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執念

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「随分と勉強なされてきたようですな」


ルーデル邸に戻ったリュートに言ったオミトの皮肉にも、特に言葉を返すことなくリュートはただ項垂れた。

結局定期討伐はリュート隊の惨状により一旦切り上げて帰還。討伐ノルマに届いていないので別の日に最後出直しをするということになってしまった。
もちろん騎士団の立てた段取りは大狂いであるし、余計な仕事も金もかかることになってしまったのである。
活躍してみせるどころか迷惑をこれでもかというほどかけ、それどころか王より派遣された騎士は壊滅状態になってしまった。


「今日のところは休むといいでしょう。明日からいろいろと忙しくなるでしょうから」


オミトはリュート隊の壊滅のことを言っているのだろう、そのことを思い出してリュートが一瞬ピクリと反応した。王から遣わされた騎士を一瞬にして失ってしまった。怒りに触れるだろう、説明が必要だろう、対応にこれ以上ないほど苦労することになるだろう。
地獄が終わったかと思えばまた地獄が来るのだ。


「言っておきますが、この程度の苦しみなど、これまでショウ様が経験してきたことに比べればどうということはありませんよ。アンデッドなんてあの方は何度も戦ってしますし、だって自ら手を下したことがあるのです」


リュートの眉がまたピクリと動く。
自分が考えてもみなかった泥臭い地獄を味わってきた。危険と絶望に晒されてきた。
だが、それすらショウの経験したことから比べれば大したことはないという言葉に、更にリュートは絶望することになった。こんな地獄がこれからずっと続くのか。リュート隊に保護されていただけの自分だが、それでもこれでもかというほど恐怖を味わった。だが、これで終わりではないし、その上があるという。


「こうした苦楽をともにしてきた仲間・・・ショウ様を排除された騎士団の想いがどんなものであるか、これを機に考えてみるといいでしょう」


そういってオミトはリュートの前から去っていった。
当然であるが、辣言こそ言うものの、あくまでリュートに寄り添うつもりはないらしい。自分のことは自分でしろという態度であった。きっとオミトも相手がショウならば親身になっていたのだろうなとリュートは思った。

余計なことをして事態が悪化した。自分の立場が更に悪くなった。
これ以上ない絶望感を感じたリュートだが、それでも心が折れなかった。


「ふざけるなよ・・・ショウに出来たことが、私に出来ないわけがないだろ・・・」


ショウへのコンプレックスからくる執念。今のリュートを支えているものはそれだけであった。
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