126 / 471
大破壊の矢
しおりを挟む
「隊長。大型船停船命令に従いません。なおも航行を継続!速度も落とすどころか上げています」
海原で水面を滑走する軽装の女水兵・・・戦女神の隊員は、隊長であるソーアに報告した。
ソーアは今、以前と同じように海上をパトロール中に、気になる商船を見つけて停船させ調べようとしたところ相手がこれを無視したために、逃げる船を追うように部隊を展開させていた。
「海賊と親密にしているドフォーレ商会の大型船だ。積み荷の確認のための停船命令すらガン無視とは、よほど誤魔化しきれないくらいのいかがわしいものをたんまり運んでいるんだろうな・・・」
やましい物があるから見せられない。他に理由などない。答えはシンプルだ。
「よし、赤玉打ち上げろ」
ソーアの出した結論もシンプルであった。ならば沈めるまで、と。
やましい船などこの海にいてはならない。
ソーアの指示により、赤色に発光する魔石のついた矢が空に向かって放たれた。
昼間でも世界が真っ赤に染まるかと思うほどの強烈な発光。これは「帰艦ヲ撃沈スル」という最後通牒である。
海賊船であってもここまでやればある程度の船は諦めて停船をする。
しかし、今回の大型船は商会の船であるというのに海軍であるソーアの指示に従わず、一向に速度を落とすことがなかった。
「ほほぅ、我々を振り切るつもりか?」
ラウバル地方でも名うての商会の船である。緊急時に外敵から身を護るための準備は整っていて、ソーア達ですら振り切れるつもりでいるのだろう。
「矢をつがえ!・・・射っ!!」
ソーアの号令とともに、ソーアを含めた5人の戦女神達が一斉に矢を放つ。
弓に付与されているそれと、隊員達それぞれの魔力による修正を受けながら、無茶苦茶な軌道を描きつつも遥か遠くで逃げ続ける商会の船に向かってしっかり飛んでいく。
この矢には爆裂魔法の魔石がついており、矢の命中とともに爆裂!頑丈な船であれば無傷ではいられないはずだった。
しかし
ドォォォォォォン
戦女神の放った矢が全部命中したはずなのだが、商会の船は無傷のままであった。
「隊長!あの船、極めて強力な防護魔術が展開されています!!爆裂矢程度ではかすり傷一つつかないかと!!」
双眼鏡で観察していた隊員が叫んだ。
「ほう、流石はドフォーレ商会。あの防護壁を展開するにはかなり効果な魔石を消費したはずだ。よっぽど船荷が大事であるようだな」
隊員の報告を聞いて、ソーアはニンマリと笑う。
船全体をあらゆる攻撃から防御する魔法を展開する魔石は非常に高価だ。しかも効果は長く続くわけではない。
しかしそれを惜しみなく使うところに、ソーアは相手が見つかれば致命傷になるほどのものを持っていると確信した。
「今日は大戦果になりそうだ。皆、私が出る。下がれ」
ソーアが一本の矢をつがえながら前にでる。
隊員達は指示に従ってすぐさまソーアの後方まで下がった。
「あちらが大盤振る舞いといくなら、こちらも相応に振る舞ってやらねばな!」
ソーアのつがえている矢は、魔石のついていないすっきりした形の普通に見える矢であった。
だがパッと見普通に見えるだけで、それは普通の矢ではなかった。この矢には細かい文字の書いてある符が巻き付けてあるのだ。
「受けるがいい!障壁貫通型爆裂矢!!」
シュバッと放たれた矢は、先ほどと同じように商会の大型船へ向かっていった。
先ほどと同じように矢を弾こうと魔法による防壁が展開されるが、矢は勢いを殺すことなく防壁を貫通。船の外壁をも突き破りそして・・・
ドォォォォォォォン
商会の大型船の大部分が爆発により吹き飛んだ。
防壁の中で起きた爆発だけあって威力が倍倍に増え、船は大規模な火災に見舞われている。
「航行を停止!」
双眼鏡で覗く隊員が言った。
「火災が発生している模様。いかがされますか?」
「私達が消火する義理はない。放っておけばいい」
ソーアは燃え下がる商船をただ距離を取って眺めているだけ。
その目には何の感情もなかった。
海原で水面を滑走する軽装の女水兵・・・戦女神の隊員は、隊長であるソーアに報告した。
ソーアは今、以前と同じように海上をパトロール中に、気になる商船を見つけて停船させ調べようとしたところ相手がこれを無視したために、逃げる船を追うように部隊を展開させていた。
「海賊と親密にしているドフォーレ商会の大型船だ。積み荷の確認のための停船命令すらガン無視とは、よほど誤魔化しきれないくらいのいかがわしいものをたんまり運んでいるんだろうな・・・」
やましい物があるから見せられない。他に理由などない。答えはシンプルだ。
「よし、赤玉打ち上げろ」
ソーアの出した結論もシンプルであった。ならば沈めるまで、と。
やましい船などこの海にいてはならない。
ソーアの指示により、赤色に発光する魔石のついた矢が空に向かって放たれた。
昼間でも世界が真っ赤に染まるかと思うほどの強烈な発光。これは「帰艦ヲ撃沈スル」という最後通牒である。
海賊船であってもここまでやればある程度の船は諦めて停船をする。
しかし、今回の大型船は商会の船であるというのに海軍であるソーアの指示に従わず、一向に速度を落とすことがなかった。
「ほほぅ、我々を振り切るつもりか?」
