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正面衝突
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障壁貫通型爆裂矢はソーアの持つ一撃必殺の矢だ。
魔石ではなく、より複雑な術式を組み込んで発動できる魔術符を巻き付けてあるが、これは最初に矢の貫通力を大幅に上げる魔法が発動し、障壁など貫通後に強力な爆裂魔法が発動するように術式が組まれている符であった。
魔石よりも大幅にコストがかかる上に、使用する機会も無いとして開発した魔科学研究所で埃をかぶっていたこの技術にソーアが目を付けた。
ソーアが今しがた放ったバンカーバスターも小船一隻が買えるほどの値段がするが、ソーアは商船の撃沈のためにこれを躊躇いなく放った。
ちなみに船だけでなく、洞窟に潜む海賊のアジトを交戦することなく一方的に壊滅させるときにも使っていた。
コストはかかるがただド派手なだけなく効率的に済ませようというこのソーアの手法のお陰で、今月だけで二桁の海賊船を拿捕ないし撃沈したのにも関わらず、味方の損失はゼロであった。
「隊長!救命艇が下ろされました」
「よし、では船長の顔でも拝んでくるか」
商船の様子を観察していた隊員の報告を聞いて、ソーアは2人ほど隊員を引き連れて炎上する船へと近づいた。
船は浮かんではいるが、火の回りが早く消火は困難なようであった。図体はでかいが、こうなってしまうとただの海に浮かぶゴミだ。もう再生することすら叶わないだろう。
バンカーバスターが命中した瞬間に甲板にいた者の大半が吹き飛んだのは確認していたが、どうやら他にも多くの死傷者が出ているようだ。
「やぁ、ご機嫌よう。船長はどちらかな?」
急死に一生で救命艇に乗り込んでホッとしていた船員達は、唐突なソーアの登場に腰を抜かした。
「貴様!どういうつもりだ!突然船を攻撃しおって!!」
覚えている船員を余所に、随分と貫禄のある男がソーアに噛みついた。
「お前が船長か。お前の愚かな決断のせいで、お前の大事な船と大事な船員が死ぬことになったぞ。お前こそどういうつもりだ?」
停船命令に従っていればこんなことにはならなかったんだぞと、ソーアは言い聞かせるようにそう語る。
明らかに馬鹿にするような態度であった。
「お前は・・・何も知らんのか!これはドフォーレ商会の船だぞ。この船を攻撃することがどういうことになるか、お前は後で思い知ることになるぞ・・・!お前レベルがどうこういう話ではないのだ!」
(やはり裏取引か。だから堂々と逃げてみせた)
船長の言葉から、やはり裏でマルセイユ騎士団の上層部と繋がっているのだなとソーアは確信する。
「今すぐ俺達を解放しろ!積み荷をすぐに回収するんだ!そうしたら穏便に済ませてやる!早くしろ!今すぐだ!!」
船長はどうやら自分が上位にいると思っているようだ。
しかしソーアはにっこりと笑い
「元気がいいな。お前ならさぞかし良く歌うであろうな!」
「は?」
船長の肩をガシッと掴んだ。
「お前は特別に騎士団には引き渡さないでやろう」
悪魔のような笑みを浮かべたソーアは、この船長をアーヴィガに引き渡してやろうと考えていた。
きっと有益な情報を引き出してくれるだろう。死んだほうがマシだという思いをするだろうが。
「連れていけ」
騎士団に見つからないように、こっそりとアーヴィガの影に引き渡すようにと伝えておいた隊員に船長を連れていかせる。
こうした海賊退治はここ最近派手にやっているが、有益な情報を持っていそうな者はソーアの判断によりアーヴィガに引き渡すようにしていた。騎士団では罪人の取り調べどころか釈放してしまう可能性があるからだ。
ソーア・マルセイユは実家の不正と、このように正面から、実にあまりに派手に堂々と立ち向かっていたのである。まさにまさに大規模な実家との衝突であった。
魔石ではなく、より複雑な術式を組み込んで発動できる魔術符を巻き付けてあるが、これは最初に矢の貫通力を大幅に上げる魔法が発動し、障壁など貫通後に強力な爆裂魔法が発動するように術式が組まれている符であった。
魔石よりも大幅にコストがかかる上に、使用する機会も無いとして開発した魔科学研究所で埃をかぶっていたこの技術にソーアが目を付けた。
ソーアが今しがた放ったバンカーバスターも小船一隻が買えるほどの値段がするが、ソーアは商船の撃沈のためにこれを躊躇いなく放った。
ちなみに船だけでなく、洞窟に潜む海賊のアジトを交戦することなく一方的に壊滅させるときにも使っていた。
