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面倒なアイツ

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「アンデッドリーダーか。面倒なやつが出てきたものだ」


アンデッドリーダー。
名前の通りアンデッド系モンスターの中でもリーダー格にある魔物だが、それは元々危険な存在であるアンデッドの中でも、一層危険なものとされている上位アンデッドである。
なぜならアンデッドリーダーはただ強いだけではなく、死人の種をばらまくからだ。

死人の種はカビのような姿をした小さい生物のようなものであり、生死に関わらず人間に取り付き、脳に寄生するようになる。こうなると取り付かれた人間は自らの思考を持たず、体を死人の種に乗っ取られ、同じ人間を殺しだす。ゾンビの誕生である。

幸いにも死人の種は視認できるために危険を察知しやすいが、少しでも吸い込んだり皮膚につくだけでもゾンビとなるリスクがあるのが死人の種であり、それをばらまく迷惑極まりないのがアンデッドリーダーという存在である。
黒の森では浅層でこのアンデッドリーダーが姿を現すことはほとんどないので、今回の定期討伐でこれが出てきたことは騎士団に激震が走った。

とはいえこういったケースは珍しいが初めてではないし、アンデッドリーダーと戦うこと自体は定期討伐以外で何度もあった。
よって死人の種の対策は出来ている。

・目出し帽をかぶり呼吸による鼻や口からの感染を防ぐ。
・死人の種が嫌がる聖水を体中にまく。これによって体に取り付いての寄生が防げる。

騎士団が出来るのはこの二つ。
これの準備をするために騎士団は一度本陣まで撤退したのだ。討伐を諦めたわけではない。
むしろアンデッドリーダーは浅層にいたままにしておくと後々大きな脅威になりかねないため、何としても仕留めておきたいところである。
このため戦闘部隊こそ撤退させたが、斥候は現在もアンデッドリーダーと距離を取りつつも監視は続けており、動向を逐一報告している。

戦闘部隊は現在、目出し帽の装着、万が一に備えて持ってきた聖水のふりかけ、そして傷口からの侵入を防ぐために傷を受けた箇所の回復を急いでいた。
すぐには回復しきれない傷を負っている者は、この時点で作戦から離脱させている。
そして聖水が死人の種の防御に有効とされる時間は概ね一時間であるため、それも計算に入れて作戦は遂行される。

これだけの注意を払い、アンデッドリーダーを討伐するのが常であった。ある程度のリスク管理は出来るが、そのために必要な準備が多い・・・百戦錬磨なルーデルの騎士団から見ても面倒な相手なのである。


「準備は終わるまで小一時間といったところか。終わり次第ただちに討伐を再開するぞ」


備えとして常に持ってきている聖水の数には限りがある。万全な状態で臨み、確実に次の出撃でアンデッドリーダーを仕留めねばならない。
タルカス自身も万が一に備え対アンデッドリーダー用の用意をしていた。
そこへ、顔面蒼白の伝令がやってくる。


「閣下!辺境伯が自分の部隊を引き連れて森へ入っていきました!!」


「な・・・なんだってーー!?」
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