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面倒な奴がくる

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「隊長!詰み荷の中に麻薬が見つかったようです」


戦闘に参加したのとは別の戦女神の隊員が合流すると、炎上する商船から零れ落ちて海面に浮かぶ無数の船荷をチェックしていった。
そして今まさに探していた犯罪の証拠を見つけたのである。


「こちらにもあります。麻薬です」


「こちらにも!かなりの量になりますね・・・」


既にバンカーバスターで吹き飛ばしてしまったものや炎上してしまった荷もあるが、それらもそうだったのかもしれない。


「炎上している船にはまだ近づくなよ!もし麻薬が燃えているとしたら、万が一吸ってしまうと大変なことになるからな」


「うわああああああああああ!!」


隊員に船に近づくなと注意を促していると、突如救命艇に乗っていた一人の男が悲鳴を上げた。
どうやら先ほどまで気絶していて、今目を覚まして目の前の光景に衝撃を受けているようだった。


「な、なんでだどうしてだ!何故船が燃えている!なぜ私はここにいる!?」


錯乱する男に、近くにいた男が半ば取り押さえるようになだめながらも状況を説明した。
どうやらバンカーバスターを受けた際に気絶してしまっていたようだった。



「ば、馬鹿なぁぁぁ!?密輸の妨害の損失を埋めるために、かなりの商品を詰め込んでいたんだぞ!!この船は協定で絶対に無事だったんじゃなかったのか!?」


「残念だったな。文句なら馬鹿な決断を下した船長に言うといい。最も、その船長にまた会えるかはわからないがな」


船長は情報収集のためにアーヴィガに引き渡す。
船長は情報を絞り取るだけ絞り取ったら、闇から闇へと葬られることになるだろう。


「!!ソーア・マルセイユ・・・!貴様か!!」


「む?」


ソーアは男が自分のことを知っていることに少し驚いた。
はて、もしかして会ったことがある人間だろうかとソーアは男の全身をじっくり眺めていると、ようやく思い出した。マルセイユ家で開かれたパーティーに毎回出席しているドフォーレ商会会長の息子であった。


「貴様のせいでドフォーレ商会は終わりだ・・・これだけの損失、いくらマルセイユとて補償してはくれまい」


「ほう・・・大量の麻薬を失った損失を、いくらかでもマルセイユが補償してくれる話になっているのか?」


「協定が破られて摘発された場合はそういう話になっているのだ!だが今回の損失は巨額も巨額だ。マルセイユも傾くレベルだ。もう駄目だろうさ・・・」


頭に血が上っているのかもはやどうでもいいのか、会長の息子はあっけないほど素直にソーアの質問に答えた。
普通なら麻薬が詰み荷にあるのが発覚した時点で終わりなのだが、その程度どうしてもいいほどの衝撃なのかそうなのか・・・。


しかし、これは想像以上の大物が吊れたかな?いい話が聞けそうだ。


「詳しく話を聞かせてもらおうかな」


そう言ってソーアは会長の息子の手に縄をかけようとした。だがその時



「「そこまでぇぇ!!」」


海上にいるというのに、腹の底まで響いてくるような大声が轟いた。


「この場は我々が引き継ごう!」


そう言う声の主は、こちらに迫るドフォーレの商船ほどではないが大きな船・・・マルセイユの所有する戦艦『アレゾナ』の船首に立っていた。
マルセイユ騎士団の海軍の大将を務めるミルツである。


「ちっ・・・」


思わず舌打ちをするソーア。
面倒なやつが来た。
ソーアとミルツはしばし睨みあうのであった。
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