国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ

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リュート隊

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リュートが思い悩んでいたある日、自身が王へしていた陳情が聞き入れられ、王都より兵が遣わされてきたという報告を聞いたリュートは天にも昇る気分になった。
オミトより黒の森の討伐について聞いたその日から、リュートは迫りくる恐怖を頭に思い描いては溜め息をつく毎日であった。だが、ようやく自分の味方であり、従順でいてくれるだろう兵士が到着してひと安心といったところであった。


「100名か・・・中々だな」


派遣されてきた騎士の数はリュートの想定していたそれよりも多かった。


「本日より我らはルーデル辺境伯様に仕えます」


ビシッと息の合った敬礼をする騎士の面々を見て、リュートは思わず頬が緩みそうになるのを堪える。王都から来た騎士はいずれも貴族の出らしく、品もいい。


(そうそう、これだ。これこそが自分の求めていたものだ)


リュートは辺境伯として黒の騎士団のトップに君臨している。こうして騎士が礼を尽くし、自分に従順であることこそが従来あるべき姿であると考えていた。
で、あるのに関わらず実際は屋敷の使用人も騎士団も誰一人として敬わず、ゴミを見るような視線をぶつけてくる状況に晒されていたリュートはようやく迎えたこの瞬間につい目頭を押さえそうになった。

これでようやく辺境伯として真のスタートを切れる、そう思っていた。
そして今度は派遣されてきた彼らを自分直属の騎士・・・リュート隊とし、黒の騎士団の虐めから守ってもらおうと。
なんとも実に情けない辺境伯だなとオミトは影で見ていて溜め息をついた。


ーーーーー


しかし、良いことばかりではなかった。
派遣されてきた騎士は王バレスからリュート宛ての書簡を預かっていたのだが、その内容が問題であった。

・可及的速やかにルーデル騎士団を掌握すること。

・同じく速やかにドラゴンを従えること。


100名も遣わせた以上、この二点を厳守せよとのことであった。
騎士団の掌握については派遣されてきた騎士達を使い、少しずつ実行していくつもりだった。だが、どうやらあまり時間を与えてはくれないようなので、何か他に手を打たねばならないようだ。
定期討伐で騎士を使い活躍してみせ、存在感を示してみるか?

まぁ、こちらはまだいい、だが問題はもう一つだ。


ドラゴン・・・ショウがドーラと呼んでいたドラゴンを、かつてのショウのように従えなければならない。
今やルーデルとドラゴンといえば切っても切れない関係と言えるほど周知されている。それは国内のみならず国外にも。ドラゴンの存在がいかにランドール国の国威を向上させているか。

なのでショウを追放したらドラゴンがランドールから消えた、では大問題である。
王は一刻も早くリュートもドラゴンを従えているという事実を欲していた。


「しかし、こればかりはな・・・」


リュートは溜め息をついた。
実はイメージアップ作戦の一環で何度かショウが使っていた笛を使い、ドーラを呼んだことがあるものの、ただの一度もドーラがやってきたことはなかった。姿さえ見たことがない。ドーラが生きているのかさえわからなかったのである。
リュートはドーラが怖かったこともあって早々にドーラを従えることを諦めていたが、どうやら王はそうではないようだと気付き頭が痛くなった。リュートは呆れたことにドーラの存在価値を過小評価していたのである。王も王でルーデルならば難なくドラゴンを従えると考えていた。


「まぁ、その代わり騎士団の掌握だけ早めに済ませてしまえば問題ないだろう」


ないものはない。できないものはできない。
リュートは勝手にそう切り上げると、すぐそこまで迫っている定期討伐に向けて考えを巡らせた。
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