならばこんなことにならなかっただけに、ドフォーレ商会や本隊からしても悔やんでも悔やみきれない事態である。
何しろ戦女神・・・ソーアに騙されてコケにされただけでなく損害を受けたのだ。
ミルツもかろうじて抑えてはいるが、きっかけ一つで爆発しそうなほどには怒りを感じていた。
「そうですか?それは連絡ミスかもしれませんね」
すっとぼけた表情でソーアが言った。
「以後、気を付けます」
しれっとそう言って締めたソーアに対し、ミルツは怒りに体を奮わせながら拳を握りしめる。
「そのような言い訳が、通用、するとでも?」
怒りを抑えるために必死なのか、ミルツの声は途切れ途切れだった。
「フッ、では私を謹慎なさいますか?」
「!!」
小ばかにしたように笑いながら言うソーアに、ミルツは反射的に拳を振りそうになる。
・・・が、ギリギリのところでそれを堪えた。
堪えたが、顔はなおも怒りが歪んでいた。
「ご領主様から、お呼び出しが、近々あるでしょうな・・・」
素て台詞のようにそう言って、ミルツは救命艇の隅で震える会長の息子の首根っこを掴んで持ち上げる。
「彼は重要参考人ゆえ、こちらで連行します。では」
そう言ってミルツは再び高く跳躍し、元いた船の船首へと戻った。
姿が見えなくなってから「あのバカ娘めぇぇぇぇ」と叫ぶ声が聞こえてきてソーアは思わず苦笑いをする。
「ふん、逃がしたか・・・」
会長の息子は、なんだかんだで極秘裏に釈放されるに違いない。
今回は大捕り物となったが、最後の最後で邪魔が入ったなとソーアは溜め息をついた。
だが、海賊と繋がりがあり、密輸を行っていたドフォーレ商会は終わりだろう。
これは大きな前進だ。しかし今度はどうなるか・・・本隊はもう騙されてはくれないだろうから、また地道に本隊に悟られないように哨戒をして海賊などを見つけなければならないか・・・・
そんな感じに今後の作戦について考えていたソーアだったが、やがてミルツが言ったように領主・・・母シーラからの飛び出しを翌日に受けることになった。
それはここ数か月何度目かの、スケールの大きい親子喧嘩であった。
ミルツは船首から跳躍すると、会長の息子たちの乗っている救命艇にドスンと着地した。
反動で何人かが海に落ちたが気に留めた様子はない。
「随分と勝手な・・・いえ、ご活躍されたみたいですなぁ」
ミルツはピクピクと顔を引きつかせ、それでも無理矢理つくったような笑顔を向けてそう言った。
筋骨隆々で長身のスキンヘッド・・・見るからにいかつい男であり、ソーアは一瞬だけ気圧されそうになる。
しかしソーアは気を持ち直し、自らの上官にも当たるミルツに敬礼をした。
「ミルツ閣下。恐縮であります」
ソーアの言葉にまたもミルツはピクリと反応する。
「いやいや流石ご領主様のご息女だ。将来有望と言えるほどの活躍ぶり。騎士団全員の見本とするべきお姿ですな」
「・・・・・・」
「ですが」
ここで突如としてミルツは声のトーンを変えた。ニコニコ笑っていた顔も無表情なものに変わっている。
「失礼ながら『戦女神』は我ら本隊に連絡があった場所とは、随分違う海域におられたようですねぇ。これはどういうことですかな?」
ソーアの戦女神は、本日本隊に違う場所にて哨戒を行うと事前連絡をしていた。
しかし今いるこの海域は、連絡にあった場所はまるで違うところである。
これはソーアが本隊を欺くためにわざとやったことであった。
海賊や密輸業者と裏契約している本隊に対しわざと偽の情報を与え、その情報を信じ安全であると思ったドフォーレ商会は、そこにいないはずのまさかの戦女神と鉢合わせすることになり、散ることになった。
最近過激な戦女神以外の隊との遭遇ならばこんなことにならなかっただけに、ドフォーレ商会や本隊からしても悔やんでも悔やみきれない事態である。
何しろ戦女神・・・ソーアに騙されてコケにされただけでなく損害を受けたのだ。
ミルツもかろうじて抑えてはいるが、きっかけ一つで爆発しそうなほどには怒りを感じていた。
「そうですか?それは連絡ミスかもしれませんね」
すっとぼけた表情でソーアが言った。
「以後、気を付けます」
しれっとそう言って締めたソーアに対し、ミルツは怒りに体を奮わせながら拳を握りしめる。
「そのような言い訳が、通用、するとでも?」
怒りを抑えるために必死なのか、ミルツの声は途切れ途切れだった。
「フッ、では私を謹慎なさいますか?」
「!!」
小ばかにしたように笑いながら言うソーアに、ミルツは反射的に拳を振りそうになる。
・・・が、ギリギリのところでそれを堪えた。
堪えたが、顔はなおも怒りが歪んでいた。
「ご領主様から、お呼び出しが、近々あるでしょうな・・・」
素て台詞のようにそう言って、ミルツは救命艇の隅で震える会長の息子の首根っこを掴んで持ち上げる。
「彼は重要参考人ゆえ、こちらで連行します。では」
そう言ってミルツは再び高く跳躍し、元いた船の船首へと戻った。
姿が見えなくなってから「あのバカ娘めぇぇぇぇ」と叫ぶ声が聞こえてきてソーアは思わず苦笑いをする。
「ふん、逃がしたか・・・」
会長の息子は、なんだかんだで極秘裏に釈放されるに違いない。
今回は大捕り物となったが、最後の最後で邪魔が入ったなとソーアは溜め息をついた。
だが、海賊と繋がりがあり、密輸を行っていたドフォーレ商会は終わりだろう。
これは大きな前進だ。しかし今度はどうなるか・・・本隊はもう騙されてはくれないだろうから、また地道に本隊に悟られないように哨戒をして海賊などを見つけなければならないか・・・・
そんな感じに今後の作戦について考えていたソーアだったが、やがてミルツが言ったように領主・・・母シーラからの飛び出しを翌日に受けることになった。
それはここ数か月何度目かの、スケールの大きい親子喧嘩であった。
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