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見えないところで何かが動く
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「これは・・・どうしたことだ?」
ラルスは自身の弟である第二王子ファルスの誕生記念パーティー会場に着くなり驚愕した。
当然毎年催されるパーティーだが、今年は例年に比べて随分と賑やかだったからだ。
いや、これは王位継承権一位である自分のときのそれと比較しても大差ない盛況ぶりではないか?
これはどういうことだ?
王族とはいえ弟は第二王子であるし、生みの母は第二王妃だ。第一王妃の子であり、成人の儀も済ませ、優秀であるとされる自分の王位継承がほぼ確実である以上、貴族とてファルスに必要以上に媚びを売る必要はない。むしろこうして誕生記念パーティーに出席することは、ファルスを王位継承者として支持するという意にもとられかねない行為だ。
これまで日和見派の貴族の多くも代理人を立て、自身が出席することを避けてきた。だが、今年はそういった様子が見られない。家族まで連れてきて、これではまるでファルスを支持し始めたようではないか?
「・・・殿下、どうされました?」
ラルスが会場を目にしたときから突っ立ったままなので、エスコートしてきたキアラが怪訝そうな顔で聞いてきた。
「いえ、何でもありません」
ラルスは繕った笑顔でそう答えるが、内心は穏やかではなかった。
驚き、焦り、怒り、様々な感情が折り重なり、混乱しているといって良かった。
ラルスとファルスは仲が良いわけではない。ラルスはファルスをずっと見下して生きてきた。あまり表に出してはいないが、それは一部の貴族には周知の事実であり、故にラルスの不興を買いたくない貴族はファルスとは距離を置いてきた。
ファルスの誕生記念パーティーには親族であるから毎年ラルスも参加していたが、今年はキアラを婚約者候補としてお披露目するための舞台としようとラルスは考えていた。
どうせ盛り上がりに欠けるイベントなのだ、自分が一肌脱いで盛り上げてやろうではないか・・・そう思っていた。
だが実際に来てみると予想だにしない会場の盛り上がりように、ラルスはすっかり萎縮してしまった。
しかも、ラルスの誕生記念パーティーには一度も顔を出したことがないハルトマン本人が参加している。
今日この場に現れたということは、ラルスではなくファルスを次期王として支持することにしたという表明と同意である。
「兄上。本日はご参加いただきましてありがとうございます」
ファルスがラルスのパーティーについて参加に礼を言う。
「なに、当然のことだ。・・・それにしても今年は盛況のようで何よりだ」
努めて平静を装いラルスは言った。
「えぇ・・・私も少々驚いています」
そう答えるファルスの表情は、本当に戸惑っている様子が見受けられた。この盛況ぶりは本人もまるで意図していなかった結果のようである。
(本人も知らなかっただと・・・?どういうことだ?)
ラルスの支持者を引き剥がしたりといったような、明確な簒奪の意志はファルスには今のところ無さそうだとラルスは感じる。
(では、誰が糸を引いているのだ?何もなければこんなことになるなんておかしい)
結局ラルスはこのパーティーではあまり存在感を示せなかった。そしてラルスに対する貴族の態度も、これまでと比べどこか余所余所しい者がチラホラいた。
(これは・・・一体なんなのだ?)
ラルスは不気味なものを感じて仕方が無く、どうにも心が晴れないままであった。
しかし彼の見えないところで、確実に事態は動いていたのである。
ラルスは自身の弟である第二王子ファルスの誕生記念パーティー会場に着くなり驚愕した。
当然毎年催されるパーティーだが、今年は例年に比べて随分と賑やかだったからだ。
いや、これは王位継承権一位である自分のときのそれと比較しても大差ない盛況ぶりではないか?
これはどういうことだ?
王族とはいえ弟は第二王子であるし、生みの母は第二王妃だ。第一王妃の子であり、成人の儀も済ませ、優秀であるとされる自分の王位継承がほぼ確実である以上、貴族とてファルスに必要以上に媚びを売る必要はない。むしろこうして誕生記念パーティーに出席することは、ファルスを王位継承者として支持するという意にもとられかねない行為だ。
これまで日和見派の貴族の多くも代理人を立て、自身が出席することを避けてきた。だが、今年はそういった様子が見られない。家族まで連れてきて、これではまるでファルスを支持し始めたようではないか?
「・・・殿下、どうされました?」
ラルスが会場を目にしたときから突っ立ったままなので、エスコートしてきたキアラが怪訝そうな顔で聞いてきた。
「いえ、何でもありません」
ラルスは繕った笑顔でそう答えるが、内心は穏やかではなかった。
驚き、焦り、怒り、様々な感情が折り重なり、混乱しているといって良かった。
ラルスとファルスは仲が良いわけではない。ラルスはファルスをずっと見下して生きてきた。あまり表に出してはいないが、それは一部の貴族には周知の事実であり、故にラルスの不興を買いたくない貴族はファルスとは距離を置いてきた。
ファルスの誕生記念パーティーには親族であるから毎年ラルスも参加していたが、今年はキアラを婚約者候補としてお披露目するための舞台としようとラルスは考えていた。
どうせ盛り上がりに欠けるイベントなのだ、自分が一肌脱いで盛り上げてやろうではないか・・・そう思っていた。
だが実際に来てみると予想だにしない会場の盛り上がりように、ラルスはすっかり萎縮してしまった。
しかも、ラルスの誕生記念パーティーには一度も顔を出したことがないハルトマン本人が参加している。
今日この場に現れたということは、ラルスではなくファルスを次期王として支持することにしたという表明と同意である。
「兄上。本日はご参加いただきましてありがとうございます」
ファルスがラルスのパーティーについて参加に礼を言う。
「なに、当然のことだ。・・・それにしても今年は盛況のようで何よりだ」
努めて平静を装いラルスは言った。
「えぇ・・・私も少々驚いています」
そう答えるファルスの表情は、本当に戸惑っている様子が見受けられた。この盛況ぶりは本人もまるで意図していなかった結果のようである。
(本人も知らなかっただと・・・?どういうことだ?)
ラルスの支持者を引き剥がしたりといったような、明確な簒奪の意志はファルスには今のところ無さそうだとラルスは感じる。
(では、誰が糸を引いているのだ?何もなければこんなことになるなんておかしい)
結局ラルスはこのパーティーではあまり存在感を示せなかった。そしてラルスに対する貴族の態度も、これまでと比べどこか余所余所しい者がチラホラいた。
(これは・・・一体なんなのだ?)
ラルスは不気味なものを感じて仕方が無く、どうにも心が晴れないままであった。
しかし彼の見えないところで、確実に事態は動いていたのである。
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