ラウバル地方でも名うての商会の船である。緊急時に外敵から身を護るための準備は整っていて、ソーア達ですら振り切れるつもりでいるのだろう。
「矢をつがえ!・・・射っ!!」
ソーアの号令とともに、ソーアを含めた5人の戦女神達が一斉に矢を放つ。
弓に付与されているそれと、隊員達それぞれの魔力による修正を受けながら、無茶苦茶な軌道を描きつつも遥か遠くで逃げ続ける商会の船に向かってしっかり飛んでいく。
この矢には爆裂魔法の魔石がついており、矢の命中とともに爆裂!頑丈な船であれば無傷ではいられないはずだった。
しかし
ドォォォォォォン
戦女神の放った矢が全部命中したはずなのだが、商会の船は無傷のままであった。
「隊長!あの船、極めて強力な防護魔術が展開されています!!爆裂矢程度ではかすり傷一つつかないかと!!」
双眼鏡で観察していた隊員が叫んだ。
「ほう、流石はドフォーレ商会。あの防護壁を展開するにはかなり効果な魔石を消費したはずだ。よっぽど船荷が大事であるようだな」
隊員の報告を聞いて、ソーアはニンマリと笑う。
船全体をあらゆる攻撃から防御する魔法を展開する魔石は非常に高価だ。しかも効果は長く続くわけではない。
しかしそれを惜しみなく使うところに、ソーアは相手が見つかれば致命傷になるほどのものを持っていると確信した。
「今日は大戦果になりそうだ。皆、私が出る。下がれ」
ソーアが一本の矢をつがえながら前にでる。
隊員達は指示に従ってすぐさまソーアの後方まで下がった。
「あちらが大盤振る舞いといくなら、こちらも相応に振る舞ってやらねばな!」
ソーアのつがえている矢は、魔石のついていないすっきりした形の普通に見える矢であった。
だがパッと見普通に見えるだけで、それは普通の矢ではなかった。この矢には細かい文字の書いてある符が巻き付けてあるのだ。
「受けるがいい!障壁貫通型爆裂矢!!」
シュバッと放たれた矢は、先ほどと同じように商会の大型船へ向かっていった。
先ほどと同じように矢を弾こうと魔法による防壁が展開されるが、矢は勢いを殺すことなく防壁を貫通。船の外壁をも突き破りそして・・・
ドォォォォォォォン
商会の大型船の大部分が爆発により吹き飛んだ。
防壁の中で起きた爆発だけあって威力が倍倍に増え、船は大規模な火災に見舞われている。
「航行を停止!」
双眼鏡で覗く隊員が言った。
「火災が発生している模様。いかがされますか?」
「私達が消火する義理はない。放っておけばいい」
ソーアは燃え下がる商船をただ距離を取って眺めているだけ。
その目には何の感情もなかった。
11
お気に入りに追加
658
あなたにおすすめの小説
Sランク冒険者の受付嬢
おすし
ファンタジー
王都の中心街にある冒険者ギルド《ラウト・ハーヴ》は、王国最大のギルドで登録冒険者数も依頼数もNo.1と実績のあるギルドだ。
だがそんなギルドには1つの噂があった。それは、『あのギルドにはとてつもなく強い受付嬢』がいる、と。
そんな噂を耳にしてギルドに行けば、受付には1人の綺麗な銀髪をもつ受付嬢がいてー。
「こんにちは、ご用件は何でしょうか?」
その受付嬢は、今日もギルドで静かに仕事をこなしているようです。
これは、最強冒険者でもあるギルドの受付嬢の物語。
※ほのぼので、日常:バトル=2:1くらいにするつもりです。
※前のやつの改訂版です
※一章あたり約10話です。文字数は1話につき1500〜2500くらい。
スキルを極めろ!
アルテミス
ファンタジー
第12回ファンタジー大賞 奨励賞受賞作
何処にでもいる大学生が異世界に召喚されて、スキルを極める!
神様からはスキルレベルの限界を調査して欲しいと言われ、思わず乗ってしまった。
不老で時間制限のないlv上げ。果たしてどこまでやれるのか。
異世界でジンとして生きていく。
月白色の叙情詩~銀礫の魔女が綴るもの~
羽月明香
ファンタジー
魔女は災いを呼ぶ。
魔女は澱みから生まれし魔物を操り、更なる混沌を招く。そうして、魔物等の王が生まれる。
魔物の王が現れし時、勇者は選ばれ、勇者は魔物の王を打ち倒す事で世界から混沌を浄化し、救世へと導く。
それがこの世界で繰り返されてきた摂理だった。
そして、またも魔物の王は生まれ、勇者は魔物の王へと挑む。
勇者を選びし聖女と聖女の侍従、剣の達人である剣聖、そして、一人の魔女を仲間に迎えて。
これは、勇者が魔物の王を倒すまでの苦難と波乱に満ちた物語・・・ではなく、魔物の王を倒した後、勇者にパーティから外された魔女の物語です。
※衝動発射の為、着地点未定。一応完結させるつもりはありますが、不定期気紛れ更新なうえ、展開に悩めば強制終了もありえます。ご了承下さい。
ここが伝説の迷宮ですか? いいえ、魔物の集合住宅です
ムク文鳥
ファンタジー
魔界に存在するたくさんの魔物が暮らす集合住宅(アパート)、ヘルヘイム荘。
そのヘルヘイム荘のオーナー兼管理人である「大家さん」の悩みは、時々人間界から、ここを「伝説の迷宮(ダンジョン)」だと間違えて、冒険者たちが紛れ込んでくること。
大家さんが時に冒険者たちを返り討ちにし、時にアパートの住人たちと交流するほのぼのストーリー。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる