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ひらきなおり

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「ゆうべのうちに脱走兵が出ました。リュート隊の残りは私を入れて15人です」


定期討伐の翌日、チェスターがリュートに報告にやってきた。
翌日すら心を休める暇もないか・・・とリュートは溜め息をついた。
だがこうなることは予想していたし、むしろ15人も現状残っていることが奇跡ではないかとすら考えていた。


「放っておいていい」


故にリュートは追おうともしなかった。昨日の惨劇を見て心を折った者に復職を願っても時間の無駄だ。
少し前の彼なら、親衛隊であるリュート隊の頭数を大きく減らすことの恥に耐えかねず、すぐにでも追手を差し向けたかもしれない。
だが守られていた身とはいえ一度本物の地獄を経験したことによって、多少は成長したのかもしれない。


「陛下への今後の対応はいかがされますか?」


チェスターの質問にリュートが顔をしかめる。考えたくもない難題だが、それでもリュートは一晩考え結論を出していた。


「起こった通りに伝えるさ。定期討伐で命を落としたと」


「・・・っ」


国王は怒るだろう。だが、そうとしか言えないし、勇み足で突っ込んだのはリュート隊の意志でもあった。立場上でもリュートが責任を取るのが当たり前だが、リュート隊とて何もおとがめなしということにはならないだろう。
これも仕方がないなとチェスターは思った。


「その上で、より精強な騎士を追加で送ってくれと言うつもりだ」


「え?」


リュートは何を言っているのだ?とチェスターは自分の耳を疑った。
王都から騎士100名も送ってもらって間もないうちに壊滅状態にし、更なる兵の派遣を乞うなど、王の怒りを買いルーデル家を取り潰しにされかねない。それだけの愚行だった。


「流石にそれは・・・」


チェスターはリュートが正気ではないと感じ、どのように伝えればわかってもらえるか考え、言葉を詰まらせた。


「大丈夫さ。確かに怒りは買うだろうし、要求したものの100%の結果は引き出せないだろう。けど、取り潰しにされるところまではいかないはずさ」


「どうしてそんな・・・」


普通に考えればここまで王を舐めた態度でいれば、即座に兵を動員されて滅ぼされてもおかしくない。
何の自信があってそんなことを言いだすのが、チェスターには理解できなかった。


「私達と王家は一蓮托生だからねぇ。多少の無茶をしたところで、潰されることはないさ」


そういうリュートは怪し気な笑みを浮かべていた。
昨日の地獄を経てこれまでよりも肝っ玉が据わるようになったようだ。従来あるべき形ではないが、これも一つの成長であった。
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