国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ

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「詳しくは言えないけどアミルカは少しわけありなの。あの子の立場の関係でいろいろあって、これまで散々人間の嫌なところを見てきたわ」


「・・・」


ローザの言葉に俺は絶句していた。
どちらかというと世間知らずというほうがイメージに合いそうなアミルカが、まさかそんな経験をしていたなんて。


「あの子ののお陰もあって、人間不信なところが結構あったりしたのよ。善人に見せかけた悪人だって、彼女にかかればすぐにわかってしまうんだから。わかりたくなくても勝手にね」


どうやらアミルカの人の善悪の判別するという能力は、自分の意志でオンオフするようなものではないらしい。
強制的にそういうのが人となりがわかってしまうというのは、想像もできないが凄く窮屈でならないのではないか?


「だからアミルカは幼い頃から知ってる私とドレッドくらいしか一緒にいようとしなかった。けど、この町に来てびっくりしたわ。迷子になったとはいえ、アミルカが赤の他人に、しかも男に連れられてやってくるなんて」


俺が冒険者ギルドに案内したことについて話しているんだろう。
確かに最初は動揺のためか警戒されたけど、その後は結構大人しかった感じだったな。


「彼女から見て、貴方は相当に善人に見えるのね」


「・・・買いかぶりだろ」


善人だの心が綺麗だの言われ続けて、なんだかだいぶ気恥ずかしくなった俺はついそう言ってしまう。


「あの子のあの力は、今まで外れたことないのよ。ショウはアミルカから心を許されてる数少ない人間なのはもう確定なんだから、それを踏まえた上でお願いがあるの」


「・・・なんだ?」


「あの子に手を出しても別にいいから、出来るだけアミルカの近くにいて欲しいの。まぁ、難しいお願いだというのはわかっているんだけど」


「手を・・・って」


茶化して言ったのかと思ったら、ローザはあくまで真剣な眼差しで俺にそう言っていた。


「あの子も、いつまでこうして自由にいられるかわからないから」


そして寂しそうに俯きながら、そう呟く。
どういうことだと聞きたいところだから、これもアミルカのなのだろう。アミルカの事情はわからないが、何か当人の意志だけではどうにもならない、大きな悩みが彼女にはあるんだろう。


「ただ、手を出してもいいけど、もしそれをやったら責任だけは取ってもらうわ。最初にこの部屋に私が来たのも、アミルカといい感じになりそうだったらとりあえず最初にこれだけは言っておこうと思ったの」


「いや、そういう雰囲気にもしなったところで、ローザが突然現れた段階でぶち壊しになると思うんだけど」


完全に白けてしまって、その後で「じゃあ続きをどうぞ」で続きが始まる気がしない。

そしてそこまで言われて手を出すやつは中々いない。



「まぁ、よくわからないけど、俺だってアミルカ達とは仲良くしたいと思ってるんだ。別にローザに言われなくてもな」


これは本心だ。そうではなければ一瞬ためらったとはいえ、自室にアミルカを招待したりはしない。
ザイル達と同じくらいには、仲良くしたいと思っているのだ。


「そう、そう言ってくれるなら、とてもとても嬉しいわ」


そう言うローザの笑顔はこれまで見せてきたどこか表面的なそれと違い、いくらか心から笑っているように見えた。とても綺麗で吸い込まれそうなその笑顔に、俺は一瞬心を取り乱してしまった。
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