コストはかかるがただド派手なだけなく効率的に済ませようというこのソーアの手法のお陰で、今月だけで二桁の海賊船を拿捕ないし撃沈したのにも関わらず、味方の損失はゼロであった。
「隊長!救命艇が下ろされました」
「よし、では船長の顔でも拝んでくるか」
商船の様子を観察していた隊員の報告を聞いて、ソーアは2人ほど隊員を引き連れて炎上する船へと近づいた。
船は浮かんではいるが、火の回りが早く消火は困難なようであった。図体はでかいが、こうなってしまうとただの海に浮かぶゴミだ。もう再生することすら叶わないだろう。
バンカーバスターが命中した瞬間に甲板にいた者の大半が吹き飛んだのは確認していたが、どうやら他にも多くの死傷者が出ているようだ。
「やぁ、ご機嫌よう。船長はどちらかな?」
急死に一生で救命艇に乗り込んでホッとしていた船員達は、唐突なソーアの登場に腰を抜かした。
「貴様!どういうつもりだ!突然船を攻撃しおって!!」
覚えている船員を余所に、随分と貫禄のある男がソーアに噛みついた。
「お前が船長か。お前の愚かな決断のせいで、お前の大事な船と大事な船員が死ぬことになったぞ。お前こそどういうつもりだ?」
停船命令に従っていればこんなことにはならなかったんだぞと、ソーアは言い聞かせるようにそう語る。
明らかに馬鹿にするような態度であった。
「お前は・・・何も知らんのか!これはドフォーレ商会の船だぞ。この船を攻撃することがどういうことになるか、お前は後で思い知ることになるぞ・・・!お前レベルがどうこういう話ではないのだ!」
(やはり裏取引か。だから堂々と逃げてみせた)
船長の言葉から、やはり裏でマルセイユ騎士団の上層部と繋がっているのだなとソーアは確信する。
「今すぐ俺達を解放しろ!積み荷をすぐに回収するんだ!そうしたら穏便に済ませてやる!早くしろ!今すぐだ!!」
船長はどうやら自分が上位にいると思っているようだ。
しかしソーアはにっこりと笑い
「元気がいいな。お前ならさぞかし良く歌うであろうな!」
「は?」
船長の肩をガシッと掴んだ。
「お前は特別に騎士団には引き渡さないでやろう」
悪魔のような笑みを浮かべたソーアは、この船長をアーヴィガに引き渡してやろうと考えていた。
きっと有益な情報を引き出してくれるだろう。死んだほうがマシだという思いをするだろうが。
「連れていけ」
騎士団に見つからないように、こっそりとアーヴィガの影に引き渡すようにと伝えておいた隊員に船長を連れていかせる。
こうした海賊退治はここ最近派手にやっているが、有益な情報を持っていそうな者はソーアの判断によりアーヴィガに引き渡すようにしていた。騎士団では罪人の取り調べどころか釈放してしまう可能性があるからだ。
ソーア・マルセイユは実家の不正と、このように正面から、実にあまりに派手に堂々と立ち向かっていたのである。まさにまさに大規模な実家との衝突であった。
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あまりに圧倒的な実力があったため、パーティーの中での力量バランスを考え、あえて影からのサポートに徹していたのだ。
それどころか攻撃力・防御力、メンバー関係の調整まで全て、彼が一手に担っていた。
リーダーのあまりに不足している実力を、ヨシュアのサポートにより埋めてきたのである。
その事実を伝えるも、リーダーには取り合ってもらえず。
あえなく、追放されてしまう。
しかし、それにより制限の消えたヨシュア。
一人で無双をしていたところ、その実力を美少女魔導士に見抜かれ、『レンタル冒険者』としてスカウトされる。
その内容は、パーティーや個人などに借りられていき、場面に応じた役割を果たすというものだった。
まさに、ヨシュアにとっての天職であった。
自分を正当に認めてくれ、力を発揮できる環境だ。
生まれつき与えられていたギフト【無限変化】による全武器、全スキルへの適性を活かして、様々な場所や状況に完璧な適応を見せるヨシュア。
目立ちたくないという思いとは裏腹に、引っ張りだこ。
元パーティーメンバーも彼のもとに帰ってきたいと言うなど、美少女たちに溺愛される。
そうしつつ、かつて前例のない、『レンタル』無双を開始するのであった。
一方、ヨシュアを追放したパーティーリーダーはと言えば、クエストの失敗、メンバーの離脱など、どんどん破滅へと追い込まれていく。
ヨシュアのスーパーサポートに頼りきっていたこと、その真の強さに気づき、戻ってこいと声をかけるが……。
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