109 / 470
地獄のエピローグ
しおりを挟む
「アンデッド達の殲滅を確認しました」
騎士団の伝令がタルカスに報告すると、タルカスははぁと溜め息をついた。
「引き続き周囲を警戒しろ。後始末が終わったら帰投するぞ」
「はっ!」
伝令が去ったのを見て、タルカスは再び溜め息をつく。
それはこれからやらねばならぬ大仕事をやりたくないという気持ちの表れだった。
まったくとんでもないことをしてくれた。
だが、これでしっかり学習してくれたことだろう。
タルカスはまたまた溜め息をつくと、リュート隊の元へと向かって行った。
リュート隊の地獄はまだ続くのである。
「騎士団長・・・申し訳なかった。援軍感謝する・・・」
タルカスを見つけると、リュートはすっかりしおらしくなってタルカスに礼を言った。
気まずくて仕方がないのだろう。伏し目がちではあるが、平身低頭謝り尽くすつもりのようだ。
最初からするんじゃねぇ馬鹿と言いたいところだが、今はそれどころではない。他に一刻も早くやらねばならぬことがあるのだ。
「ところで・・・これは一体・・・」
リュートが怪訝そうに周囲を見回す。
リュート隊は今、騎士団の面々に周囲をずらっと囲まれていた。保護している・・・というよりは監視されているとリュートは感じていた。そしてそれは間違いではなかった。
「これよりリュート隊全員の身体検査をします」
「・・・え?」
「あなたもですよ。辺境伯様」
タルカスの言葉に唖然としていると、一人、また一人とリュート達の面々が騎士団に連れていかれた。
「どういうことだ?」
何が何だかわからないリュートが問う。
「死人の種に接触しましたね?これから感染していないかを一人一人調べます。一刻を争いますので、どうかご協力ください」
死人の種?なんだそれはと聞こうとしたが、今度はリュートは騎士団に力づくで連れていかれた。
そこであっという間に服を脱がされ、全身裸にさせられる。
「なっ、なっ・・・」
羞恥と困惑と怒りの交じった感情で顔を歪ませるリュートだが、騎士団の連中の真剣な表情に何も言葉が出ずされるがままになっていた。
「辺境伯様は異常ありません」
そう言って解放されると、騎士達は次の人を検査するために早々にその場を去っていく。
脱がされた服は自分で着ろということらしい。
「ご無事でよかったですな」
そこで初めてタルカスはリュートに対して無事を喜ぶ態度を表した。
「既に何人か感染者が出ている模様です」
続く言葉を聞いて、リュートは絶句した。感染何を言っているんだ?と思っていたが、これで今ようやく強制的に身体検査されている理由を理解する。
「腕についてるな。深くまで入ってる。だが、これならこの腕の切り落としで済むな」
「・・・えっ?」
「悪いが時間がない。さっさとやらせてもらうぞ」
「口から胞子を吸ってしまっただと?」
「す、少しだが・・・」
「そうか・・・残念だが手遅れだ。ここでお前は死ななければならない。何か故郷の家族とかに言い残すことはないか?」
「え、えっえっ?」
「恐らく一時間もしないうちにお前はアンデッドに変化する。そうなる前に、人間として今死なせてやる・・・それが俺達にできることだ。ハイクを詠め」
「アイエェェェェェ!?」
リュート隊の悲鳴が木霊する。
死人の種が腕についていれば腕を、口から吸っているようなら手遅れなので頭をと、感染部分を切除する処置が行われた。
それは生き残ったリュート隊40名のうちの15名に該当し、結局処置の末に生き延びたリュート隊は30名。そのうち5名は四肢のいずれかの切断により騎士として生きていくことは不可能となった。
「あの胞子・・・死人の種を受けるとですね、アンデッドになってしまうので、こういう処置が必要なんです。こうならないよう、細心の注意と準備をして事に当たることにしてるんですがね」
タルカスの言葉はリュートの耳にろくに入ってはいなかった。
騎士団の伝令がタルカスに報告すると、タルカスははぁと溜め息をついた。
「引き続き周囲を警戒しろ。後始末が終わったら帰投するぞ」
「はっ!」
伝令が去ったのを見て、タルカスは再び溜め息をつく。
それはこれからやらねばならぬ大仕事をやりたくないという気持ちの表れだった。
まったくとんでもないことをしてくれた。
だが、これでしっかり学習してくれたことだろう。
タルカスはまたまた溜め息をつくと、リュート隊の元へと向かって行った。
リュート隊の地獄はまだ続くのである。
「騎士団長・・・申し訳なかった。援軍感謝する・・・」
タルカスを見つけると、リュートはすっかりしおらしくなってタルカスに礼を言った。
気まずくて仕方がないのだろう。伏し目がちではあるが、平身低頭謝り尽くすつもりのようだ。
最初からするんじゃねぇ馬鹿と言いたいところだが、今はそれどころではない。他に一刻も早くやらねばならぬことがあるのだ。
「ところで・・・これは一体・・・」
リュートが怪訝そうに周囲を見回す。
リュート隊は今、騎士団の面々に周囲をずらっと囲まれていた。保護している・・・というよりは監視されているとリュートは感じていた。そしてそれは間違いではなかった。
「これよりリュート隊全員の身体検査をします」
「・・・え?」
「あなたもですよ。辺境伯様」
タルカスの言葉に唖然としていると、一人、また一人とリュート達の面々が騎士団に連れていかれた。
「どういうことだ?」
何が何だかわからないリュートが問う。
「死人の種に接触しましたね?これから感染していないかを一人一人調べます。一刻を争いますので、どうかご協力ください」
死人の種?なんだそれはと聞こうとしたが、今度はリュートは騎士団に力づくで連れていかれた。
そこであっという間に服を脱がされ、全身裸にさせられる。
「なっ、なっ・・・」
羞恥と困惑と怒りの交じった感情で顔を歪ませるリュートだが、騎士団の連中の真剣な表情に何も言葉が出ずされるがままになっていた。
「辺境伯様は異常ありません」
そう言って解放されると、騎士達は次の人を検査するために早々にその場を去っていく。
脱がされた服は自分で着ろということらしい。
「ご無事でよかったですな」
そこで初めてタルカスはリュートに対して無事を喜ぶ態度を表した。
「既に何人か感染者が出ている模様です」
続く言葉を聞いて、リュートは絶句した。感染何を言っているんだ?と思っていたが、これで今ようやく強制的に身体検査されている理由を理解する。
「腕についてるな。深くまで入ってる。だが、これならこの腕の切り落としで済むな」
「・・・えっ?」
「悪いが時間がない。さっさとやらせてもらうぞ」
「口から胞子を吸ってしまっただと?」
「す、少しだが・・・」
「そうか・・・残念だが手遅れだ。ここでお前は死ななければならない。何か故郷の家族とかに言い残すことはないか?」
「え、えっえっ?」
「恐らく一時間もしないうちにお前はアンデッドに変化する。そうなる前に、人間として今死なせてやる・・・それが俺達にできることだ。ハイクを詠め」
「アイエェェェェェ!?」
リュート隊の悲鳴が木霊する。
死人の種が腕についていれば腕を、口から吸っているようなら手遅れなので頭をと、感染部分を切除する処置が行われた。
それは生き残ったリュート隊40名のうちの15名に該当し、結局処置の末に生き延びたリュート隊は30名。そのうち5名は四肢のいずれかの切断により騎士として生きていくことは不可能となった。
「あの胞子・・・死人の種を受けるとですね、アンデッドになってしまうので、こういう処置が必要なんです。こうならないよう、細心の注意と準備をして事に当たることにしてるんですがね」
タルカスの言葉はリュートの耳にろくに入ってはいなかった。
11
お気に入りに追加
645
あなたにおすすめの小説
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り
あおアンドあお
ファンタジー
俺...光野朔夜(こうのさくや)には、大好きな彼女がいた。
しかし親の都合で遠くへと転校してしまった。
だが今は遠くの人と通信が出来る手段は多々ある。
その通信手段を使い、彼女と毎日連絡を取り合っていた。
―――そんな恋愛関係が続くこと、数ヶ月。
いつものように朝食を食べていると、母が母友から聞いたという話を
俺に教えてきた。
―――それは俺の彼女...海川恵美(うみかわめぐみ)の浮気情報だった。
「――――は!?」
俺は思わず、嘘だろうという声が口から洩れてしまう。
あいつが浮気してをいたなんて信じたくなかった。
だが残念ながら、母友の集まりで流れる情報はガセがない事で
有名だった。
恵美の浮気にショックを受けた俺は、未練が残らないようにと、
あいつとの連絡手段の全て絶ち切った。
恵美の浮気を聞かされ、一体どれだけの月日が流れただろうか?
時が経てば、少しずつあいつの事を忘れていくものだと思っていた。
―――だが、現実は厳しかった。
幾ら時が過ぎろうとも、未だに恵美の裏切りを忘れる事なんて
出来ずにいた。
......そんな日々が幾ばくか過ぎ去った、とある日。
―――――俺はトラックに跳ねられてしまった。
今度こそ良い人生を願いつつ、薄れゆく意識と共にまぶたを閉じていく。
......が、その瞬間、
突如と聞こえてくる大きな声にて、俺の消え入った意識は無理やり
引き戻されてしまう。
俺は目を開け、声の聞こえた方向を見ると、そこには美しい女性が
立っていた。
その女性にここはどこだと訊ねてみると、ニコッとした微笑みで
こう告げてくる。
―――ここは天国に近い場所、天界です。
そしてその女性は俺の顔を見て、続け様にこう言った。
―――ようこそ、天界に勇者様。
...と。
どうやら俺は、この女性...女神メリアーナの管轄する異世界に蔓延る
魔族の王、魔王を打ち倒す勇者として選ばれたらしい。
んなもん、無理無理と最初は断った。
だが、俺はふと考える。
「勇者となって使命に没頭すれば、恵美の事を忘れられるのでは!?」
そう思った俺は、女神様の嘆願を快く受諾する。
こうして俺は魔王の討伐の為、異世界へと旅立って行く。
―――それから、五年と数ヶ月後が流れた。
幾度の艱難辛苦を乗り越えた俺は、女神様の願いであった魔王の討伐に
見事成功し、女神様からの恩恵...『勇者』の力を保持したまま元の世界へと
帰還するのだった。
※小説家になろう様とツギクル様でも掲載中です。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる